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黒髪赤目の忌み子は英雄を目指しダンジョンの最奥を目指す  作者: 春アントール
英雄とは、君だ
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サクラ【サクラ】

「お、おぉ!おおお!」


 インセントのとある住宅街、私は今絶賛感動している。

何故か?それは仲間の赤ちゃんを抱いているからだ。


「僕のお母さんと同じ反応してる……」


「二人ともサクラ……なのよねぇ」


 私の腕の中でキャッキャッと笑う小さな赤子は、サクラ。

父と母譲りの黒い髪に赤い瞳。


「……容姿はカルカトスの様だが、名は私か……貴様は将来素晴らしい子になるのだろうな」


 すっかり二人に分身して育児するパパとなったアーガン。

二人に増えても、相変わらずアモラスのママパワーには適わないみたいだがな。


「サクラ、お前のママはすごいな、あのプラチナ冒険者二人以上の働きを見せている……私の母も凄かったが、貴様のママは同じぐらいすごいぞ……!」


 クレイアの作ったゆりかごに揺られて笑っているサクラに笑う。


「なんでそんなに早いの?アモラス」


「丁寧にしてたら、何故か早く終わるのよ」


 アモラスのそういうところは結婚前から変わっていない。

ギルドで働いている時も、今と同じぐらいテキパキと作業をこなしていたのを未だに覚えている。


 二人に増えても、作業速度が二倍になるだけで、分からないところは分からないままのアーガンだったが、アーガンもとても素晴らしい働きをしてくれていた。

ただ、アモラスがもっと早いだけだ。


「……こうやって次の世代に託されていくんだな……」


 少しばかりセンチメンタルになってしまった……いかんいかん。


「だね、他にも色んな人が僕たちの家に来てくれてね、カルカトス君とか、フロウさんとか、この子はこんなに小さい頃から凄い人達に愛されてるんだなって、嬉しくってさ」


 アーガンが柔らかく笑う。

私は仕事が忙しくてなかなか来れなかったが、そうか、皆休みの日にここに来たりしていたのか。


「だな、私たちの中で子供がいるのは、アーガン達ぐらいだからな、皆可愛くて仕方ないんだろう」


「だね、所でさ、アーガンとテイルが最近付き合い始めたの知ってるー?」


 いくつになっても乙女のように目を輝かせるアモラス。


「ほぉ、あいつらやっと付き合ったか」


「うん、アーガンの方から言ったらしいよ、アーガンに聞いたらテイルからって言ってたけど」


「っはは、そうか、あいつららしいなぁ」


 そうか、あいつらも付き合ったか。

世界が落ち着いてきて、何とか私達のギルドも安定してきた頃だからな、腰を下ろすにはちょうどいいぐらいか?


「アーガン、そういえば貴様の提案したドラゴンポイント、別の店でも使わせてくれないかと言っていたぞ」


「あぁ、アレか……お、思ったよりも反響があって嬉しいよ」


「だな、だが実にいい案だったと私は思うぞ?」


「ですかね?で、使いたいって言うなら、サクラに任せるよ。

あれはサクラの案ってことになってるしさ」


「そうだな、まぁ一応確認ってところだ」


「えぇ、ですね」


 お茶が入ったらしい、いい匂いだ……


「お茶いれたけど、飲む?」


「あぁ、頂こう」


「どーぞ」


 一口含む……うん、美味しいな、ちょっと甘い。


「どう?ラヴハートから教わったのよ」


「へぇ、なるほど、通りで美味いわけだ」


 ラヴハートの奴、凄いな、教え方が上手いからなのか、このお茶も随分と美味く感じる。

淹れ方一つであるこうも味が変わるわけか?驚いたな。


「それでは、お茶もご馳走になったし、私はそろそろ帰るとするよ」


 非常に名残惜しいが、あの家はあの3人がいるのが一番だ。


「えぇ、あなたに言うのもなんだけの、気をつけて」


「また来てくれ、サクラも待ってると思う」


「あぁ、気をつけて帰るとするよ」


 少し歩いて、ネルカートへ飛んでいく。


「赤ちゃん可愛かったね、サクラ」


「だな、柔らかくて暖かかった」


「……サクラは、赤ちゃん欲しい?」


 クレイアと付き合っていたら、絶対に授かれないもの。

この質問はつまり、私でいいのか?とでも聞きたいのだろうか?


「……私は……赤ちゃんよりも、クレイアと一緒にいるのが好きだ……口は上手くないが、それが一番なんだ」


 相変わらず下手くそで、ぶっきらぼうな物言いだ。


「……私も、ちょうど同じこと言うとしてた。

ありがと、サクラ、私迷宮に入ってよかったよ」


「そういう意味では、別の世界のカルカトスに、感謝せねばならないわけか……癪だな」


「……二人って本当に仲良いよね」


「……まぁな」


 いつからだったか、あいつと仲がいいなんて言われて怒らなくなったのは。

いつからだったか、あいつと対等に扱われて嬉しいと思うようになったのは。


 分からないが、私は奴を尊敬している、らしい……


「……もうすぐネルカートの生誕祭だ」


「だね、今度も出るの?」


「あぁ、もちろんだ、カルカトスも出るだろうからな、このままでは奴の一人勝ちになってしまうだろ?」


「……そこを阻止するんだね」


「あぁ、私こそが最強だと、迷宮の英雄に知らしめてくれる」


「……妬けちゃうぐらい、仲良いね」


 クレイアが少し膨れているが、愛らしくて仕方がない。


「悪い悪い」


 少し、カルカトスと言葉が似てきた気がした。

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