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黒髪赤目の忌み子は英雄を目指しダンジョンの最奥を目指す  作者: 春アントール
英雄とは、誰よりも勇敢な者だと自分を鼓舞できる者だ
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災竜王

「……っし、体も休まった、次に行くぞ!カルカトス!」


 そう言って立ち上がり、次の階層へ行こうとする。

無論俺も行きたいと思っていたところだ、直ぐに立ち上がり、身体の中の剣を引き抜いて、腰にさす。


「あぁ!行こう」


 鍵を使い、扉を開く。

暗闇へ続く階段を下り、重々しい扉を開く。


 なかなか高い所だ……地上10メートルぐらいか?

下を見つめて、着地できるかどうかを考えるが……ま、考えるまでもないな


「行こうか、サクラ」


「あぁ、次の竜王と、戦おう」


 ピョン、と同じタイミングで飛び降りた。

その瞬間、俺もサクラも、冷や汗をかいた。

限界まで抑えに押えていたその『殺意』が一瞬の内に鋭く突き刺さり、瞬間、背後で爆音が響く。

階をつなぐ扉を崩落させた。


「っはぁ!?」


「っなんだ一体!?」


 俺もサクラも、その音の招待をつかもうと、上を向いた。

瞬間、盲点だった……下ばかり見ていたが、上へ、上へと空がまだまだ広がっていた。


「……そういう事ね、気づかなかったな」


「くだらん子供騙しに……引っかかった」


 この階層、凄く広いみたいだ。

しかし、俺たち2人して、違和感があった。


 殺意が突き刺さる、そして、その()に轟音。

その恐ろしい速度と、圧倒的なその存在感を放つ黒翼の竜。


「……か、カルカトス、コイツは、知ってるぞ」


 サクラが、そう俺に説明しようとしているが、俺だって、あいにく知っていた。


「悪いな……俺も知ってる、コイツの名前はだな……」


 コイツには、一度助けられた、だからその後少し調べて見る事もあって、少しだけ知っている。


「カルラド・ボルテ」

「カルラ・ド・ボルテ」


 サクラと俺はほとんど同時に言ったけど、サクラは止めるところが変だった。


「……貴様も知っていたのか?」


「以前に一度、調べてみたことがあってな、災厄と呼ばれる竜……そして」


 しかし、あの時に調べていた時に思い描いていたものとは随分と違う。

こいつの体は、非常に小さい。

人型の、細身の身体だった。

両手に持つレイピアが、美しい、遠目で見れば、騎士だ。

そして、直感的に、美しくて、女性だろうと思わされた。


「奴という名の災害、名をカルラ・ド・ボルテ」


 俺たちの声に答えるように、耳を劈くような咆哮。

黒い翼に、白い身体、青い目に、赤いツノ、金色の小さな王冠カラーリングがめちゃくちゃだ、はっきりいって異常なものを感じる。


 だいたい自然界にあるこんなに色とりどりなものっていうのは毒を持っているんだが……こいつの場合は、こいつ自体が毒と呼ばれるようなもの。


「コイツについて、俺が知っているのは宗教の本の話だけだ

なにか補足があれば教えて欲しい」


 サクラにそう言うと、俺と同じで決してボルテから目を離さないままに、口を開く。


「一万年前、原初の竜王にして、世界初めての災害。

やつは、二度目の世界樹を砕き、魔王を殺し、勇者を仕留め、王と名のつくものを全て蹂躙した。

奴こそが、王であると、奴以外に王は存在しえないと……してはいけないと言わんばかりに。

独裁の王、孤独の王、災害の王、厄災の王、津波、地震、大風、飢饉、蔑視、毒、死、それら全てを総称して、一万年前の人々は、奴の名をそれらに授けた。

生命の終着点(カルラ・ド・ボルテ)と。

カルラド・ボルテと呼ばれている理由は……憶測だが、魔王軍の『カルラ』やつから、彼の厄災の竜王の名を連想させぬため……か?」


 そんな話を終えて、俺は、恐ろしいものと対峙しているのだと、今になって気付かされた。

コイツは、サクラは、こんなにも仰々しく俺に語るのだ。

いや、仰々しくなんてないのかもしれない、意地っ張りのこいつでも、意地を張っても、この壮大さで語りあらわす他ないのかもしれない。


「……災竜王、名を、カルラ・ド・ボルテ」


 そう言った瞬間、俺もサクラも目を見開くべきことが起きた。

そう、目を見開くべきだった。

そうまでして、奴の動きを見ておくべきだった。


 こいつの速度は異次元のものだった。

比喩じゃなくなるかもしれない、本当に異次元から来たのかもしれない。

そう思わされるほどに、コイツは冗談じゃない速度で俺たちの横を過ぎ去った。


「あなた達では、追いつけやしませんよ」


 俺たちの横を過ぎ去って、俺たちの後ろで、そう喋り出す。


「……!………!?」


 サクラが口を開き、恐らく何か悪態を着いたのだろう。

しかし、その声は、決して声になることは無かった。


「おかしいですね、喋ろうと?」


 そう言われて、初めて気付かされた。

俺たちは、ボロボロに突き刺されていた。

ありとあらゆる内蔵、太もも、ふくらはぎ、前腕も上腕も、口も喉も、気が着いた瞬間に、血が吹き出した。


「……あなた方が、私に勝てることは、ありません」


 嘲るように……という訳では無い、ただただ、当然のことを、当然伝えてるに過ぎなかった。


「……『活路は前に!』『世界の夜明けを迎えるものは!』『その代償に勇気を求めた!』『前に進むそれを!』《勇敢なる者(ブレイバー)》」


「『俺は摘み取る者』『終末論を綴る者』『悪夢となり飲み込む』《限界突破(リミットブレイク)》」


 だからこそ、俺たちは腹が立った。


「……ほぅ」


 サクラはいつも、目の前の敵に勝つために、相手よりも『一歩先へ』そこへ進む勇気を振り絞る。


 俺はいつも、目の前の敵に勝てない時に、相手の持つ『限界以上』そこへ進むチカラを振り絞る。


 奇しくも、俺たち2人は似ていた、しかしそれ以上に似通っているところもあった。


「「っふざけるなよ!!負けてたまるかぁ!!」」


 恐ろしいほどの、負けず嫌いだった。

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