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黒髪赤目の忌み子は英雄を目指しダンジョンの最奥を目指す  作者: 春アントール
英雄とは、君だ
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終幕

「……英雄らしく、美しく躍らないとね」


 段々と、足さばきがどんどんと洗練されていく。

それにつられて俺もどんどんと上達していく見慣れないリズムのステップ。

知らないし、使い道はここしかない、相手とガッチリと形がハマらない限り、このステップの使い道はない。


「……俺も、上手くなってきたもんだな」


 ゆっくりと俺もリリーもペースが上がる。

そう、これは、俺が光魔法を撃つ前に加速し続けていた時の様だ、二人とも、ペースがどんどんどんどん上がる。


「宇宙の精霊ってのは、なんなんだ?結局」


「……余裕あるし、いっか、二人とも慣れるまで話そっか。

私が君に負けたあと、君がまたここに来るまでの時間、私はラヴィと対談し続けた。

仲良くなれたよ、色んな話を聞いて、色んな話をしたの」


「……それで?」


「私は道を知ったの、未知も知ったの。

でも、カルのは知らない、その先の話だったから。

でね、私の未来を見る力、別の世界を見る力、それは未来予知の力でもあるけど、真の使い道はそうじゃない」


「……どういうことだ?」


 俺はその力に異常なまでに苦しめられてきたのに、それはまだ真骨頂じゃないというのか?


「この力の真の使い道は、無限にある世界の中で、見聞を広める力

未知を研究し続けたありとあらゆる世界線の力を借りるの」


「……はぁ?」


「精霊とは、その概念を信仰する力の形」


「……あ」


 流石にここまで説明してもらえれば、俺も何となくわかった。


「……私のこの力は、私の力は、あくまでラヴィのサポート、補助、ラヴィが居て初めて私は強くなれるの。

世界を見て、世界を広げて、その世界の人達が広げた世界を見てきた。

宇宙について、調べ続けたそのある種の信仰を合算して今、私はラヴィに力を還元する」


「……わかったよーなわからないよーな……いや!未知ってのはそういうもんだよな!」


「うん!そーだよ!そーゆうもの!さ!レッツバトル!!」


 お互い余裕がなくなって来た、喋る余裕はもうそろそろなくなってきた。

お互い、全力で戦い始める、圧縮された時間で、未知と未知がぶつかり合う。


 今、リリーは増え続ける世界から、力を際限なく手にし続ける。

俺もまた、時間が経てば経つほど加速し続ける。


 それは、あの九十七層で俺が光魔法を撃つ前、加速に加速を続けてきた時のように、俺たちはどんどんと早くなる、重くなる。


 それはなんて楽しい時間だっただろうか。

つい最近も、こんなに楽しい時間があった。

ミランと戦った時だった、あの時も本当に楽しかった。


 その頃の剣を思い出した、受けは雲のように手応えがなく、返す剣は何よりも鋭く、的確に急所へ滑り込む。


「っお!?なんか変わってきたね!?」


 思い出してきたこの感覚。

最近の俺はなんて幸せなんだろうか。

こんなにも強い人達が俺を認めて、俺と戦うことを人生最後の目標地点と定めてくれている。

なんて光栄なことだろうか、俺はそれが嬉しい、それが誇らしい。

『お前は英雄なんだよ』そう言って貰えているような気がして、本当に嬉しいが、俺の夢はどんどんと前へ前へと進む。


 最近は本当に幸せだ、前からずっと幸せだった。

けど最近は、今までの人生が終わりそうなぐらいの幸せを感じた。

最高に戦いが楽しくて、最高にご飯が美味しくて、最高に世界が明るい、そして、最高の同僚も上司もいるし、ラジアンだっている。


 独特のステップ、お互いの変わり続ける攻防の流れ、今度もお互いが変わる。


「……ねぇ!最後の一撃は!何にするの!?」


「……俺の最強最高の一撃を持って!打つ!!」


「私も!最高最強の一撃で!あなたを倒す!!」


 お互い距離を取った、俺がこれを使うのは、初めてだ。

俺が見た悪夢は、この技を使っていた。

恐ろしい三騎士を、あっという間に喰い殺した、あの技があれば。


「……もう終わらせよう」


「概ね賛成音楽(ミュージック)観客(オーディエンス)もいないこの戦い、疲れて全力出せなくなる前に!」


「あぁ!全力で出来るうちに!やろう!」


 後ろに飛ぶ、お互い初めて距離をとった。


「『悪夢魔術(ナイトメアマジック)』〈最強の合成生物(カル カタストロフィ)〉ィ!!」


「『星霊魔術(ラヴィマジック)』〈未知の精霊術士(サジェントス)〉」


 お互いの全力の攻撃。

俺の剣を中心に風が吹き飲み込む。


 大木は風で折れても、花や草は風では折れない。

狂風が吹くばかりじゃリリーは折れちゃくれない。


 星空のように美しい花弁を携えて、巨大な花が根を伸ばしてくる。

地面から、そして俺からも力を吸い取ろうとする。


 とても凄い攻撃のはずだ、この攻撃を、止める方法なんてほとんど無いから。

でも、惜しむらくは俺は世界で一番相性が悪い相手だということ。


「……俺の名は、終末論……そして摘み取るもの……だ」


 花を摘むように、じゃない、実際に摘み取る。

花の根はリリーに絡みついている


「……これで終わりだな」


「……うん、摘み取っちゃってね」


 手を引く、花が摘み取られる……命も摘み取る。

カルカトス、俺は勝った、この剣のおかげで勝てた……ナイトラインのおかげでだ。


「これにて終幕……ありがとう『アイビー』……っぉえ?」


 なんの名前だ?……剣の名前はナイトライン……


「……クソっ……力使いすぎた……」


 多分疲れて変な事口走っただけだろ……

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