メイド・イン・メイド【ラヴハート】
「おはようございます、皆様、本日も講師を務めます、初めての方もいらっしゃるでしょう、まずは名前を……私の名前は『シャルロ ラヴハート』皆様の先生です。
本日は、紙に書いてある通りのことを行います、興味のある時間に出てきていただいて構いません。
ではまずは、9時30分より行われますコーディネート教室です。
まずは、今流行りの着こなしや、髪色、目の色に合った服の選び方等を………」
そんな調子で、11時30分までの講義を終える。
「はい、お疲れ様でした皆様、とっても可憐に」
そう言って一人の女性を
「大変美しく」
そう言ってまた別の女性を
「蕾から花へ咲き誇ったかのように見違えていらっしゃいますよ」
そう言って全体を見る。
「どうぞ皆様、美しいんですから、自信をお持ちになって……気になる殿方のハートを射抜いてくださいね」
そう言って話をまとめ、その後別の教室へ行く。
次は、お料理教室、食事の作法を教えるという名目で、私のお昼ご飯も兼ねています。
「こんにちは、皆様、本日も講師を務めます………
それでは、12時になりましたので、料理教室の方を始めさせていただきます。
本日はお日柄もよく、春の陽光が大変暖かい、良い日和ですね。
というわけで、本日はピクニックへ向かうと致しましょう。
皆さんの机の上に置いてありますバスケットの中をご覧下さい………はい、材料で察された方もいらっしゃいますでしょう、サンドイッチです」
パンと卵、レタスにハム。
シンプルだが、私はこれがなかなか美味しくて好きなのだ。
「その他にも、前の方にいくつか具材を用意しています。
皆さんお好きなサンドイッチを作ってください。
その後はピクニックに、楽しく談笑をしながら、隣のあの人の作ったサンドイッチを交換こしながら食べるのも、また良いでしょう」
今日の目的は、料理を作ることの楽しさや、意外と簡単かも?と思わせること。
そして、料理教室で友達を作ってもらい、そこから輪を広げていくことで料理知識などを深めてもらうこと、もちろん人間関係も深くなるし、いい事づくめだ。
ちなみに私が作ったのは、レタスとハム、あとチーズを挟んだ非常にシンプルなサンドイッチ。
しかし、これでもメイドの作ったもの……言わばメイド・イン・メイド!……失礼しました、スベりましたね。
皆様からは何故こうも美味しいのかと不思議がられていましたが、それに関しては
「メイドですので……愛が籠っています、ラヴハートだけに」
そうふざけてみるも、やはりスベりました……真顔で言うのはやめておきましょう、今度からはおふざけ的な雰囲気で……いや、メイドにあるまじきことですね……
15時からは、お菓子作りを教えていきます。
私のティータイムも兼ねています。
以前クッキーを作った際、ギルドマスター様の所へ大量の差し入れがあったと聞き、私もその中の一人ですので、特に何もいうことはありません。
サクラ様は大変な努力家ですしね……ま、私もメチャクチャにされたから、色眼鏡で見ているのも否定しませんが。
「本日作るのはカップケーキ………
お好みでチョコや、紅茶のカップケーキなども、私は好きです…………
焼き時間は……………
そのコツは………」
「次は、カップケーキに合うもの、お茶を入れましょう
色々茶葉は用意しました、匂いの特徴や、効能などは前の紙の名前の下に書いてあるとおりです。
入れ方は…………
香りを際立たせるため…………
飲み方は以前教えましたね……はい、よくできています、皆さん」
一人一人確認する余裕はありませんが、私が前で手本として……という建前でティータイムを楽しんでいるのを手本に上手くやってもらっています。
もっとも、皆さんの目には
「いつも余裕があって、大人の女性って感じがして素敵です!」
とか
「音も立てずに飲めるの、凄くおしとやか?で羨ましい!」
なんて嬉しい言葉を頂いています。
夕方、17時頃に全てを終えて、各自解散。
最後まで残って質問に答えた後、戸締りをしたり、清掃をしたあと、お借りした部屋の鍵を持って返しに行き、お礼にお菓子作りの際に作ったお菓子をおすそ分け……
そうして色々終えた頃には、日は沈み、時計塔は19時を指していました。
私の仕事は大変そうだ、もっと休むべきだと言うお言葉をサクラ様から頂きますが、私の日常生活を皆さんにみせているだけですし、メイドの時はこれ以上に大変でした。
何よりも、メイドになる前の、明日を生きる云々の前に、今日を生き残ることが大変だった頃に比べれば、なんと優雅な一日でしょうか?
家に帰り、夕飯を作り、たしなむ程度のワインと実によく合うチーズを取り出して、テレビを見ながら飲む。
「……ふむふむ、漫才とはこんな感じですか……一発ギャグ………っこれは!リアクション芸……!?新しい発見です、取り入れて活かさなくては……!」
後日ギルドマスターにそのことについて相談した際
「やめておけ、そういうのは私の仕事だ」
とおっしゃっていました、お仕事を頂くのならともかく、奪うのは気が引けます。
しかし、ギルドマスターとは大変ですね……激辛料理に、熱湯風呂……熱い系でサクラ様が慌てふためくのは想像できませんが……?




