迷宮探索再開【カルカトス】
「……休みすぎたな……」
「そう?俺も力回復できたし、いいタイミングだと思ったけどなー?」
「そうか?というか調子はどうだ?ライ」
「うん、よく寝たよ、おかげでバッチリさ」
「そうか、ダンジョンいけるか?」
「もちろん、ささっ!行こっ!」
「おはよう、皆、待たせたね」
パーティーメンバーの3人と合流し、また、迷宮に行く。
「……今日は、どこまで行きますか?」
「取り敢えず、10〜20のモンスターを狩ろうかな
レベルもあげたいし、何より、まだ、20層以降で自力で生きていけないと思う」
「……どうしてだ?拙者達がいれば、その心配なないと思うぞ?特にあのクロン殿がいれば尚更」
「だからでもあるんだよ、フウボク、俺は、まだあの人のことを信用しきれていないんだ
仮にも相手は守護者、いつ敵になってもおかしくない、それに万が一罠か何かにかかって、俺が孤立した時、俺は生き抜けないよ」
「?以前の馬車の時みたいに戦えば行けると思いますけど?」
グリムが何をそこまでと言った様子で質問をする。
「あれ、俺の実力そのものではないんだよ、1秒にも満たない時間しか、あれは使えないんだ、それに1度使うと丸一日ぐらい、休みがいるんだ」
「……こ、コスパ悪いですね?」
「代わりに、思い通りの動きが、できるわけだ、ブラスマイナスで換算しても、マイナスはかなり少ないと思うよ」
「……あなたの動きがまるで見えなかったのは、あれがあなたの理想の動きだから?」
「かもしれないね、不相応なレベルであの動きは完璧ではないにしろ、いい動きだと思うよ
あれが普通にできるようになれば、1人前だよ」
「そこまで拙者らに情報を明かしても良いのか?」
「あ、確かにそうだね、君たちとはいつかライバルになる訳だからね」
「らいばる?とはなんだ?スノウ殿」
「なんで私に……極東の言葉で言うと『好敵手』のような物よ」
「なるほど、好敵手……むっ?となると敵対するのか?」
「君たちにはいずれ、というか出来れば今すぐにでも、パーティーを出てもらいたいと思っている」
「!!??ど、どうしてですか!?先輩!?」
「……私達、なにか気に触った?」
「うーん……というか、俺的に、いつまでも隠していられないのと、誰にも知られなない、からかな?
多分バレたら俺の居場所は消える」
真剣な顔で言ったからだろう、彼女たちも真剣に言葉を受け止めてくれた。
「で、でしたら、今月までは共に行動させてくれませんか!?」
「……今月まで……よし、なら、それで手を打とう」
もちろん、大した嘘は着いていない……が、魔王軍四天王になったという事を含めて知られても……ははっ、笑い事になりやしない……
何よりも、彼女達に迷惑は絶対にかけない。
あの日演舞を見たあとにラジアンと話をした。
『ん?魔界住まないの!?い、生きずらくない……?』
優しいラジアンは心配そうに俺に問う。
『本当に大変なら、同僚を頼るよ……その時は、助けてくれるかい?』
『もちろん、助けるよ』
真剣な瞳で、そう言いきってくれた彼女に……少し、少しだぞ!?仮面の内側で……目にゴミが入った。
人に、誰かに必要とされて……挙句の果てには守ってもらえる。
師匠やアルトリートさんにも同じことを言われたが、贅沢なことに、当たり前の事だと錯覚してしまっている。
『本当の他人』から、そこまで想われている……それだけで、胸が熱くなる。
『ど、どうかした?下向いて……私何かおかしいこと言ったかな!?』
下を向いてプルプルと震えている俺を見て『笑っている』そう彼女は受け取ったのだろう。
『……風、浴びてくるわ』
『えー!?何よー!?魔王ちゃん!わかる!?』
『えぇ、よーく分かりますよ……ふふっ』
『教えてー!!』
『ダメです』
英雄として、名を上げるためにも、今日もまた迷宮へ足を踏み入れる。




