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黒髪赤目の忌み子は英雄を目指しダンジョンの最奥を目指す  作者: 春アントール
英雄とは、君だ
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亡霊

「……んじゃ、光魔法、行くぞ」


「うん、わかったよ」


 二人で手をかざし、魔法を使う。

光の魔法が、殲滅する、この階層に、破滅的な輝きが訪れる。


「……っお」


 鎧が浮いている、いい鎧だ、魔法がほとんど通じていない。


「あいつは……きちんと戦った方が良さそうだ」


「だね、行こ、兄さん」


 二人で歩調を合わせて、走る。

一本の大剣を持つこの鎧、中身は無さそうだ。

二対一、グリムもいい動きをする、鎧が着いてこれる戦いじゃない。


「……殲滅完了」


 作業的に、突き進んでいく。

迷路じゃなくて、石畳の上を、ただ歩いていく。


 壁に、手配書が貼ってある。

『クロン ウェイパー』

一級お尋ね者、大盗賊。


「……よぉ、久しぶりだな」


 壁に目をやっていたが、ふと前を向くと、椅子に座って、こちらを笑ってみていた。


「……クロン……久しぶりだなァ」


「うお、なんか俺相手の時だけなんか雰囲気違くない?」


「……あんたとは、こういうテンションで戦うんだよ俺は」


「っはは、そうか!

そっちも久しぶりだな!グリム!あの二人は元気か?」


「えぇ!私の目を見たらわかるでしょ!?元気よ!」


「……っはは!だな!そうだよな!!

っし!久しぶりだ、剣を構えるのは久しぶりじゃない……戦うのは久しぶりだ。

やっと本気で戦える、全力の100パーセント……!」


 邪龍のダガーを構える。

あれを今見返してみれば、この辺りで信仰されている竜ではなく、海の向こうの龍のダガーだ……どこかから盗んだんだろうな。


「……いくぜ!」


 そう言って、準備運動とばかりにトントンと軽く跳ねる……そうだった、こいつはこうやって戦う。

ゆっくりと慎重に歩いて距離を詰めてくる。


 何度も何度もシュミレーションしたかのような、正確な動きで、寄ってくる。


 剣を構える、我流の構で、ジリジリと近づく。

俺の間合いの5歩先で、ヒョイッと跳ねた。

そして、地面に足が着いた瞬間、俺の目の前まで爆発的に加速した。


 迎撃、剣を上に切り上げる。

それを直進の途中にぐにゃりと曲がり、ありえない角度から俺の首を掻っ切ろうとしてきた。


「っはぁ!!」


 それを俺の耳元を掠るほどギリギリに打った小さな光弾が、クロンの攻撃を止めさせた。


「……早いなクロン」


「カルカトス、お前も反応できるようになってるな……グリムも」


 その瞬間、小石を投げてくる。

そんなもの、頭を動かして軽く避けて、一歩前に近づいた。


 瞬間、横で爆ぜた。


「っな!?」


「《過剰な悪戯(トラップマスター)》」


 前に食らった罠と比べてこれは……威力が上がっている!


「これって……!」


「……っはは!」


 ヒュンと距離を詰めてくる。

攻撃をする……全てスルスルと避けられた。


「っ!?」


「惜しいな!」


 完璧なタイミングの回避が、一歩前に踏み込んできたクロンの刃に突き刺された。


「……っ!」


「前に比べて、読みやすいぞ、カルカトス!!」


「……楽しくって、仕方ねぇんだよ!!」


 剣を振り下ろす。

きっとこれも、俺の目を見られているから、バレているだろう。

だからこそ、グリムに攻撃を頼む。


「……!」


 完全無詠唱で打てるようになったあのレーザーが脇の下を通り抜けて、クロンにあた……らない!?


「俺の《第六感(シックスセンス)》だ、舐めるなよ」


 俺は切り結んで、位置を入れ替える。


「挟み込むぞ!グリム!」


「っはい!!」


「……デジャブゥ!」


 こんな状況で楽しそうに笑う。

やっぱりこいつは、早めに叩き潰さないと、こっちがマズイ。


「《限界突破(リミットブレイク)》!」


「《限界抑制(リミットセーブ)》」


 二人の固有スキル。

俺のは自分を限界を超えて強くする。

グリムのは、限界を超えて、押さえつける。


「っおぉ!?」


 それを、楽しそうに笑う。

俺は加速して、切りかかる。


「っおせぇぞ!英雄!」


 その剣を、拳で側面を弾かれ、ダガーが伸びてくる。

それをグリムが何とか抑える。


 抑制した力を、一気に解き放つ急加速が予想外な動きを繰り出してクロンを翻弄する。


「こっちはこっちで厄介だな!?戦いずらい!!」


 それに反撃しようとしたクロンに、俺がまた喰らいつく。


「っはは!ダメだァ!お前らもっと早く戦えるだろ!?

シュネーとツバキはもっと早いぞ!!」


 そう言って、俺たちに、一気に切りかかる。

何とか避けた、薄皮一枚切られたが、何とか一歩引く。


「……っさぁ!!来いよ!!」


 ノーガード、一撃当ててこいと、挑発しているのかもしれない。


「……伸るか反るか……」


「反るよね、兄さん!」


 無言で頷く。


「『悪夢魔術(ナイトメアマジック)』」


「……来るか!?」


「それを……『抑制』してっ!!」


「俺が『限界』以上まで……アゲて!!」


 身体が引っ張られるような感覚、前に強く引っ張られるような。

叩き込む一撃は、スピードと、そして、俺の持つ最強の一撃は。


「行こうか、アデサヤ」


 その言葉に答えて、血を吸い出す。

剣にそれを反映させて、強く固く握る。


「おぉ!?それっやっぱりアデサヤだよな!?」


 アデサヤが珍しく俺に語り掛けてきた。


「カルカトス、お主厄介なのと戦っとるのぉ……!」


「……知ってるのか!?」


「もちろん、五千年前、最強は氷魔王じゃった、じゃが、二番目は誰かと聞かれたら、妾は奴を推す」


「……なに……!?」


「……こい!見せてやるよ……俺を、盗賊団団長『クロン ウェイパー』を」


 何も言わずともグリムは絶妙なタイミングで俺を解放した。

抑制された力が限界突破し爆発する。


 防御不可能の速度、今ならカルラ・ド・ボルテよりも早い。


「『血壊』!」


 アデサヤに教えて貰った、一万年前の技……どっちが強いか試してやる!!


 横を突きぬけた。

確かな手応え、振り返れば、上半身と下半身が分断されたクロン。


「……っし……!!」


 あっさりと決着は着いた。

相性と、お前を知ってるやつがいた。


「……グリ……あぇ?」


 胸元を見ると、ダガーが突き刺さっている。

刺し違えてでも……と言うやつか。


 これぐらいすぐ引き抜ける。

そして、すぐに癒そう、それで終わりだ。

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