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黒髪赤目の忌み子は英雄を目指しダンジョンの最奥を目指す  作者: 春アントール
英雄とは、絶望を切り捨てるものだ
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演舞の踊り手

「……おや、皆さん今日もお早い頃からお集まりいただきありがとうございますね」


 ニコリと、体の線は細いが、確かに鍛え上げられている。


 くすんだ赤の髪、だが、貴族らしく、綺麗に整えられている。


 目の色は青、今、俺たちの上にある青空よりも深い青。

 服装は……貴族らしいピッチリと着飾られるものではなく、武芸者を彷彿とさせる民族的な服を着ていた。


 長い手足と、彼の長身はバランスがいいと言える。


 ラジアンの方を見れば、これまた獰猛な笑みで目には『戦いたい』という闘志が漏れている。


 その闘志に気付いてか、彼がこちらを見る。


「おやおや、ラジアン殿、お久しぶりですね

そちらの御仁は……お初目にかかります、私の名は『エンブラー ヘルヴェティア』と申します、以後お見知り置きを」


「……ヘルヴェティア……?

あ、私の名はカルカトス、性はございません、先日より、魔王城四天王の座を譲り受けた身にございます」


 こんな感じでいいのだろうか?

それよりも『エンブラー ヘルヴェティア』この街を作ったのか?と目線でラジアンに問うと


「うん、その通りだよ」


 なるほど、この街を作った貴族か……


「正確にはまとめあげただね、そっちの方がよっぽどすごいのさ」


 自分のことではないのに、どこか誇らしげな彼女の顔。


「なるほど、新しい四天王……私の代わりが見つかったようで何よりです」


 四天王になるかどうかの誘いは受けていたのか。


「いの一番に誘ったのに拒否された時は焦ったんだよー」


「申し訳ございませんね、私は争い事が苦手なもので」


 そう、本当に申し訳なさそうに頭を掻きながら謝る彼からバツが悪そうに目を逸らしたラジアンは小声で


「本気出せば魔王様といい勝負するくせに」


 と呟いていた……戦闘に関しては彼女が冗談や間違いを言うはずもない。


 つまり、本物だ。


「それじゃ、お話はここまでとして……今日も少しばかり皆様のお時間をお借りして舞うと致します」


 赤色の柄の剣をゆっくりと抜き、ただ構える。


 太陽の光に反射して、青く光る刀身。


 それだけで、彼女の言っていた言葉の意味が何となくわかった。


 何かをひとつ極めることはとてつもなく難しく、途方もない時間を要する。


 彼はその境地に達していた。


「『魔剣 フラム』いきますよ?」


 そう、彼は剣に優しく問いかけ、そして、その問いかけに答えるように、剣が赤く燃え盛る。


 まず、斜めに剣を振る。


 赤い炎がついて行こうと線を作り出す。


 縦横斜め、縦横無尽に剣を振り続けているのに、彼の服には火の粉1つつかず、周りの人達も一切の怪我がない。


「〈炎のシャボン玉(フレイムバブル)〉」


彼の上空に赤く、透明な球体の中に炎が燃えている。


「……綺麗だな」


 そして、それが空で弾け、小さな炎が花のように咲いた。


 すぐに粒子に戻ったのは彼の魔法操作が長けているからだろう。


「お次は、蒼をどうぞ〈蒼炎魔剣 ブレ・フラム〉」


 そう告げた瞬間、炎は青く輝き出した。


 舞の感じも、さっきまでの縦横無尽に剣が舞うようなものではなく、どことなく、静かになった気がする。


「『蒼炎の剣』『火花を散らし』『舞踊りたまえ』

舞う蒼炎の剣(ダンシングフラン)〉」


 詠唱をし、魔法を唱える。


 燃え盛る炎のような形をした青い炎の剣が宙を舞い、彼を襲う。


 それらの猛攻を防ぎ文字通り『火花を散らし』の通りになり、炎の剣は消えた。


「心惜しいですが、お次が最後です〈黒炎魔剣 ノワール・フラム〉」


 最後は黒い炎。

全てを飲み込み、焼き尽くしてしまいそうな、少し不安になってしまうのは俺の心が未熟だからだろうか?


 彼の動きその全てが何かの形ハマっているようで、その実、彼独特の動きもある気がする。


 それは、黒い炎をまとってからさらに増えた。


 もう軌道を変えることは叶わないタイミングから、軌道を変え、星型の炎の跡を作り出す。


「本日最後の魔法となります

『荒れ狂う黒炎』『蝕む世界』『灰燼と化せ』『塵をも焼き付くし』『世界をも喰らえ』

喰らう黒炎(ノワールプレダ)〉」


 彼が剣を切り上げ、それについて行くように黒炎も空へ行く。


 とてつもない大魔法だ。


 ネルカートの城にあてれば本当に塵も残らないかもしれない。


「ふぅ……ありがとうございました」


 ぺこりと頭を下げ、そういう彼に皆が拍手をする。


 俺は呆然として、ラジアンは額に汗をうかべ、笑っていた。

このキャラクター、私好みのキャラです

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