表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒髪赤目の忌み子は英雄を目指しダンジョンの最奥を目指す  作者: 春アントール
英雄とは、絶望を切り捨てるものだ
68/499

蝕む炎【エンブラー】

「……ねぇ、エンブラー、あの男の子、面白いね」


 私の剣である『フラム』がそう語りかける。


「あぁ、そうだね、フラム

彼の纏う空気は……危険だと私は思ったよ」


「あと、私の目から見ると……あの子、枷をかけられてるね」


「枷?」


「えぇ、そうね、例えるなら……そう『頑丈な檻に閉じ込められた獣』?いや、獣なんて陳腐なものじゃないね『心に押し込まれた恐怖』だね」


「?どうしてそんな例えを?」


「んーっとね、簡単に言うと……いつ爆発するとも分からない、人の、生き物の『絶望』や『恐怖』あとは『終末』と、見たね!」


 ビシッと決めポーズをとりながら私を指さす彼女に困ったような顔で私は


「それってかなりヤバくない?」


「うん、ヤバいねー、四天王の名にふさわしい、全てを破壊しそうなものだよ」


「は、破壊……私は彼に勝てるだろうか?」


「今の彼には、エンブラーでは勝てないね

でも、本気で彼を殺す気なら、きっと勝てるさ」


「……また、それかい?」


「うん、君は優しい、認めるし、私は君を見ていてほっこりとするものだよ

だが、君は優しすぎる、命の危機には確かに剣を振る、だが、それではもう遅すぎるんだよ」


 真剣な顔でそういう。


「優しいことは美徳だよ、美しくて、何者にも変え難い

だけどね、それは同時に、君の最大にして最悪の弱点だよ、私は君が好きだ、だから、君に死んで欲しくない」


「フラム、わかっている」


「いーや、君はそう言っていつも分かってはいるが、行動には決して移しやしないんだよ」


「……フラム……!」


「何よ?」


「私は……!私は!もう、命を奪ったりなんてしたくないんだよ!」


 自室で子供のように感情のままに言葉を吐く。


「知ってるよ、君は優しさと同時に『恐怖』だってしているからね

君が『魔王』になれなかったのはそれが原因だからね」


 『魔王』……懐かしいな。


「確かに、私は魔王になれなかった!だが!それは……それは……!」


「君は……可哀想な魔族だよ、君は誰よりも優しいのに、誰よりも強くなれるんだ」


 冷たく、だが、どんな炎よりも熱い思いを込めてフラムは告げる。


「……それも……わかっているさ!だが!もう、私のせいで誰かが死ぬのは嫌なんだ!そんな事は私が、私はもう、私はァァ!」


「エンブラー!?……また、発作……!」


 両手を頭に抱え、小さくなる。


 誰よりも強いのに、誰よりも弱い……それがエンブラー


「……もう……嫌だ……剣なんて……力なんて……要らないのに……!」


 それでも、私はそれを背負わなくてはいけないんだ。

それが、私の背負うべき罪だ。


「……また、君の発作だから、いつもと同じことを言うよ

君は剣は好きかい?」


「………」


 無言のまま伏せる。


「口に、言葉に出してよ」


「………き、き……ら……」


 思い出が再燃する。


「……どうなんだい?」


「……好きさ……大好きだよ……でも、嫌いだ……」


「落ち着いた?」


「……本当に済まない、フラム」


「私はあなたが好きだから、こうしてるの、嫌いになったらすぐに助けることを諦めるよ」


「ありがとう……」


 皆の前で、舞い踊り、力を練り上げ、それでも、私は罪荷つみにを下ろせない。

 フラムは決して彼の心を逆撫でしたい訳じゃありません。

ただ、もう罪を背負う必要が無いと、トラウマを克服させたいだけなんです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ