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黒髪赤目の忌み子は英雄を目指しダンジョンの最奥を目指す  作者: 春アントール
英雄とは、君だ
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本気で望む

「行くぞお前ら」


 来る前に、まず宣言をしてきた。


「ラジアン、魔眼と固有スキルの準備を」


「了解、カルは?」


「《限界突破(リミットブレイク)》……もう完了だ」


「なるほど了解……こっちもOK」


「……よし、じゃあ行こうか!」


 真っ直ぐ突進してくる。

その巨体を受け止めようだなんて事はとても出来ないが、身体があまりにも大きいせいで避けるのさえも一苦労だ。


 上手く身を躱した、そして、切り返しに走ってくるであろうザクラを探した。

振り返ると、ザクラが見えなかった。


「っ!?どこに!?」


「カル!氷の裏!!」


 俺の方からはちょうど氷に重なって見えなかったザクラ、地面が盛り上がる。

俺はそれに気がついた時には既に時遅し、固有スキルまで発動したのに、それでなおあまりにも早い一撃。


 盛り上がった地面から、大きな口を開けたザクラか俺を食おうと、地面から這い上がる。


 しかし、地面諸共持ち上げられたこともあり、俺には食われる前に少しの猶予があった。

そのすきに軽く飛び上がり、攻撃を避けた。


 しかし、ザクラはそのまま土諸共噛み砕こうとはしなかった。


「っおらよ!!」


 そのまま首を振り、土の塊を投げつけてきた。

それがちょうど宙にいた俺目掛けて飛んできた。

その飛んできた地面に足を付けて、別方向に飛ぼうとした瞬間、またもう一度その地面が盛り上がった。


 そして、今度は牙じゃなかった、答え合わせは直ぐにされた。

爪が伸びてきた、俺を突き刺そうとするその爪が。

しかし、俺の目の前に迫り来た瞬間、ピタリと止まる。


「へっへーん!私をほっとくからよ!」


 凍らせるその魔眼が大活躍している。

しかしそれは直ぐに氷を割り、突進してくる。

その氷の魔眼の破壊力は凄まじい。

あっという間にザクラの芯までも凍らせてしまったのだろう、羽と左前足の指が一つ折れた。


「っおおぁ!!」


 だがそんなことお構い無しにまだまだ突進してくる。

しかし、その鋭い爪を弾いた瞬間、ザクラが地面に伏した。


「……ラジアンの重力か!!」


 この場で俺だけが初見じゃないこの重力に、ザクラも不意を付かれ、大地に落ちる。


「っんだこれ!?」


「悪いがそれは教えられない!アデサヤ!やれ!!」


 血の刃、それで確かに鱗は裂ける、だがしかし、それでも命には全くもって届かない。

だから、俺は剣を作らない。

俺は主人公になりたい、だが、主人公だけど、剣である必要は無い。


 昔、なにかの本で読んだことがある。

斧と剣を持つ一人の男の武器の使い方。

斧を相手に振り下ろす、それを受け止めた敵に受け止められた斧にもう片方の手に持つ剣を振り下ろしもう一度斧の衝撃で受けた剣ごと敵を叩き切る。


 俺は杭だ、杭を作ればいい、とびきり大きな血の三角錐。

それを魔力と混ぜて固めて、作り出す。


「くい?」


「……あー、なるほど?」


 ザクラは地面から何とか見上げたが、なにかわかっていない様子だ。

ラジアンは不思議そうな顔をしたあとニヤリと笑った、わかってくれたか!?


 瞬間、魔眼の効果の対象が杭にも反映されて一気に落ちる。

そして、その落下速度よりも先に、ラジアンが飛び上がる。


「こういう事ね!!」


 その杭を剣の腹で思いっきり叩く。


「っな!?」


 そこで初めて気がついたらしい、そして同時に冷や汗をかいた。

咄嗟に前へ転がるザクラ、心臓を狙ったが、少しズレて胴体に突き刺さる。

それが地面に串刺しにし、固定した。


「っごっ……!!」


 確かに貫通した、そして俺たちを見上げる。


「ただ望むだけじゃお前ら二人には到底届かねえよ!!だからぁ!!『本気で!』望む!勝利を!お前たちに勝ちたいんだ!!」


 竜が叫ぶ。

わからなかったが、今ラジアンが空を飛んでいる。

以前は空を飛ぶことを禁じられいたが、今回は空も飛べるらしい。

俺はラジアンの手にぶら下がるように飛んでいる。


「……《勇敢な者(ブレイバー)》ァァ!!」


 両手両足を地面につけて、歯を食いしばる。

歯の隙間から血の泡が吹き出してきて、目玉が飛び出しそうなほど見開く。


「ッヅォォオオォアェアアァ!」


 ただ、ただ気合いだけだ。

なにか特殊なスキルや魔法を使っているんじゃない、ただ気合いだけで地面を押して、立ち上がろうとしている。


 その気迫に、俺は思わず動きが止まった。

瞬間、俺は自由落下を始める、ラジアンが俺の手を離した。

そして俺の横を急降下するラジアン、氷のように冷静なその判断を見て、俺も遅れながらに動きだした。


「っおあぁ!」


 しかし、一歩遅かった、気合いで立ち上がり、杭を引き抜く。

そしてそれを武器にして、振り回す。


「っな!?」


「ラジアンッ!危ない!!」


 咄嗟に解除する、瞬間血の杭はあの魔力と練った強度ではなく、ただの液体に変わる。


「読めてんだよォ!!」


 血が飛び散る、俺の血が宙にいる俺たち目掛けて飛んでくる。

ラジアンは刃を立てて来るはずだった杭を迎え撃とうとしている。


 俺は咄嗟にそれを解除してしまった。

俺もラジアンも同時に血の目潰しをくらい、目の前が赤に染る。


「ラジアン!お前のその目!厄介すぎるだろ!!」


 俺は血で見えなくなった目を閉じて、別のところから目を作り出し、視界を得る。

瞬間見えたのは、ザクラの爪がラジアンを貫通するところ。


「っぐは……!!」


「ラジアンっ!!」


 そのまま吹き飛ばされて、後方へ飛んでいく。

それに追いつくように、固有スキルのおかげか、凍傷で割れたはずの翼で低空飛行し、ラジアンに追い打ちをしかけに行く。


「っ!させないぞ!!」


 その後を追いつこうとした。

しかし、僅かにザクラの方が早い!?


「っ!!クソっ!魔法は殆どアイツが食ったせいで残っていない、俺があいつに追いつくには……!いや……」


 いや違う、追いつかなくてもいい……やるしかない!

背を向けている……『悪夢魔術(ナイトメアマジック)』を使い、腕を伸ばす。

それを持ち上げて、鮮血剣を巨大なものにする。

両断は不可能だろうが、それでも少しでもラジアンに時間を作る!


「っくらえぇ!」


 背後に振り下ろす、超リーチの巨大な血の剣。


「……読めてんだよ!!」


 背中を向けたままなのに、俺みたいに背中に目を作れるわけじゃないのに!避けた!ドンピシャのタイミングで!!

いや、避けただけじゃない、地面を強く踏んで、俺の方に飛んでくる。

ブレーキをかけようとしても、間に合わない!

目の前に、巨大な竜の爪が……俺を縦に切り裂く。


 三枚に切られたが、すぐに再生する。


「……ほんと、反則じみた再生能力だな」


「……さぁな……!」


 今の一撃で、ゴソッと再生できる容量を削られた。

そういえばサクラの腕は……凄まじい力を持っていたな……!


「……さぁなって……お前まさか……?」


 やばい、我ながら失言だった、動揺のあまりいらないことまで言ってしまった。


「……ラジアンは深手、お前は……今からぶっ倒す!」


 ラジアンがいない今、息を吸うザクラ。

ヒヤッとしたものが背中を走った。

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