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黒髪赤目の忌み子は英雄を目指しダンジョンの最奥を目指す  作者: 春アントール
英雄とは、誰よりも勇敢な者だと自分を鼓舞できる者だ
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九十層の守護者【ザクラ】

「……っはは、もう俺とアンタしかいなくなっちまったなぁ……!」


 そう言って、こいつの方をむく。


「そうだな、もう2人だけだそれだけ英雄が近づいてきたって訳だな」


「……ま、そうだな、さて、俺は勝てねぇんだろうな」


「……そう思うよ」


 ちぇ、フォローの一言入れてくれよ。


「あんたもそう思うか?」


「あぁ、そう思うね、サクラ、彼女が君の天敵だ、絶対に勝てない」


「……だよなぁ、ったく、同じ固有スキルなのに、なんでああも内容が違うかね?」


「才能だろう、わかってるだろ、あいつは果てなく努力する天才だ」


「……ま、そうだよなぁ……あの熱い熱いあいつは、多分カルカトスがいなかったら迷宮の英雄になるのは、あいつだろうな?」


「……っはは、面白いね、そのもしもの話。

でも、絶対にそれはありえないよ」


「……んぁ?」


 なぜそう言いきれるのだろうか?もしも、カルカトスがいなかったら、そう、もしもの話なのだ。

もしもというのは、多分無限に広がってる話だと思うたんだけどなぁ?


「カルカトスがいないと、整合性が無くなる、おかしい話になって、矛盾が生じるからね」


「……はぁ?」


 俺の知らない話を、こいつは沢山知っているから、こんな反応ができるんだろう。


「彼の関心を、どうにかして引き出してみてごらん、もしかしたら一端がつかめるかもしれないね」


「関心をひくぅ?」


「あぁ、それができたのは、今の所リリーだけだったけどね」


「……?と、どういうことだよ?全員にあいつは関心を示してたと思うけど?」


「確かにそう見えたね、俺もそう思っていたが、カルカトス、彼はいつだって無関心なんだ、何においても関心がおけていない」


「……な、なんでなんだよ?あんなに楽しそうに戦ってるのに、無関心なのか?」


「……逆に、君はどういうものに関心を持てない?

どんなものをつまらないと思う?」


「……そりゃ、面白くないものだろ」


 頭を抱える……バカにされたな?


「……例えば、だ。

全く知らないものを熱く語られたり、はるか遠くの話を、想像も及ばないような話をされたり、何度も見た結末を知ってる演劇を見てて、そんなものを聞いて、果たして何が面白いんだろうか?」


「……っんだよ、あいつはそうだってのか?」


「さぁ?分からないね、俺にだって分からない。

あいつは、ヘンなんだ……俺が、全く知らない、あれはなんだって、何回自問自答しても、聞いてみても、地上で聞き込みをしてみても、誰一人だって、確かな答えを話してくれない。

ボヤっとした答えばかりなんだ!だから、お前が見せてくれよ、カルカトスってのを!」


 俺に熱く語ってくる……がしかしだ。


「悪いな、俺が興味あるのはサクラだけだ、あんたの言う関心が、俺にはないんだわ、だから悪いけど、俺は俺の戦いたいやつと、俺の全てをかけて戦う」


「……ま、それでもいい、ただ、アイツを無視できるわけが無い、それだけは覚えておけよ」


「……一応な、気合いが入りすぎると周りが見えなくなっちまうからなぁ、それはその時その時で対応するわ」


「……あぁ、そうか、それじゃ行ってこい……もうすぐ出番だ、竜王ザクラ グランド、九十層の守護者、きっと守護して見せろよ」


「……嘘ばっかりだな」


 あの男の言葉に、そう苦笑いを浮かべながら俺は、九十層に上がる。


 赤い竜、黒いキメラ、変な2人組だが、なかなかどうして、上手くお互いのピースが合っているように見える。

理由は分からない、多分あいつら同士の問題なんだろう。


 お互いがお互いを、敬い、尊敬しているから、多分あの二人は横に並べるんだろうな。


 ネーヴェの後ろにずっと居た俺には、絶対にできなかったことだった。

あいつの横にたって戦うのを、夢に見ていて、そして俺は王になって、その力を得ただろうに、俺はそれでもあいつよりも弱かった。


 俺はさらに強くなる必要があった、だから何もかもを捨てて迷宮に入った。

そんな大切なものを投げ捨てた俺が、ネーヴェと対等に戦う日が来ることなんて、二度とないことに気が付いたのは、少しあとの話だった。


 だから、もう俺は後悔しない、前へ進むだけだ、ずっと前へ、前へと進むだけ。

地上では、純血のドラゴンはもうこのサクラだけらしい。


 キメラの技術の応用で作られた氷竜や、魔界に昔から住まう邪竜や黒竜も、純血とは言い難い。


 サクラが、最後の純血のドラゴンだ。


 そんな奴が、今までで1番の天才だ、こんなにも若く……幼くありながらも、既に竜王の素質は持っている。


 各階層の古の竜王達は、俺が呼ぶよりも先に、サクラの呼び声に応じて現れた。


 竜王さえもサクラの言葉には、逆らえなかった。


 それほどまでにあいつは圧倒的だ、とでも言うのだろうか?

ならば、俺が直々に戦って、試す他ないだろう。


 俺の人生……竜生最後の戦いだ、派手にやろう、そして散ろう……!


 こんなこと考えてるやつが、勇敢なわけないよな

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