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黒髪赤目の忌み子は英雄を目指しダンジョンの最奥を目指す  作者: 春アントール
英雄とは、誰よりも勇敢な者だと自分を鼓舞できる者だ
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英雄竜王

「……い、おーい」


 体を揺らされた。

目が覚めて……ちょっとぼやけて見えた。

いい匂いがするな……


「飯か」


 カルカトスの顔を見るなり口を開きそう言った。

心配そうな顔をされた……が直ぐに呆れた顔をして


「……頭を打ったのかと思ったが、お前はそういうやつだったよな」


「そういうやつとはどういうやつだ貴様……っと」


 ふらついた私を支えようとカルカトスが動いた瞬間、クレイアが水晶で私を支えてくれる。


「すまん、クレイア」


「いいよ、ゆっくりしててよ、アーンしてあげるよ」


 カルカトスが取りだした飯は、非常に豪華なものだった。


「き、貴様!こんなもの作れたのか!?」


「落ち着けよ、アイテムボックスの中に閉まっておいたんだよ、鮮度はそのまま、出来上がりたてそのものを食える」


 そう言いながら、カルカトスはもう既に手をつけ始めていた。


「あ!わ、私も食うぞ!クレイア!あっちの肉を頼む!あとそこのチーズも」


「はいはーい、お水はいいの?」


「あ、頼む」


 私の腕の下ら辺から紫色の職種が伸びてご飯を配膳して私に食べさせて、水を飲ませる。


「すげぇな、お前そういうスキル持ってるやつみたいだ」


「クレイアがすごいんだ、私が何も言っていないのに、私のしたいことを全部してくれるんだ」


「……これが、一心同体、愛のなせる技よ」


 あながち冗談にもなっていないのが、一周回って面白い。

カルカトスも笑っている。


「……これが、竜王ザクラの輝石……か」


 赤い赤い、そして大きいこの奇跡。

かなり大きいなこれ……宴会用の16人ぐらいが使えるテーブルと同じぐらい大きいな。


「……それと、これも見つけたんだ」


 そう言って私に手渡してきたのは、小さな王冠。


「こ、これは、竜王冠では無いか!?」


 これを頭に乗せて、資格があるものは、竜王へと成る。

しかし、成り得ない者は、命を落とすと聞いた。


「……っと」


 私はなんの躊躇いもなく、頭にそれを乗せた。

私には何となく、できる気がしたのだ。

私の持っていたこの大剣、ドラゴンロードが、不思議とそうさせた気がした。


 私の頭に乗った王冠は、私の命を奪うことは無かった。

そして、私には実感がなかったが、カルカトスの顔が僅かに強ばった。


「……っおぉ、これが……竜王の風格か」


 カルカトスがそう言葉を漏らしていた。


「.…んぉ?なにか変わったか?私としては別段何も変わったように感じないのだが……」


 そう言うと、カルカトスが不思議そうな顔をして


「そんな訳ないぞ、お前今すごく強そうに感じるぞ」


 なんてあやふやな答えだと、怒りたいが……私自身自覚できていない身でそんなに偉そうなことは言えない。


「そ、そうか、まぁ弱くならなかったならそれで良かった」


 私が今持つのは、この英雄竜、ザクラの輝石と、世界樹の輝石。


「……なぁカルカトス」


「……ん?」


 飯を食う手を止めて、こちらに向く。


「……私は、英雄になれただろうか?」


 そういうと、私が何が変わったのかを聞いた時よりもずっと不思議そうな顔をして


「……元々じゃねぇか?

お前は今や、新たなギルドの開発を一手に担う次代の英雄だろうよ。

それに、お前は今、ピューさんが亡くなってから、最強の冒険者として評されてたんだぞ?……お前が英雄じゃないなら、誰が英雄なんだ?」


「……心強いの言葉だな、貴様ほどの英雄ファンにそう言われては、私も胸を張らずには居られない」


「っはは、よかったな。

俺は、あともう十層下に降りる。

そして、これで百層クリアになる……俺は、あともうちょっとで英雄になれるんだ……見てるんだろ!?百層の英雄!!俺たちは来たぞ!ここまで!」


 カルカトスが両手を上げて、叫ぶ。

私に酒を渡してくる。


「乾杯だ……英雄に、乾杯」


「……次代の英雄に乾杯だな」


 その次代の英雄というのは、他でもない、カルカトスのこと。

百層をきっと攻略できるだろうと、期待を込めて、乾杯する。


「「……乾杯!」」


 そうして、一気にジョッキを仰ぐ。


「……百層までは、誰と行くんだ?1人か?」


「……一層一層、色んな人と二人で行きたいな。

俺がここまで来れたのは間違いなく、みんなのおかげなんだから。

俺一人だけでここまで来ることはできなかったと思うから。

だからそうだな……九十一層はグエル、二層はナルヴァー、三層はエンブラーさん、四層はフロウ、五層はジャンパー達皆の意志を背負って、六層は……グリム、七層はサクラ、お前に頼む」


「わ、私は九十九層じゃないのか!?」


 ちょっとだけ、ちょっどだけショックだぞ!?


「悪い、九十九層には、来て欲しい人がいるんだ」


 何となく、ラジアンだと思った。

こいつは変なところでロマンチズムを愛している男だからな。


「はっ、なら九はわかった……八は?」


 私もラジアンもナルヴァーもいないだろうに。


「……こいつと行く」


 花を一輪、造花を持ってそう言った。


「……はっ、ジャンパー達と言い、貴様は随分と色んな意思を背負っているものなのだな」


 笑ってはいるが、そこに関しては羨ましいし、尊敬もしている。

私の認めた人間デクター、彼女は今でも私の憧れだ。


「デクターの墓前で言ってくれ、今でも私の憧れは貴様だと」


「……自分で言ってくれ」

やばい、もうそろそろ終わりそう。


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