アイラ ブラムドレイ
背後から何かを感じとった。
風切り音?のようなものが聞こえてきた。
背後から聞こえてきた、咄嗟に後ろを振り向いた。
剣が、目の前に迫ってきていた、とんでもない速度だ。
咄嗟に身を捩り避けた、耳の端が切られて……そして、クラマスの方に剣が飛んでいく。
振り返ると、右手に、逆手で剣を持っていた。
あの速度で迫ってきた剣が、今はクラマスが掴んでいるから、じっと見ることが出来た。
美しい、剣だった。
何よりも美しく感じた。
天使よりも可愛くて、魔人よりもかっこよくて、神様よりもずっと凄い。
まるで、人に抱く感情、憧れや崇拝のような……そう、これは、これならば
「『百層』に相応しすぎる」
あぁ、確かに、この剣を見れたのなら、ここまで来た意味がある。
「っはは、ありがとう、褒め言葉……だよな?
久しぶり、アイラ……何年ぶりかなぁ……一万年ぶり?」
「……その剣、聖剣……?」
咄嗟にそう思った。
「そうだね、この剣には、意思が宿っているんだ。
一番最初の聖剣だよ、魔剣とも、言われてるかも」
「……あぁ、そうだったのか?」
「そうだよ、だから誰よりも意思がある、自我が強い、君の剣に聞いてご覧」
「そうなの?アデサヤ」
『あの剣は、やばい……妾でも、どこまでやれるか、わからんほどにじゃ』
ビビってる……のか?
あの剣は、美しい、薄い薄い、光の衣を何重にも折り重ねて……あの剣が出来上がったのだろう。
どれだけ硬い?どれだけ切れる?アデサヤの発言、ビビり具合からして……
「……もっと固くて鋭いか……?」
「さぁ!行くぞ!!カルカトス!!これが!《百層の守護者》の姿だ」
剣を振りかぶり、走ってくる。
ミランにはとても届かない踏み込み、剣筋、その剣なら、当て方しだいで!
「弾き返せっ!?……!?!?」
俺もクラマスも、切り裂かれた。
受け止めて、弾き返したはずの剣が、俺を切り裂いた?
「この剣の力は、万物を貫通する力『光衣の剣』」
「……っあぁ!そういうことかよ……っ!!」
っくそぉ!!そういうわけかよ!!
不死身だから、そんなことが出来るんだよな!?
「相打ち上等!俺と殴りあって、生き残れるか!?」
無理だ、不可能だ、どう頑張っても、絶対に勝てない。
体力差がありすぎる、無限と千だと、差は火を見るよりも明らか。
「まさかっ!そんな無茶な戦い方をして!勝ってきたのか!?」
「っはは!な!言ったろ!負けねぇよ!勇者だからな……勇者だったからな!!」
「言い直さなくてもいい!!クラマス!確かにここにいて確かだ!」
「確か確かうるさっ!?ってか、流石の不死身だな!!」
「いや!お前ほどじゃ!ねぇ!!」
「まだ!立ち向かってくるか!?」
俺が先に剣を振る。
受けようともしない、ただ、交差する瞬間、剣が消えた。
そして、直ぐに引っ付いた。
剣がクラマスに触れて、その体を切り裂いた。
剣の幅を傷が超えた時、その超えた分から治り始めた。
「っはは!攻撃と防御!同時には出来ないよな!攻防一体は見たことがあるけど!防御を貫通して来る攻撃は初めてだろ!?」
「確かに初めてだ!だから!避け……!?」
「……アイラ ブラムドレイ、俺と一緒に生まれて、俺と一緒に生きて、俺が名を授けた、この剣の名前の意味は《永遠を生きる》《負けずに勝ち続ける》」
「……っがはっ!!」
剣筋が急に曲がり、俺を切り裂いた。
「この一撃は、ちょっと違うってさ、珍しくアイラがプリプリしてる」
「……治らない……!?いや直ぐに治った……」
ただ、深かった、それだけだが……プリプリしてる!?
「俺なんかした!?ちょっと聞いてみて!?」
「……んーっとね……へ?そんな理由!?子供かよ!?」
「ど、どうだって?」
「……私の思い通りにならないから、だって……その、ごめんな、なんかすまん」
「あ、いいよ……俺もともとイレギュラーそのものだし」
「……さて、その目、見たらわかるよ……俺を殺す方法を、見つけたね?それが君を見せる一面だ」
「……あぁ、バレたなら、仕方ないや……ちょっと邪魔しないで、見ててくれ、一万年前とは違って、今は詠唱して、時間や、自分の何かを代償に、力をあげる……!!!」
「知ってる、言葉が増えて、意味が生まれて、より複雑になって、だからその重要性は、守護者の皆が教えてくれたさ……来るといい」
「『我は摘み取るもの』『終末論を綴るもの』『悪夢となり飲み込む』《限界突破》!!」
「固有スキルっ!!」
飛び出して、目の前にまで、俺は移動した。
「っはや!?」
俺の速度に驚きながら、剣が勝手に俺に迎撃してくる。
限界を超えたその動きが、剣を避ける。
ジャンプ、と言うよりももっと低い、グルンと宙で周り、剣を避けたが、顎の前で止まって俺にまだ向かってくる。
アイラの力が、俺に勝手に追いついてきている。
「っだったらよ!!」
足は、アイラじゃない、広がったこの広さを活かして、はるか遠くに離れながら、詠唱を開始しようと考えた。
「アイラが凄いのは、俺も認めてるけどよ!!俺が誰だか忘れたか!?」
「っ嘘だろ!?」
俺の、固有スキルで補強した身体に、素の身体能力で追いつきかけている!?僅かに俺の方が早いが!
「『一から百へ』『思いついたのは随分後だ』『俺と私が連れて来られた』『二から九十九』『一と百は俺が紡ぐ』『冒険の終わりを今ここにぃ!』《限界突破》!」
「同じ技!?」
足を止めた、俺の、この両手をどう対応する!?
俺はこの一撃に!全部の再生能力をかけてやる!
「これで終わってくれねぇか!?」
「まだ!君を知り足りないよ!」




