ニューパーティー
「……あ、ここ、罠があるね」
地面に薄ーく貼った糸を指さし、そう教えてくれる先輩。
「あ、本当だ……よく見てますね」
「まぁ、ここら辺は歩きなれてるからね……あとは、地面ばかりを見せて、意外と肩の辺りにもワイヤーがあるミスディレクションもあるね」
「ふむふむ……参考になります」
さすがに1人でやってきたことはある。
アカデミーで習った他のパーティーはお互いの苦手分野を保管し合うようにできていたが、彼は1人でパーティーになっている。
「……これ、1人でやってたんですか?」
スノウちゃんが珍しく口を開き、質問をした。
「あぁ、1人でやっていたよ、今は君たちがいるけどね」
少しその顔はにやけているように見えた。
「……なんで、1人でパーティーを?」
「本当の俺を見たらきっと俺を嫌うから、だね
仲間を騙しているのは忍びないし、もしも正体が明かされたら俺よりもきっと仲間に迷惑がかかるからね
だから、君たちに最終確認を取ったんだ」
なるほど……本当の先輩か……
「……その隠している髪と……頭?仮面は顔を?それとも目を隠しているの?」
ズイズイと詰め寄り、質問するスノウちゃん。
「す、スノウちゃ……」
「隠しているのは髪と目だよ、バレないように上手くできているだろう?」
確かに、彼は少し身長が高いから、目は少し見えにくい……赤……だろうか?
髪の毛はローブがすっぽりと隠している。
体毛も1本さえ見えない。
「……ありがとうございます」
そう言って、また、前を向いてダンジョンを進む。
「やっぱり君たちみんな強いな……もう一回目から10層まで来たか……」
「先輩のアシストあっての事ですよ」
実際に何度も助けられた……解毒薬の準備もしっかりしていた。
1人だからこういう準備が命を繋ぐらしい。
「ははっ……俺はここに来るまでに1回死にかけたんだけどな……凄いよ君たちは」
先輩も何度かミスはしていたみたいだ。
「ふむ?どんな事があって命を落としかけたのか、良ければ聞いてもいいだろうか?」
「あぁ、構わないよ、あの時俺は、少し注意が足りなくてね、中ボスと出会って……死にかけたんだ」
理由は単純なものだった。
「……強かったんですか?」
「あぁ、強かったさ……あいつは強かった」
懐かしそうに、上の階へ繋がる階段を見る……
「最も、今の俺なら前よりかは楽に倒せるさ」
ニコリと笑いながら槍を見せる。
「中ボスだって1人で倒せるほど弱くはないんですけどね……」
「かもね……まぁ、相手が野生の生き物なら俺の戦い方にあっているからね」
「……また、お話聞かせてくださいね」
「あまりネタはないけどね」
彼は力なく笑うのだった。




