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黒髪赤目の忌み子は英雄を目指しダンジョンの最奥を目指す  作者: 春アントール
セカイノカタチ
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相棒【サクラ】

「……だ、まだ少ししか見てないが、一目見て、お前を連れていこうと思ったんだが……どうだ」


 カルカトス、こいつが私の仕事場の自室にやってきて、笑いながらそう言った。


 その『まぁどうせ』と言いたげなニヤッとした顔に腹が立つが、しかしこいつの思惑通りの言葉しか返せない。


「あぁ、そっか、次は九十層だから……あの人かぁ」


 クレイアがニュっと生えてきてそう話す。


「久しぶりクレイア、守護者的には、どう?やっぱり強い?」


「……うん、そりゃあもうね。

まぁまず間違いなく一番強いよ。

カルカトスもわかったでしょ?潜るほど、どんどんと強くなる」


「……あぁ、迷宮について、分からないことだらけだったけど……嘘と噂がわかるようになった」


 そういうヤツの目は、片目だけの癖に……いい目だ、ギルドの中だと……ラヴハートの次にいい目をしている。

覚悟の決まった……何よりも強いヤツの目だ。


「だね、だから、まずリリーちゃんよりも強いよ……って言いたいんだけど、正直あの子の自由さには驚かされたよ。

あれは、迷宮を最大限上手く扱っているね。

アライトは正当、クロンは共闘、マインは童謡、ミランは純情、フレイは冗談、サーラーズは冒涜、私は結晶、あの子は間違いなく自由だね。

そして、九十層の守護者を一言で語るなら……『勇敢』かな」


「……勇敢か……私とカルカトスは?」


「そりゃぁもう!サクラは可憐!カルカトスは……なんだろう……悪夢かな、やっぱり」


「……まぁ、そう自負してる」


 悪くは無いらしいな、嬉しそうじゃないか。


「しかしだ、私ももはや今、己の意思で自由に動いてもいい立場じゃなくなってしまったんだ、ありがたいことにな」


「……だなぁ、ってなると、最後の最後だけお前に手伝ってもらおうかな」


「あぁ、私も是非とも会ってみたい、その英雄が誰なのか、貴様でさえも想像がつかないのなら無理だ……無論私にも全く想像がつかない。

だからこそ、あいたいんだ、そこで戦って、初めて知り合いたい」


「……あぁ、分かった、それじゃ、こっちの方で手に入れた情報は適時報告するよ」


 そう言って立ち上がった。


「……そうだ、カルカトスよ」


「……ん?」


 私が呼びかけると、足を止めてこちらを向く。


「私に足りないものって、なんだ?」


 カルカトスに足りていないものは、今の私には見つけられない。

だが、私足りないものも、私自身で見つけられない。


「……お前に足りないものは……才能だな」


 真面目な顔でそう言った。


「才能?」


「そうだ、例えば人間には容器があるとしよう、その容器ぴったりに才能が注ぎ込まれているのが俺だ、完璧な、天才だ」


 その自画自賛に腹はたつが、事実だ。


「ラジアンも同じ感じ。

でもそこにアズナスを足すと溢れる。

するとそれを、みんなに認めて欲しいって言う、さらに大きな器でそのこぼれ落ちたものも有効活用している」


 なるほど……?


「でお前の容器はこーーーーんなかんじだ!」


 一ページまふまるのおおきさの器を作る。


「言っておくが褒めているわけじゃない、お前の器は大きい。

その器に、確かに才能は注ぎ込まれているんだが……全くもって溢れる気配はない」


「……だが、私には聖魔法も、クレイアもいる」


「あらヤダ嬉しい」


「……だな、お前にはそれがある、守護者に好かれる、その不思議な体質。

そして、守護者の力は、圧倒的だ」


 強調するように、そういった。


「……そうすると、一気に水かさは上がるんだ、すると………しかしそれでもお前の器は満たされない。

この満たされない部分を、お前は俺に聞いているんだ」


「な、なるほど、何となくわかったぞ!」


 私は容器……ラジアンみたいに、誰かの容器を借りることもあるし、元々ピッチリ並々までも。

そして私のように満たされない才能もあるのか……?


「サクラ、何の話をしてるんですか?」


 長話でスケジュールがズレるのを嫌ったグエルがやってくる。

話の内容を噛み砕いて伝えると


「なら、サクラも行ってきたらいいんじゃないですか?」


「……へ?いいのか?」


「はい全く。

これから先に大きなスケジュールも待っていませんし、そもそもギルドの幹部はみな優秀な人材ばかりです、簡単に誰か一人が抜けたアナ程度なら埋められますよ、たとえそれがギルドマスターでも行けますよ」


「……なんかそう言われると頼りにされてないみたいでやだな」


「そういう訳じゃないんですよ……ただ、もっとみんなを親類して、あなたの自由にやってください。

あなたは私たちと触れ合って、人を思う大切てさを知りました。

素晴らしいことです、本当にいいことです、友として尊敬します。

でもあなたは同時に、あなたの持ち味である自由奔放さが縛られてしまっては、友として私はとても悲しいです。

好きにしてください、私たちはそれに合わせます。

時折気にかけるだけでいいんです。

みんなで助け合うって言うのはそういうことですから」


 なるほど、私の良さは自由奔放さか。

そして、人を思いやるばかりで、私のしたいことが出来ていない……それに、私が居なくても回ることを過小評価されているようで嫌だと言ったが、私の方こそ、ギルドの幹部のみんなの手腕を過小評価してしまっていたのか。


「……ありがとうグエル、感謝する……カルカトス、私もついて行こう、同伴しよう。

八十一層からその先へ、百層の十層手前、九十層までの道のりを、そして、守護者との戦いを共に」


「……お前と一緒に戦うのは娯楽島の時以来だな……久しぶりにお前に背中を託すとせるよ」


 そう言って部屋を去っていく。


「あぁそうだな……よろしく頼むぞ『相棒』」

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