11〜18層 先輩と盗賊
「……お、来たかい……新しい仲間か?」
手を挙げて、カルカトス先輩に声をかける盗賊。
「ま、そうですね……クロンさん、久しぶりですね」
「だな、いやー、それにしたってまたすげぇ異色だな……ふむふむ?」
な、何なのだろう?この男は?
「ははっ、俺はただの盗賊さ、そう訝しまないでおくれよ」
心を読まれた……!?
「ま、あながち間違いじゃないね」
やはり読まれている!?
「……そう遊ばないで……」
「君の心はいつも静かだ……無関心なのかい?この出来事に」
「関心はありますよ、ただ、それ以上は何も無いんです」
「へぇ?随分と君も大変な人生だったからだろうね、君の心は人のものから大きく外れてしまっているからね」
「……また、その話ですか……ほら、行きますよ、30層まで行くんでしょう?」
「あぁ、まぁ、そうなんだがな……やっぱり英雄ってやつの心は見ていて面白い……あの魔王様や鬼も面白いこと考えてたし……」
やばい人の名前が出たり、先輩を『英雄』と呼んでいたり不思議な人だ。
「ま、ちょっとの間このパーティーの盗賊として努めさせてもらう、クロンだ、まぁ、よろしくっ!」
「よ、よろしくお願いします」
「……いやぁ、中ボスいるよー?」
「俺はここの階層まだ初見なんです……もっとゆっくり進みましょう」
「答えはNoだ、20層まで行けば、休憩ができるからな」
「10層ごとに守護者がいるのをお忘れですか?最近の話題はそれでもちっきりだと言うのに?」
「……あー、そうだなカルカトス」
ニヤリと意地の悪い笑みを先輩に向けると、彼はなんとも微妙そうな顔をして。
「あ……そうだな、まぁ、休めることに間違いはない、保証しよう」
何故か確信を持ってそう言っている……?なぜ?
「まぁ、カルカトスは色んなことを知ってるからだな」
「その説明だとなんか足りてませんよ」
「同じようなものだろう?」
「……はぁ、そうかもですね」
最早めんどくさくなっている先輩。
「とりあえず……ここの中ボス倒しますよ」
「まぁ、この3人が上手く機能しなくても、俺とカルカトスで十分に倒せる相手だ」
この男……私たちを決して過小評価しているのでは無い……が、この男と合流してから確かに先輩の動きは良くなった。
武器を剣に変えたのもあるのだろうが……何よりも、2人とも本当に強い。
1人て切り盛りしていただけはある……流石先輩。
この盗賊も……動きが凄い、時々敵が動かなくなるのは彼の仕業だろう……
「ははっ、そろそろクロンって呼んでくれよー」
「また人の心読んでるんですか?」
「まーな」
「プライベートも何も無い……はぁ」
11層から、敵が大幅に変わった。
爬虫類や、陰鬱としたイメージの生き物たちから、騎士のような敵が多くなった。
『亡霊騎士』や『リーパー』のような『死』に関する敵が多くなった。
「お、見つけた『暴走馬車』だ」
車輪からトゲを生やした首のない馬を走らせる骸骨。
「……あれ、倒せるんですか?」
「ははっ、少し見といてくれよ
カルカトス、やれそう?」
「む、無理ではないけど怪我はしそう」
「だよな……よし、やろうか」
「!危険です!!」
「いや、危険じゃない……カルカトスなら行ける」
「あぁ、俺は行けるよ、グリム」
チームメイトになってから『対等』を意識してか、最近は名前を呼び捨てるようになった。




