不死身
しかし、感じるのは自信ばかり。
はっきりいって、強そうには感じない。
外から見て、筋骨隆々では無い、がそれでもラジアンは力が強いが、それほどまでに強そうにも感じない。
「……行くよ!カルカトス!!」
走ってくるクラマス、剣を受けずに、あえて受けてみる。
それは決して舐めているわけじゃない、ただ、俺の目に狂いがないか、百層に来てまで俺が何か違うのなら、俺はここに立つべきじゃない。
「……っお!?受けるの!?」
身体を、切り裂かれる、しかしすぐに治る
ただの安い剣の、斬撃。
ザクラみたいにゴッソリと持っていかれることはなく、ミランのような異次元の強さを垣間見る程じゃない。
「……本当に、百層の守護者?」
「……っはは、まるで不死身のようだね」
「それであってるよ、ようであって、不死身じゃないからね」
「そうだったんだ?さっきのザクラとの戦いは見てないけど、確か見てた戦いで一番ダメージを受けていたリリー戦じゃ頭を貫かれたりしてたのに、違うんだ?」
そうか、ほとんど寝てたりしたのか、それとも時間がズレてるから、なんにせよ、もしかすると俺について知らないことが多いのでは?
「よく見てくれ、左目は義眼だ、こっちは治らなかった」
「頭は?中身は?治ったの?」
「あぁ、治ったさ」
「左目が治らなかったのは?」
「治る前に義眼が着いたから?リリーの輝石が俺に絡みついてくれたから、本物の目は要らなかったのかもね」
よく分からない、しかし、それは今に始まったことでは無い。
ほとんど感覚でやっているんだ、俺の力の配分は感覚でできるから、だからそれに甘えている。
「さぁ、雑談はここまで、君は本当に強いね、剣がまるで効かない……っていうか、ダメージを直ぐに回復してる感じだ」
「……あぁ、そうだな、クラマス、俺に勝てそうか?」
「あいにく、戦って負けたことは無いんでな、負けそうって感覚がわからん」
自信の正体は、それなのか。
一万年前を生きた彼の、無敗伝説、それだからこそ、ここに鎮座し続けたのだろう。
だからこそ、ここにたどり着くであろう俺の力を見たりせずに、ここで待っていたんだろう。
きっと、俺と戦いながらでも、勝てると思ったんだろう。
アドバンテージはいらない、百層の守護者にのみ許された、俺に対する絶対的な知ってるか知っていないかのアドバンテージを捨てて、寝てた。
「……じゃあ、俺からも行くぞっ!!」
グンっと踏み込み、斜め下から切り上げる。
「来な、ビビらせてやるよ」
そう言って両腕を開き、剣を受けてやると笑う。
「それは俺を!舐めすぎだ!!」
安物の剣じゃ俺の体に浅い傷仕方つかなかっただろう。
しかし俺の剣は違う、誰が持つ剣よりも素晴らしいと、胸を張って言える。
「っ!!」
切り抜いた、切り裂いた、剣ごと真っ二つ……にした……したはずだ、刃は切り抜けたし、剣も二つに分かれた。
「……んー、その剣、やっぱりアレか」
しかし、服に斜めに切り裂かれた痕はある、しかし傷は無い。
「なんっで!?」
身体が硬いからじゃない、背中の所も切られているのに、皮膚を割く感覚、骨を断つ感覚、全部感じたのに、傷がない。
「なんだ?……俺は何を見てる?」
幻覚とか、そういう類か?分からない……全然理解が及ばない。
なぜ、だ?とんでもない疑問がある、初見殺しってやつだ、されるのは別に初めてじゃない、しかし、ここまで不可解なのは初めてだ。
ある程度の初見殺しなら、今まで得てきた知識と、どんなに細い糸でも繋がった。
しかし、今回ばかりは分からない、この目で見て、おかしいと感じた。
そして、おかしい理由がわからない。
「どんどん、切っておくれ」
お言葉に甘えて、切り続ける。
幻覚じゃない、この感覚は事実、なんだ。
勇者は、防御が上手い、防御が上手い……とかいう話じゃない、防御をしてくれない。
「……あ!そうか!『悪夢魔術』!」
ありとあらゆる生き物の形を、模倣して、そして、見せる。
「うん、俺の未練の話、覚えてるよね、よし」
余裕で喋る。
あんまり余裕で喋られると悔しいから、口を切ってみても、まーったく口が減らない。
刃が抜けた瞬間から、そこが治り始める。
九十八階層でリリーにしたゴリ押し、それを一生されているような……あぁ
「見覚えがある……それ俺もやったことがあるから」
「お?そうなの?」
「あぁ、クラマス、あんた『不死身』じゃないのか?」
そういうと、ぴくりと眉が動いた。
「んー、違う『不老不死』さ」
「死なないってだけじゃないだろ?」
「あぁ、傷を癒せる、それも直ぐに、際限は今のところ生きてきて感じたことはない」
俺とは違う、完全な不死身。
「……笑えるだろ!?俺は!死なないんだ!!」
全力で攻撃する、全てを見せつける。
そう、見せつけた、ドラゴンさえも、見せた、模倣に過ぎないが、それでもクラマスは満足そうな顔だった。
だから、こいつは『あぁ、今のって、こんな感じなのね』って思いさえすれば、それが見れん改称の一歩。
今までで一番あやふやで、一番簡単だ。
今を見せる、その言葉の意味の受け取り方によって、大いに変わる難易度。
俺は言葉そのままに、今の世界の生き物たちを見せる。
意思や考え方でも、クラマスの未練は果たされるだろうな。
「……あと一つ!見てないものがあるなぁ!」
「なんだよそれ!」
「君さ!カルカトス!!」
掌をこちらにかざした。なにかの攻撃の合図か?
妨害しようとしても、切り飛ばしても、血でさえ飛びもしない。
「来いっ!!アイラァ!ブラムドレイィ!!」




