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黒髪赤目の忌み子は英雄を目指しダンジョンの最奥を目指す  作者: 春アントール
英雄とは、君だ
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未来からの忘れ物

「……さて、次は、私から攻めさせてもらう……きっと味わうことになる、私が、最強と称された訳が」


 剣を持ち、別段早く攻めては来ない。

カツン、カツン……と、歩いて詰めてくる。


 サクラが、俺の横に立ち直し、剣を抜かず、両拳を開く、剣を捕まえる気か?


「……さて、行こうか」


 瞬間、目の前から消えた。

目玉が、黒目が動きをおって、左下へ消えたことが確認できた。

ドロンと、膝の力を抜いて、まるでコケるように俺の死角に滑り込む。


「さぁ!それじゃダメだ!」


 剣を抜き、左斜め下からの斬撃を受けながら、逆の目玉で未来を見る、右頬を殴られる未来。


 剣を受けた瞬間、すぐに剣を手放し、右にガードを固める。

打撃の感覚は来ず、がら空きの左に拳がめり込む感触。

しかしこれは……見えない、左には、拳なんて飛んできていない。


 サクラが飛びかかる。

あの硬い腕が透明な何かに金属音を上げながらうち払われる、その腕は傷がついて血が溢れつつある。


 それでもサクラは食らいつく。

腕の再生は間に合わず、それよりもさらに傷が増す。


 サクラだけにいいカッコさせてやるもんか!


「行くぞ!『悪夢魔術(ナイトメアマジック)』!」


 右の拳を振りかぶる。

さらに巨大に、さらに大きくする。


「!クレイア!篭手!」


 俺の右手を、紫の水晶が覆う。


「当たらなきゃ意味が無いよ」


 ちょんっと、剣でつつかれた。

横から連撃のように連続で衝撃が襲ってくる。


「っお!?」


 拳が逸れて、外に腕が突き破った。


「戦いの場を変えようか!」


 そう言った瞬間、背中を思いっきり蹴り飛ばされた。

背骨から、嫌な音がした。


「っおおぉあ!?」


 サクラも少し遅れて飛んでくる。

羽を羽ばたかせ、着地をフワッとさせる。


「どうする!攻撃しても、捌かれるし、避けられないぞ!?」


「作戦会議?いいよ、やるといい」


「余裕だな……カルカトス、私は、やるぞ」


「……?何を?」


「輝石の……吸収!」


 アイテムボックスを、ひっくり返すと巨大な九十層の輝石。


「力を……我がものに!」


 紫の水晶が絡め取り、ゴクンと飲み込むように、身体のうちに消える。


「……ど、どうなってんだ!?」


 明らかに体積オーバーだろ!?


「…………お、帰ってきたな」


 少し遅れて、サクラが帰ってくる。

多分、ザクラと話していたんだろう。


「……っクハハ!なるほど!カルカトス!フューチのじゃくてっ!?」


 ザクラと話したからか、フューチの弱点がわかったらしいが……話す間もなく吹き飛ばされた。


「……っぐ……っはは!やはりか!止めてくるよな!?弱点だから、なぁ!?」


 そうしてサクラが立ち上がる瞬間に、また攻撃をして、立ち上がらせない。


「っがっ!?」


 すると、フューチの方が、体をぐらつかせた。


「……っまさか……もうコツを……!?」


「……やってみたら、できるものだな……っくはは!」


 分からない、何が弱点だ?


「弱点、それは……未来のフューチが、私たちに攻撃してきてるんだ」


「……?そういう事だろ?未来に攻撃を置いていく、それが?」


「私たちには、フューチが道の先に居すぎて見えていないだけだ……私たちには、背中どころか、影も形も見えていない。

だから、攻撃が見えない、その攻撃をしたフューチは、その未来よりも更に先に行っているから。

でも、私たちに攻撃するタイミング、置いてきた攻撃が当たる瞬間、一瞬『フューチは二人いる』」


「……?」


「……つまりだ!あれは、不可避の攻撃だ、確かにそうだ、意思も何も無い、だが、あの攻撃は、言ってみれば透明人間の攻撃だ。

不可避の攻撃、いや、不可視の攻撃だ。

カウンターを合わせるんだ、そうしたら、道の先にいるフューチにダメージだけが追いつく」


「……用は、カウンターしろと?」


「あぁ!真面目な白兵戦では、誰一人として勝てないと、ザクラが言っていた!たとえそれが何千人いても、一人のフューチには勝てはしない!」


「……けど、いつ来るかも分からないのに、どうやってカウンターを合わせてるんだ?」


「私は、くらった瞬間に神速を使って殴り抜いたはずだか……なんて言うタフネス……勇者の防御力の高さは相変わらず目を見張るものがあるな」


 俺はこいつみたいな超反応は持ち合わせてない。

固有スキルを発動させて、周囲に線を張り巡らさせ……


「っぐ!?」


「そうはさせない!厄介な事になる、それぐらいわかる」


 なるほど、張り巡らせる前の俺に攻撃したのか。


「……じゃあ……っぶ!?」


 身体中を硬質な鎧で守ろうとしたら、それすらも、その前に潰される。


「……仕方ない……仕方ないな」


 そう言って、剣を握り構え直す。


「我が聖剣の名は『フォーリュア』」


 そう言った瞬間、剣が光り輝きだす。

光の勇者、だったのか?それすらも見せてもらえてなかったのか?


「……名前を呼んでもらったことが、随分と嬉しそうだな、あの剣」


「……貴様にもそう感じるか……」


 聞けば、フューチは、人生でただの一度も人に恥じるような行いはしたことがないらしい。

人の為に、常に善行を積み続ける、得の高い人間だったとか。


 いつしか、木々は彼女の為に実を落とし、花を咲かせ、水は冷たく澄み渡る。

世界に愛された、いや、もっと言うのなら、神に愛された、愛されるべくして愛された彼女が、聖剣程度、特になんでもないだろう。


「……さて、喰らうといい……不殺の勇者、必殺の一撃を」

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