大精霊 アルトリート 【カルカトス】
「……と、とりあえずお話に持ち込めたね!やったね!カル君!」
耳元で嬉しそうにはしゃぐスイ。
「うん……良かった、と思う」
「そうだね、良かったと思うよ、私も」
「……さっき、すごい速度であの白いのが来た時は……びっくりした」
本当に……びっくりした。
体が咄嗟に反応こそしてくれたけど……襲う気でこられたら、あっという間にやられてた……
「白いのとはなんだ……私の名前は……あぁ、名乗っていなかったな」
そういえば『侵入者に名乗る名などない』って言ってた……
「私の名前は『シルフィール』だ、いわゆる神獣の1人だ」
「……神獣?」
物知りなリョクの方をむくと、リョクが嫌な顔一つせず答えてくれる。
「神獣と言うのは、いわゆる聖域に生息する、既存の生物を白く染めあげたような神秘的な雰囲気を醸し出す生物のことだよ」
「……まぁ、間違ってはいないな」
「あと、強い」
「知ってる……さっき早かった」
「そうだね、それもまた、神獣の力だ」
なるほど、神獣……強いんだ。
なんてことを話し続けて数分後、少し開いた緑の綺麗な場所に出た。
「……やぁ、少年」
「あ!アルトリート様!おはようございます!」
「あぁ、おはよう、エン、他のみんなもおはよう」
挨拶をするその男……人間の大人と同じぐらいのサイズの……この人もまた、精霊なのだろうか?
「……精霊……ですか?」
口をついて出てしまった疑問に、少し驚いた顔をしたあと
「うん、そうだね、私はいわゆる大精霊の1人……アルトリート、よろしくね」
「……よろしく……お願いします?」
「さて……うん、君は確かに危険因子ではあるが……君本人は悪い子ではない……我々に危害を加えないことを条件にして、この森の在住を許可するよ」
「!ありがとう……ございます?」
身分が上の人に使う『敬語』の使い方がよく分からない……あっているのか少し不安だ。
「うん、よろしくね、ところで少年……名前は?」
「カルカトス……です」
「カルカトス……うん、カルカトス、君に質問だ」
そう言って少し間をあける……その瞬間に顔付きが変わった。
「その、左手の指輪、何なんだい?」
左手中指につけている無骨とも言える装飾のない黒い指輪……リングに近いかもしれない。
「分かりません……生まれた時から、あったと思うから……」
「……それ、外せないかな?」
「……ごめんなさい……多分、それはしちゃダメだと思います……いけないことが起こる気がします」
「うん、わかった、強要はしないさ」
とりあえず、住むことはできそうで何よりだ。
後に知ったが、エンやライを含め、皆かなりドキドキしていたらしい。
シガネが一言も話さなかったのは緊張していたかららしい。




