目覚まし休養【カルカトス】
「………っは!……い、生きてる!」
「……か、カルゥ……起きたー!よがっだよー!」
涙をボロボロ流しながら俺に抱きつくエン……辺りには誰もいない、頭を撫でてやろう。
「ごめん……俺、また気絶しちゃってた」
「いいよぉー!カルが無事でよかったぁー!」
心から自分を心配してくれる事が、不謹慎だが、嬉しかった。
時間は……外は真っ暗、つまり深夜、ここはどこだ?
「……喉、かわいたな」
「あ!じゃあ待ってて!私お水取ってくる!」
「ありがと、エン」
数分後、エンの取ってきてくれた水を飲み干し、一息つく。
「眠れないね」
「だね、全然眠れないや」
隣で寝転んでいるエンの方を向こうとゴロリと寝返りを打つ。
「いてっ?」
「大丈夫!?」
少し過保護気味になってしまったエンをなだめながら、痛みの走った横腹を見ると
「……な、なんだこれ?」
「わー……綺麗だね、これ」
「魔石……にしては随分と綺麗……第1階級にしては小さいし……何かな?」
この魔石を見ていると……何故だろう?アライトさんを思い浮かべてしまう。
そして、直感的にわかった『アライトさんだ』と。
そういえば、横腹の傷はどうなったのだろうか。
「うわぁー……痕残っちゃってるね……」
「ま、まぁ、かなり深深と……貫通したからね」
我ながらよく生きていたもんだ。
「ダンジョン、またすぐに潜るの?」
「……いーや、ちょっと森に帰って休養しよっかな……流石にまた、もう一度潜る訳には……また返り討ちに会うのがオチだろうからね」
あのメンバーだから、アライトさんに勝てたんだ。
1人なら秒殺だ。
「……とりあえず、ここの医者にOKを貰ったら、ちょっと森に帰るよ……もしかしたら、2人連れて行けるかもしれないしね」
「!いいねー!それ!よし、そうと決まればいっぱい食べてササッと怪我なおそーね!」
「はーい……そういえば、エンはご飯食べなくていいの?」
リョクには時々パンをあげたりしていたが……
「私は、カルの魔力で十分だよ!心地よくて、ポカポカするお日様みたいな魔力なんだよね」
どっかの魔族には『黒くてドロドロした魔力だ』と言われたものだが……
受け取り方は人それぞれか……
「私たち、みーんなカルのことが大好きだからね、死んだりしないでね!」
「あぁ、死なないさ……みんながいるからね」
「ふふっ、前までは『面白そうだから』なのに、今は『生きて欲しいから』なんて、みんな君を求めているんだよ」
「あぁ、そうだね」
夜が明けるまで、エンと、ゆっくり話をした。
棚の上に置いていた果実を齧りながら、話したものだ。




