竜王謁見
「……さぁ、行こうか!」
扉の鍵を開け、下へ落ちる。
何も無い……平らな石造りの闘技場、とてつもなくシンプルだ、それと同時に、ここの守護者の、自分の実力への圧倒的な自身を感じとった。
そして、その広さは、スケールが人間のそれではなく、ドラゴン……やはりその巨大生物特有のサイズ感だった。
「……さぁ、こい、守護者」
サクラがそう呟いた。
その言葉に反応して、現れた竜。
その巨体を、一瞬にして現れたその巨体を、俺たちは二人揃って見上げた。
真っ赤な鱗、真っ赤な瞳……そして巨大な竜と、王であることを示す小さな王冠。
「……よぉ!!!お前ら!見てたぜ!ずぅっとよ!楽しみでしかたなかった!
よく!来たな!九十層へ!!俺は!『ザクラ グランド』!九十層の守護者だ!!」
その馬鹿みたいに元気な、このドラゴンの声にも驚いた……しかし、もっっと驚かされた。
「ざ、ザクラ?……おい、サクラ?」
そう、名前が異常に似ているのだ。
サクラの名前に、めちゃくちゃに似ている。
そして、同じ火竜で、恐らく同じくものすごく強い。
「……わ、私にもわからん……こんな竜王、私も知らん!私とこんなにも名前が似通っている者など、わからん!」
「……あぁ、そうか、俺の名前って歴史に残ってないからなぁ
竜王になって直ぐに、俺守護者になったんだ
だから、俺の家族とか、俺の国のヤツらには申し訳ないけど……でも俺は、遥先の未来にいるらしいお前達英雄に会いたくて仕方がなかった。
さぁ、俺と楽しもう!カルカトス!サクラ!!」
そう言って、竜が吠えた。
辺りの石畳が剥がれるほどの声量。
「……よ、よく分からねぇけど!来るぞ!!サクラ!」
「っあ、あぁ……あぁ」
分からない、サクラらしくない、非常に狼狽えている。
いやまぁ、俺には想像もできない話だ。
地面を蹴って、そして尻尾で地面を弾いて加速して飛んで来る。
この動きは、異常なまでにサクラに似ていた。
「……っ!『悪夢魔術』!!」
攻撃を避けて、上へ飛び上がった。
そして、俺の下を動き回るこの……ざ、ザクラ?にアデサヤを突き立てた。
「っな!?」
金属音を鳴らして、俺の剣が弾かれた。
「その剣!アデサヤかぁ!?懐かしいな!!」
「っ知ってるのか!?」
「いかにも!俺は氷魔王に使える四天王が一人だからな!」
「……ザクラ!グランド!貴様はこの!『サクラ グランド』が倒す!」
「っはは!だよな!?お前俺の遠い親戚か!?それとも俺の血族か!?まぁいい!お前には竜王の素質がある!過去最低年齢は……85歳?忘れたが……お前がそれを大きく塗り替えるんだ!」
サクラが、気合いを入れ直して、気を取り直して、竜にな……らない?人の姿のまま、竜の姿を採り入れたような……?
「来い!正面から!叩き潰してやる!」
「言われなくても!行くさ!!」
サクラが、駆ける。
ザクラが、笑う。
サクラが剣で斬りつける、そうすると、血が流れた。
「ってぇな!?」
アデサヤでも弾かれた、あの鱗を容易く切り裂いた。
固有スキル?……いや、使った気配はない……?
「やるじゃねぇか!?サクラ!」
ただ拳を振り下ろしただけの攻撃が、俺とはスケールが違いすぎて、雷が絶え間なく落ちているようだ。
しかしサクラは全て見切って、その振り下ろされる拳についにはカウンターを当てる。
その成果は大きい、右腕を奪ったのだ。
「っぐ!?……っまじかよ!」
右手を押し付けて、すぐに治る。
そしてそれを咎めるわけでもなく、余裕の顔でサクラはそれを見つめる。
「っはは!余裕か!?サクラ!」
「……そういう訳じゃない、ただ、なぜだかお前には負けそうにないんだ、ザクラ」




