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黒髪赤目の忌み子は英雄を目指しダンジョンの最奥を目指す  作者: 春アントール
英雄とは、君だ
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さようなら

「……フレイ、来たぞ」


 そう言うと、少しして奥から歩いてくる。


「おはようございます、カルカトス……来てくれて嬉しいです。

剣を抜いて、戦いましょう……私の気が変わらないうちに」


 そう言って、フレイは光から武器を作り出した。

杖、と言うよりも先が丸いメイスのようなものを光がかたどり、それを手に取った。


「……これが、私の武器です」


 笑顔でそう言い放つ。

実にいい顔だ、これからの戦いを楽しみにしているって言い訳じゃない、ただ、今から決別する、その自分を楽しみにしてるように見える。


「……もちろん俺の武器これだ」


 そう言いながら、アデサヤを引き抜く。

さて、メイスを相手に戦うのは、何気に人生初めてだ。

打撃系の武器も、拳意外だと、これが初めてか?


 板外と対戦経験のない武器の系統に、若干の戸惑いを覚えつつ、それでも俺は負ける気がしない。


 左目の眼帯を早速外す。

未来を覗き見てみると、そこでは、以前に聞かせてもらった固有スキルで振り直された数値で襲いかかってくるフレイ。


 一体どれほどのレベルのものなのか、気になって受けてみることにした。

がしかし、瞬間的に本能が避けろと叫び、咄嗟に後ろに飛んだ。


 風圧だけで、俺の体が浮き上がり、そしてその瞬間、フレイの前に光が浮かんだ。

追撃かと身構えたが……よく見たらそれは文字だった。


「『これを見たら解除と言いなさい』?」


 すごく馬鹿そうな声でフレイがそう言った。


 知力とかも全部力に振ってるせいで、馬鹿になってしまっているのか……


 解除と読み上げるだけで、元のフレイが帰ってくる。


「さて、お次は……」


 光の玉に乗り、手を叩く。

瞬間、空に浮かぶ星よりもよっぽど多い数の光の玉……いやそれよりも小さい粒が浮び上がる。


 そしてそれを手で先導し、俺を襲う。

宙に浮いている理由は、単純回避するのもあるだろう、が


「……筋力も捨てたか!?」


 自分で立つ力さえ、魔法攻撃に利用しているのか!?

その無数の光の粒を避けられる訳はなく、体を貫通して、幾千の穴を開ける。


「それじゃ俺はしななっ!?」


 チカッと光った瞬間、とりあえず右に飛んだ。

右半身が全部もっていかれた。


「っ!!《限界突破(リミットブレイク)》!!」


 すぐに体を癒そうと、固有スキルと白魔法を併用する。


「〈白雷〉」


 白い線が、また伸びてきた。

それを今度は避けて見せたが、光の線は消えずに、それをそのまま横に振り抜いてきた。


「っおおぁ!?」


 体を大きく反らして、避ける。


 距離を詰めようと走るも、すぐに魔法に妨害されて距離を取られる。


「あなたに近距離戦で勝てる自信はありません。

遠くから、永遠と攻撃をします」


 そう言って、光の玉を終始ばらまく。

恐らくスキルのレベルも弄ることが出来るのだろう、明らかに聖魔法と言えど、制度が常軌を逸している。


 光の玉一つ一つが俺の体を部位で狙ってくる

そして、一発でも被弾した瞬間、飛んでくる雷。


 そして、そんな技を連発していながら、未だに底の見えないフレイのMP。


 おそらく先に俺がガス欠になるだろう。


「……ノーリスクノーリターンだよな」


 グンと身体を沈める。

俺が最近捨て身の特攻をすることは、守護者たちであれば十分にわかっているだろう。


 だから、フレイもそれを予測できた。

そして、俺はきっと予測されるだろうと予測した。


 剣を鞘に収め、両手を地面につき、目を合わせてニヤリと笑う。


「来ますか!」


「あぁ、今行くよ」


 地面につけた手の形を変えて、地面を掘り進めやすい形状に変化させる。

それに気がついた瞬間には、俺はもう穴を掘り始めている。

爆速で穴を掘り、フレイのいる所に着いた瞬間には、俺がさっきまでいたところが穴ぼこに、地面に向けて斜めにけしとんでいた。


 しかし、俺の穴を掘る速度を見誤ったな、こちらを振り向くよりも先に、その穴を掘った手でそのまま切り付ける。


 そしてすぐに片手を剣に伸ばし、地面諸共目掛けて血の刃を振り抜いた。


「……ぁ、これ……治らない……」


 知っていたのか、心臓に刺さった刃を見つめて、また俺を見る。


「……私の、得意魔法です」


 光のダガーを直ぐに生み出して、俺にグサリと刺した。

感じたのは、暖かい……心地いいこの感じ。


「……いい気持ちだ」


「……私の得意魔法……ですか………ら」


 光の粒が俺の顔を横切って空へ消えていく。


「……得意魔法は、回復魔法……か」


 だよなと思った。


「……フレイなら、そうすると思った」


 だから、ダガーはあえて受けた。

短くて結構、長ったらしい言葉はいらない。


 『仲間だから』


「さようなら」

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