水竜王
「サクラ!何か情報とかないのか!?」
「無い!今から7500年前の事を詳しく知ってるものか!?
ただ!ひとつ言える!彼女の戦った後には、島も残らな……い……」
言いながら、気がついたらしい、そして俺もその言葉で気がついた。
「……まさか」
島がないのは、そういうことか?
そして……コイツは守護者じゃない……ってことはまさか
「……全盛期、そのままってことか?」
「……私も今その結論に辿り着いた……」
その瞬間、目の前がグラッと歪んだ。
いや違う、これは……海がひっくり返った?
「……っぼ!?」
サクラが驚き、水を飲む。
俺も驚いたが、エラ呼吸出来て良かったと心底思った。
上だと思っている方は、どうやら下のようで……あいつが海を弄んで、俺たちはそれに巻き込まれているのか?
水槽の中の虫を、水飛沫を立てて遊ぶかのように、彼女の少しの動きが、俺たちを大きく揺さぶる。
「っスケールが……違いすぎるだろ!!」
『デカい』それだけでここまで強いのか!?
サクラは両腕を竜に戻し、それで水をかき分けて、すごい勢いで水面から飛び出した。
そのサクラを追撃しようと、さっきと同じく水面から飛び出す準備をしたジェルクリア、確かな隙、俺なんか眼中に無いってか!?
「『悪夢魔術』!」
身体を大きく広げて、例えるなら船の帆のように広げて、ジェルクリアの前に躍り出る。
視界を一気に奪うことで、どこまで効果があるかは分からない……
「……面白いですね、貴方も空の旅に行きますか?」
そう言われ、広げた身体の腹部に当たる部分に衝撃が走る。
狙い所がいい!そこは直ぐに破って切り離せない!
そして、水面から飛び出した。
身体を元に戻しても、その上に押し上げられる圧で雲の上に、あっという間に到達した。
しかし、それでもまだ上へ上へと飛び続ける。
「寒いところですね」
皮膚がパキッと音を立てた。
伸びて薄くなった身体から『柔軟性』を奪わた。
「っマズイっ!?」
首を振るうその動作で身体が割れる。
「元のスペックが違いすぎるだろ、本当によォ!」
そんな高いところから、今度は水面に叩きつけようとしてくる。
「木端微塵になりなさい!」
「っマジでなりそう!?」
相変わらず、今度は下降する圧に押されて身動きが取れない。
しかも今回はさっきみたいに優しく降りてはくれなさそうだ。
激しい破裂した音、それは水面か、それとも俺の体の割れた音か?
それすら区別がつかず、意識ははっきりとしない、何よりも音がまるで聞こえない、鼓膜がやられた。
「……《限界突破》」
そうつぶやく、俺に唯一残された、藁のようなもの。
「……まだ動きますか!」
流石に驚いた様子だが、今度はサクラがいる。
「っはぁあ!!」
神速を使って、一気に距離を詰め、勢いそのままにジェルクリアの横顔を殴り飛ばす。
流石に揺らいだ様子だが、水中では威力半減。
「すまんカルカトス!さっきの間攻撃を試みたが、このザマだ!」
水面に顔を出すサクラが見せた右腕は肘ら辺まで消えている。
「っ!?なんだそれ!?」
「あの硬い鱗と、轟速で動く身体におろされてな、ボロボロだ」
そう言いながらも、聖魔法ですぐに元通りになる。
「あいつ、どうやって倒そうか?サクラ」
「彼女は最強だが、たった独りだ。
こっちは二人……いや、三人だ」
そう言ってニヤリと笑う。
「何する気だ!?」
「上げてくぞ!カルカスト!」
主語の無い言葉だが、温度をあげようとしているのがすぐにわかった。
水中にブレスを吐き続ける。
水中が明るくなる、が、火は直ぐに消される。
しかし、どんどんと光は強くなっていく。
赤、青、白、そして桜色になった。
「……行こう!」
そういうサクラの横に俺は立てない、熱すぎる。
そして、水蒸気が立ち上る、それは口元の炎だけでなく、サクラの体からも。
「サクラ!これ結晶すぐに溶けちゃう!」
「援護射撃!!」
「俺は!?」
「守れ!私を!」
そう言って、潜るサクラについて行く。
俺はミランの剣で、こいつを守る。
「っ熱いですね!こんなの初めですよ!」
王座を崩すのは、次の王たり得るものか、はたまた時代を荒らす革命家か




