鍛錬と努力
剣を振る……拳を振る……槍で突き、斧を振り、木々を飛びまわり、弓を打つ……
そんな日々をもう何年続けただろうか……?
「……うん、中々に上達してきているぞ」
「ありがとうございます『師匠』」
俺は、師匠を得た。
「その呼び方はやめてくれ……シルフィール……シル、それでいいと言っている……」
「いいじゃないですか、師匠」
もう言葉も流暢に話せるようにはなった。
「……困った奴だ……久しぶりに、手合わせ、するか?」
「いえ、やめておきます
まだ、大型の獣とは戦えるほど強くはないですから」
「確かに……Lvもまだ1桁だからな」
「狩りはしてますが……安全策を取りすぎていつも少ししか貰えないんですよね」
「そうか……なら、私が人型になるのならどうだ?」
「……なれるんですか?」
「もちろんだ……ちょっと待っていろよ……?」
体が光に覆われ、収縮していく……
「久々にしたからか……随分と時間がかかったな」
「……し、師匠?」
「ん?どうした?」
「……服、来てください」
今の師匠はいわゆる『獣人』に近い。
そんな彼女が……一糸まとわぬ姿をしているのだ……目のやり場に困る。
「……あ、そうか、人は服を着て隠すのだったな……ゴワゴワしてあれ嫌いなんだけどな……」
珍しく師匠が愚痴を吐いているが……よかった、服は着てくれるみたいだ。
「よく、服なんてありましたね?」
「まぁ、昔に人里におりた時に貰ってな」
「そうだったんですか」
「……それで?これなら戦ってみるか?」
「武器は?どうされるのですか?」
「……これでもいいんだぞ?」
『古竜骨の剣』を地面から引き抜き、その体に不相応な獲物をこちらに向けてくる。
「……も、森が……」
「わ、わかってるさ素手でやる……来るか?」
「……行きましょう」
シガネが作ってくれたただの『ロングソード』
リョクが作ってくれたただの『弓』
それを持ち構える。
「……よし、いい顔だ、来い」
そう言われると同時に弓を放つ……この動作を早く行うのにも中々なれなかったものだ。
「……これなら弾けるぞ?」
手の甲で軽く弾く……どんな手をしてるんだか……
それを見て、真っ向勝負では弓は当たらないと理解する……元々わかってはいたが物は試しだ。
すぐ右の木を登り、上から見下ろす形になる。
「それで?どうする!?」
「そう焦らずにっ!」
弓を3発撃つ。
「やはり、随分と成長が早いな!
だが!3発ごときじゃ……ほう?」
目を狙い、一瞬でいい、僕から目をそらさせる。
その一瞬で、一瞬俺を探させる。
今僕は自然落下中だ。
師匠に1発、もう1発には糸を括った矢を、別の木に向かって撃つ。
「っ!……中々にいい一撃だ……」
別に威力がある訳では無いが……作戦を評価してくれたのだろう……ありがたい。
張っている糸を強く引き、空中で突如軌道を変える。
「……なるほど!そう来るか!」
「えぇ!もちろん!」
師匠の頭上を通るように飛び上がり……全体重をかけて……斬る!
「……いいだろう!」
拳を握りこちらへ放つ……それに当たれば、勢い負けして……俺の負けになるが……!
「んなっ!?」
あえてずらし……そして地面に剣をぶつけた衝撃で砂埃が巻き上がる。
体を捻り……その勢いで横に薙ぐ。
「……手応え……無し!?」
「……危ない危ない……危うく当たるところだったよ」
「……よくあの体制から避けましたね」
「ジャンプしたからな」
「……降参です……あれが当たらなかったらもう当たりそうにないですから」
「いい、一撃だった」
「……押忍」