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黒髪赤目の忌み子は英雄を目指しダンジョンの最奥を目指す  作者: 春アントール
英雄とは、誰よりも勇敢な者だと自分を鼓舞できる者だ
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不燃の未練

「っ!っふ!」


 右、右左のコンビネーション。

一度、ガードして食らう。


 何となく、感覚を掴む。

今度の攻撃は避ける、頭を軽く振って、そのまま腕を前に突き出し、殴る!


「いいパンチ、だな」


 さっきよりも、手応えが硬い?


「……俺にしては苦労したんだぜ?いつも決まった方を持たない、自由形……いうなら、竜王流で戦ってきた俺にとって、こんな綺麗な人間のスポーツをマスターするのは」


「確かに、型にハマっているな、綺麗な動きだとは思う」


 だが、それはあくまでも競技としての美しさ。

私の振るう拳は、そのベースは、ホシノカケラだ。


 生まれて直ぐに、花が咲いて直ぐに、近距離戦闘でカルカトスを追い詰めた、シンプルな才能と本能の拳撃。


「っお?っおお!見たことないなぁ!」


 それでもすぐに躱してくる。

そして放たれた攻撃を、カウンターでボディに当てる。


 しかし、感じた感触は、鎧を叩いたような感触。まるで響いていない?


「っはは!いいねぇ!なかなか虎視眈々と狙ってくるじゃねぇか」


「別に、貴様の動きが隙だらけすぎるだ」


「言ってくれるねぇ……なら、これはどうよ?」


 大振りの拳、そんなもの、先に出鼻を挫いて……


「〈爆進拳(オーバーブースト)〉ってか?」


 地面に倒れる私に、笑いながら奴は自分の拳にふっと息をかける。


「……早いな」


「っはは、まだ喋れるだけ、すげぇよぁ顎吹き飛ばしたつもりなんだけどなぁ!俺と同じ固有スキル持ち、だからこその耐久力と、諦めの悪さだな」


 感心したような、納得したような顔をして、手を差し伸べる。


 その手は借りずに、自分で立ちあがる


「貴様、勝ち誇るにはまだまだまだ、まだまだ早いぞ」


「まだまだ、か?」


 また、連打が来る。

さっきの竜の拳に比べれば、そこまで重くはないが、早い、増えて見える。


「行くぜ『爆!』『進!』」


 凄く短い、あれでも『詠唱』


 肘から推進力、足の裏から推進力、背中から推進力、拳には破壊力。


 これを避けろ、さっきよりもよっぽど早いが……避けろ!今度は立ち上がれないぞ!


 目を見開き、しっかりと見る。

あっという間に目の前にまでとんできた拳、死に際のせいか、スローモーに見える。

しかし私の体も、スローモーションだ。

けど、その一瞬の時間があれば、誰も私には……いや、あいつを除いて誰も追いつけやしない。


 私は瞬間的に、高速で動いた。

直線的な回避、横へ高速で飛ぶだけ。

神速、そのスキルの速さは、相変わらず異次元だ。


「避ける……かぁ!」


「あぁ、止まって見えたぞ、ザクラ」


「そりゃ、面白いな」


 爆拳とか言っていたそれは、もう普通の攻撃に乗るようになった。


「っ!オラァ!」


 紙一重で避けた私、そこに爆破が届く


「っぐ!」


 ダメージはそこまでじゃない、小規模な爆発ばかりだが、着実に……このままではジリ貧だな。


「っおぉ?」


 拳を深く沈み込み避ける。

やつに見えるように拳を握り、やつの顎を睨みつける。

『今からそこを、下から右の拳で殴り抜きます』そう言うように。


 当然、ガードを貼る。

しかし、下向きにガードすれば、一瞬私が見えなくなる。

そのガードに使っていた手を『掴む』


「っなぁっ!?」


 打撃から、こういった攻撃に変わって驚いた声を上げる。

そのまま、流れるように足払い、宙に浮いたところを、腕力にものを言わせて、地面にっ!


「叩きっ!つけるっ!!」


 激しい爆発音のようなものが辺りに響く。

地面が少し凹む勢いで叩きつけた。


「……貴様の技……借りたぞ、人間。これで、貸し借りは無しだな」


 やつに私の腕を真似られたのなら、私はこの攻撃を貴様から貰い受ける。


「……ったいなぁ、投げか……頭いてぇ」


 そう言って立ち上がり、頭を抑えたところを、さらに上がり続ける温度で、さらに上がり続ける速さの拳が追撃する。


「っぐはは!?」


 笑いながら、攻撃を受けたり、捌いたりしている。

爆破で目眩しをしながら後ろに飛んだザクラが、はるか遠くまで消えていって、今度は爆破の勢いでこっちに蹴りかかってくる。

早い、さっきまでの比じゃないほどに。


 でも私だって、今までの比じゃないほどに熱い!

殴って正面から叩き伏せようと振りかぶった瞬間、目の前がぐらついた。


「……っあ?」


 熱の上げすぎか?身体が……急に動かない……!


「っどぉしたぁ!?サクラ!これで終わるぞ!!」


 ギュンッと急加速、蹴りが来る。

体は動かない、避けられない。

クレイアじゃ守れない、聖魔法じゃ、癒す以前にこれを受けて意識が持つか?


「……はっ」


 私は私のそんな絶体絶命を、鼻で笑った

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