第11層 新たな出会い
「……さ、行きますか」
「おぉー!ここが10層ねー!?」
「そ、ここでアライトさんと戦った……さ、次の階へ行こう」
階段を降り、また、迷路が始まる……それを見て期待をふくらませたその瞬間、ものすごい速度で何かがこちらへやってくる。
「っ!?」
「へぇー?あんたが『アライトさんの英雄』かい?」
黒い髪に黒い目の盗賊風の男は俺の目の前で急停止、そして、興味深そうにそう聞いてきた。
「!?なんでそれをっ!?」
「俺はこのアライトさんの友達なんだわ……いやー、英雄に合えて光栄だよ、けど、あの時と違って今日は槍かい?」
あの時の戦いも見られていた……?
「えぇ、ところであなたは?」
「ん?俺?あぁ、俺は『20層の守護者 クロン ウェイパー』だ」
「え?それって?」
ライがこちらを向く……俺も直ぐに頭に電流が走ったかのような衝撃に襲われ……そして目を見開いた。
「?そんなに意外か?というか今の時代でも俺の事知ってるやついるんだな……いやー!俺も歴史に名を残したのか」
「いや……知ってるも何も……クロン ウェイパーっていえば、英雄の英雄として滅茶苦茶に有名ですよ……?」
「え、英雄の英雄?なんだそれ?」
「マイン ウェイパーって人知ってますか?」
「マイン!?マインってマインちゃんか!?」
「そ、そのマインだと思います
あの人の書いた英雄譚に出てくるんですよ、クロン ウェイパーは」
「……ま、まじかよ……マインちゃんそんなの教えてくれなかったけどなぁ……」
惚けている、驚いている、そんな顔だ。
「……なぁ、マインちゃんに会いたいか?」
「へ?……えぇ!もちろん会いたいですよ!!!」
「ふ、ファンなんだな……よし、なら30層に行こうか、彼女はいま、30層の守護者としてここで生きている」
「……は?」
「ん?だから30層にいるんだよマインちゃんは」
「し、守護者の仕事は?」
「うーん……気が向いたらするさ」
「そ、それなら今、最高峰の攻略隊が29層まで到達していて、30層の守護者を解放するか、悩んでるんですよ……勝手にやる訳にもいきませんし」
「ふーん?アライトさんが殺られて、そのおかげか、この迷宮が段々と顕になってきたわけか……」
「ま、まぁそんなの所ですかね?」
「なら、一ついいことを教えてやろう」
人差し指を立て、ニヤリと笑いながらこう言う。
「本当の『アライト ワクレフト』は、あんなに弱くはない……」
「……やはり、そうですか……!」
「あぁ、それに、防御もほとんどしていない……攻めだけを考えた……自暴自棄な戦い方をしていた
なぜだとおもう?」
「……わかりませんね」
「それは俺たち守護者が『負ける為』に必要な事だからだ」
「……負けることが目的?」
「まぁな、時には勝たなくちゃ行けないが、基本的には相応しいものに負けるために俺たちはいる」
「……難しいですね」
「ま、ざっくり言うと……俺たちはまだ、未練があってここにいるんだ、その未練を晴らせずは死ねない……それが俺たち守護者さ」
「なら、アライトさんが死んだのって……?」
「無論、未練が無くなったんだろうよ
すっげぇいい笑顔で死んでいったしな……羨ましいこった」
両手をヒラヒラさせ、そう言った。
その新しい情報に頭が少しフリーズした。




