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黒髪赤目の忌み子は英雄を目指しダンジョンの最奥を目指す  作者: 春アントール
英雄とは、誰よりも勇敢な者だと自分を鼓舞できる者だ
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更に深く

「……よかった、前に入れて置いた食料があって」


 後戻り出来ない都合上、下手をすれば餓死するところだった。

倒した竜の中でも、拾えるやつだけ魔石を拾って行った、第九階魔石、上等すぎるものだ。


「……私もだ、以前急いでクレイアに会いに行った時の物が少量だがある」


 そう言って2人して肉をかじる。

現在八十五層、もう薄暗いとかじゃなくてほんの少しの明かりだって差し込まない。

しかし俺もサクラも夜目がきくんだ、よく見える。


「知ってるかサクラ?鳥目って言うが鳥は目がいいんだ」


「む?そうなのか?」


「あぁ、とある鳥は星と光があれば夜中でも道が見えるらしいぞ」


「ほぉ……面白いな」


 そんな話をしながら食べ続ける。


「……今何日たった?」


「……私もよくわからんが……2日3日程度だろう」


「……今八十五層、あと五層で守護者の所だな」


「怖気付いたか?」


 そう言ってニヤリと笑う。


「まさか」


 俺もニヤリと笑う。


「まぁ一回休もう、俺が見張ってるから、先に寝てろ」


「あぁ、そうさせてもらう」


 その後俺も眠ったあと、そこを発つ。


「さぁ、次は……何が出るかな?」


 八十五層、少し進むと、なかなか湿気があってジメジメしているな。

足元から水が出ているらしく……海底洞窟みたいな感じ?


「これは……水か?」


「?そりゃ水だろ」


「……あぁ、サクラ私のところの水がトラウマなんだね。

あれは特殊なやつだよ、私のとここのは違うよ」


「そ、そうか……」


 心底ほっとした様子で、腰の辺りまで来た水を掻き分けながら歩く。

アイツらしくない、ホッとした顔だった。


 少し進むと、足の間を何かが通り抜けた。


「……サクラ」


「……あぁ、いるな、何かが」


 サクラも検討がつかないらしいが……これは、結構体が長いなコイツ。


「……っ、噛みつかれた」


 サクラがなんでもないようにそう言うが、本当になんでもないんだろうな、お前のことだし。


「そうか、どこだ?」


「左ふくらはぎ、後ろからガブッと」


 そう言われたところの辺りに手を突っ込み、掴む。


「引き剥がすぞ」


「あぁ、頼む」


 水の中から飛び出したのは、まぁまぁ太い魚?

ギザギザの牙を持っていて、身体をうねらせて俺の手から逃れようとするが、体がぬめぬめしてないからがっしり掴める。


「これは……魚竜種か」


「ん?それ竜?魚?」


「どっちもと言ったところか?

水生生物に憧れたドラゴンみたいなやつだ、この牙と、あとはこの鱗だな、魚と違って滑りにくいからな」


 なるほど確かに滑りずらい。

サクラに頭を握りつぶされたこの魚も、魔石になった。


「お前本当に博識なんだな」


「私とて、無知じゃない。

特に、竜に関してはあの里唯一の生き残りだ、詳しいに決まっている」


「他の里とかもあるのかな?」


 そんなことを言いながら歩いていく。


「いや、無いな、個体数が少ないから全く居ない。

思い返してみろ、ドラゴンの冒険者をお前はどれだけ知っている?」


 そう言われて思い返してみれば、片手で数える程度しか思い浮かばない、サクラを含めてもだ。


「……たしかにな……なら、お前が最後の生き残りって訳か?」


「恐らく、正統派飛竜じゃ、私が最後になるだろう」


「?正統派じゃなかったら?」


 そう質問すると、呆れたような顔で振り返り


「あのな……ナルヴァー達邪竜も竜だぞ?」


 言われてそう言えばと思い出した。


「そういえばそうか……そうか、竜は希少なんだな」


「あぁ、しかしまぁ、こんなに竜がいるのは嬉しいものだ」


「……そうか。

俺を作る時に、ありとあらゆる生物を利用した訳だが……竜だけはいないんだ、俺の体の中に」


「……そうだったのか、その割には竜になって戦ってたじゃないか?」


「あれは形を真似してるだけ、お前の腕を真似したのは、お前と一時的に繋がった時に、奪った物だ」


「あぁ、あの時のか……私もあれ以来、精霊が見えるようになったし、フレイの力を借りることが出来たし、万々歳だ」


「ほんっと……お前のその貪欲な吸収力はなんなんだろうな」


「はっ、貴様にだけは言われたくないな……っはぁ!」


 手を突っ込むと、直ぐにさっきの魚を掴み、直ぐに握りつぶす。


「流石だ」


「……さっさと行くぞ」


「あ、おい待て、急いで行ったら足を……っべ!?」


「カルカトスゥー!」


 半ば……いや、あいつ完全に大笑いしながら俺に手を伸ばしてくる。


「……っはははっ!注意した貴様が足を踏みはずすことがあるか!?」


 笑いながら、差し伸べた右とは逆の左手で涙を拭きながら、引きずり出す。

引っかかった足を固定する岩ごと、引きずりあげるこいつの腕力に助けられた。


「っはは!貴様のその反面教師的な教えのおかげで学んだぞ!落ち着いていこうな!」


 こいつの頭に響く大声が洞窟内に反響する。


「……びっちょびちょだ……っクソがぁ!」


「っおぁ!?馬鹿っもぼ!?」


「っはは!馬鹿もぼってなんだよ!?」


 反撃して突き飛ばして転す。


「おらよ、手を貸してやるよ『バカドラ』」


「……っくはは!言ってくれるな!『人間』!」

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