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黒髪赤目の忌み子は英雄を目指しダンジョンの最奥を目指す  作者: 春アントール
英雄とは、誰よりも勇敢な者だと自分を鼓舞できる者だ
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暗黒竜王

「……っお、あいた!」


 下開きの扉を開き、そこに流れていく水に吸い込まれるように、俺たちは下階層へ流れていく。


 その先の、眼科に拡がったものは、辺り一面の闇。


 一体どこが地面で、どこが壁で、どこがここなのか分からない。

そもそも地面はあるのか?壁はあるのか?


「なんだこれ……!」


 滑空するように、羽を広げサクラをキャッチする。

風を掴むのは、俺の方が得意らしい。


「サクラ、なんか分かるか?」


 そう、投げやりに問いかけると、少し唸ったあと


「……2500年前、暗闇を喰う竜がいた」


 そう言った瞬間、ドーンと、何かが飛沫を上げた。


「っサクラ!何の音だ!?」


「闇を喰らうその竜は、内包したその闇を、時折空へ打ち上げる」


「っおい!!」


 ヒューーンと高い音が響く。

俺の声を無視するサクラはまだ喋る。


「空に打ち上がった闇が、光さえ喰らい尽くし、世界に永遠の夜が訪れた」


 ドンッと、音が響く、ふと、羽や鼻先に感じる……雨粒?


「人々はそれを、後に暗黒時代と呼んだ、白も黒く、雨さえ黒く染る世界を」


 そう言い終えた時、まるでそれを待っていたと言わんばかりに黒い小さな竜が姿を表した。

俺よりも小さいその竜は、鱗は黒く、目も黒く、爪も、口の中さえも真っ黒で、少し目を離せば辺りの闇に溶けてしまいそうな。


 けど、絶対に目を離せない理由もある。

頭に乗った小さな小さな王冠は、それだけはこの暗闇の中で唯一金色だった。


 その金を見つめていると、フッと消えた。

驚いて辺りを見ると、さっきの小さな竜がとんでもなく巨大に、この階層の、暗闇全てがやつの全身……いや、掌の上に過ぎないのかもしれない。


 その王冠も、王の冠の名に恥じない、巨大で威厳あるものになっている。


「サクラ……こ、こいつは?」


「……彼は『暗黒竜王』2500年前の暗黒時代を創り出した張本竜で、その実力は……魔王にも届きえたと聞く」


「……竜王皆良い奴ばかりじゃないのかよ!?」


「言っておくがジェルクリアも決していい竜ではなかったぞ?

海を弄び、酔った拍子に島を消し飛ばすような竜だ」


 おっかな


「マジかよ、やっぱりスケール違いすぎるな」


 なんて話をしていると、掌の上にどうやら本当にいたようで、ギュッと握りしめられる。


「……ここは私の出番というわけか『聖魔法』」


 小さな光が、ギュンと大きくなる。

その小さな太陽を暗闇が優先して飲み込む。

その飲み込んだ闇を焼き払いながら、まだまだ光ら大きくなっていく。


「さっすが、ギルドマスターだな」


 その言葉に、嬉しそうにニヤリと笑うが、すぐに青ざめる。


「か、カルカトス、貴様雨を浴びたのか?」


 光を浴び、初めて俺の顔をまともに見たからか、当然のことを言う。


「ん?あぁ、滑空してる時にな、お前の上にいたから、雨降ってるの知らなかったか?」


「……よく見ろ、伝承では雨と語られたが……実の所、奴に天候を操る程度、造作もないことだぞ!」


「……これ、雨じゃなくて魔法?」


「っそういう事だ!」


 そう言ってサクラが焦りだした瞬間、重々しい、厳格な声が聞こえた。


「『反逆者達(リベリオン)』」


 そう短く告げられた……恐らく闇魔法の一種。

次の瞬間には、身体が勝手に動き出した。


「っ!?カルカトス!さっきの魔法か!?」


「っあぁ!どうやらそうらしい!次右から剣を一振だ!」


 ?これは……俺の口が勝手に動いている!?


「ああっ!………っぁ?……なんだと?」


 俺の口は勝手に動いて、でも言ったことをまともに従ってもくれない。

右から振るその攻撃をフェイントとして、固有スキルをつかっていないのに、凄まじい速さで切り方を変え、突き刺した。


「っ!すまん!恐らく操られた!俺は直ぐに傷を治せる!雨ごと俺を焼いてくれ!!」


 っちょ!?ちょちょちょっとまてぇ!?

死ぬ死ぬ!お前のブレス食らったら普通に俺も死ぬぞ!?


「っ?そうか!わかった!〈大竜聖火(ドラゴンズフレイ)〉っ!」


 大きく息を吸い、次に口を開いた瞬間、炎が俺の目の前を包み込む。

肌を焼き、瞳や内臓が沸騰していく。

炎の中に眠る聖魔法が、倫理を超えた合成獣の身体を蝕む。

この聖魔法はまるで、フレイのように陰湿に燃える。


「……っぐがぁ!!!?」


 いやしかし!身体はそれでも動いたぞ!?

しかし喉が焼け爛れて、ろくに声もでやしない。


 いつかにディンに借りた本の中にあった。

『最も苦しい死因は焼死である。

故に大罪人に火をつけ、その業火に己が業を焼き滅ぼすのだ』とそう言われた理由がよぉぉーーーーぉく分かる。


 そして、俺は無詠唱で固有スキルを使えるが、無言ではまだできない。

そのスキルの名を叫ばなくては、俺は今でも使えない。

焼け爛れた喉で、何を叫んでも、世界はそれを魔法と呼んでくれない、スキルだと認知してくれない。


「……か、カルカトスー?あんなに言ってたが……消えてないぞ!?」


 よく気が付きた!そういう事で!助けて!


「ど、どうやって助けようか!?」


 おいおい嘘だろ?


 なんて軽く絶望して、意識が途切れそうになった瞬間、サクラが俺の手を掴み、どこかへ投げつける。

その投げつけた先は、今まさにサクラを握り殺そうとしていた暗黒竜王の手の中だった。

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