魔王城にて【カルカトス】
「いやー、私誰かを自分の部屋に招いたことなんてないんだよねー」
そう言いながら、ニヤニヤが止まらない様子でドアを開く。
「……おぉ、綺麗だね」
「使ってないから、そう見えるだけだよ」
そんな風に言ってはいるが、しっかりと整理整頓できている。
カレンダーに細かく書かれた用事、地図に書いてある丸、綺麗に畳まれたベッド、蝋の無くなった蝋燭が入ったランタン。
結構使っていることは見て取れた。
「……ねぇねぇ、トランプしよ!」
机の棚を開き、トランプを取り出した。
「ほーう?何する?」
仮面とローブを外し、面と向かってゲームに乗る。
仮面をつけたままだと読み合いに勝ちやすくなるからね、フェアじゃない。
「うーん……ババ抜きとか?」
「ふ、2人でか?」
「まぁまぁ、最後の1枚の読み合いを楽しもうよ」
「なるほどね」
初めに俺がジョーカーを持った。
順当に7、1、10と手札が減っていく。
そして、最後の1枚。
「俺、ジョーカー右にあるからね」
最終局面まで、ジョーカーを取られなかったが……まぁ、ここからいくらでもまくれる。
「む!それはどっちから見て右?」
「ラジアンからして、だな」
「……えいっ!……ああぁ!?」
「よしっ、騙されたな……次は俺だ」
「こういうのって、私ボロが出るから何も考えない」
「ん?そうか……ならこっち」
「いよしっ!」
「あ……っクソっ!もう1回!今度は左だ!」
「……また嘘ついてるのかな……?いや今度は本当かも……んんぅ……こっち!」
「あっ!?」
「お、正直に左にしてたんだ……ふふっ、私の勝ちっ!」
「くっそー……もう1回!今度は他のゲーム!」
「んー、ポーカーとか?」
「それってディーラーいるじゃん」
「確かに……うーん……」
「ディーラーなら、私がしましょう」
「魔王様!?」
咄嗟に魔王様と呼べるぐらいになれて良かった……
「お、魔王ちゃん本当いいのー??」
「えぇ、2人ともの楽しそうなお顔を見てると……ふふっ、面白くって、カルカトスさんはそんなお顔をしていたんですね」
「ぶ、部下なんでさん付けはやめてくれると嬉しいです」
「あら、そうでしたね、ふふっ、面白い人ですね、年相応の可愛らしいお顔です」
「は、恥ずかしいです……」
「あらあら、ごめんなさいね、それでは、ディーラーをしますねー」
賭け事は俺の方が少しばかり上手だった。
その日は遊び続けて、知らない間に眠っていた。
「ふふっ、おふたりとも可愛い寝顔……寒いですし、毛布持ってこないと」
少しチップの多い方に男が、少ない方に女が眠っていた。




