結婚式【アーガン】
「……では、誓いのキスを」
お互い、病める時も健やかなる時も愛し合うことを誓い、皆が俺たちに注目する中で、キスをする。
2人して、黒い髪をしているのに、着てる服は2人ともおかしいぐらいに真っ白だ。
でも、すっっごく綺麗だ。
唇を付ける。
それだけなのに、凄く胸が熱い、思い返せば、キスなんて滅多にしなかったな。
そして、離れる。
終わってみれば少し恋しい、けどそういうものなのかもしれない。
辺りから上がる歓声、祝福されていると、そう実感した。
周りを見回す。
ファクトとテイル、サクラにグエル、カルカトスもいるし、ラジアンも……本当に祝福されている。
「ブーケ、投げるよ!!」
グンっと勢いをつけて、空にブーケを投げる。
女性陣の目が光ったのを、俺は見逃さない。
……ま、サクラは勝者の笑みでそれらを眺めていたが。
「……っとったー!とったよ!」
そう言って喜ぶのは、テイル。
悔しそうな顔をしているほかの人たち……しかし、俺とアモラスは、ニヤニヤが止まらない。
とったよ!そう言って向いていたのは、投げたアモラスでも、俺でもない……ファクトの方だった。
「っなんで俺の方向くっ!?」
そう言われて、焦ってアモラスの方に向き直り
「と、とと、とったよ!」
そういい直す。
無駄だとわかっているだろうに、そうするのだ。
あの二人、仲が悪いが……嫌いあっている訳じゃない、むしろ仲が良く見えるが……まぁ、仲良くないと本人たちが言うのだからそういうことにしておこう。
顔を真っ赤にしているのは、春から夏に差し掛かりそうな今日の天気とは関係ないんだろう、涼しいんだし。
「いいなぁ!いいなー!カルー!羨ましい!」
ラジアンにそう言われるカルカトス君は困った様な顔をして
「……っおぉ!そうか!」
そう言ってそっぽを向いていた。
左目の眼帯、その下には、虹色の瞳があったのを、以前に見せてもらった。
アモラスの左手薬指に通す指輪は、至ってシンプルなもの。
ダイヤのはめ込まれた、指輪。
俺たちはこの後冒険者は引退して、まだまだ若いが、ゆっくり過ごしていこうと思っている。
俺が持っている輝石を売れば、散財しても生きていけるかもしれない。
父さんと母さんも俺たちの晴れ舞台に来てくれた。
二人ともまだ付き合っていなかったのかと驚かれたのがつい最近のことのように思える。
俺たちがしているボランティア活動は、俺たち2人の結婚を境に、人と魔族の結婚が多く行われるようになっていった。
式場の手配も、先輩である俺たちがちょくちょく相談役に抜擢されることもあった。
「……いやぁ……楽しかったね、結婚式」
そう言って、自然に繋げるようになったアモラスの手を繋ぐ。
「だね、ケーキ、凄く美味しかったし、明日っから新婚旅行!」
「サーラー跡地、あとはその近くにある水上都市の観光……楽しみだな」
水上都市は昔に世界均衡令と呼ばれる法を犯し、アンノウンにやってきた者達が秘密裏に栄えさせた都市。
黒魔女1人に壊滅させられた過去を持つが、その外観には独特の美しさがあるらしい。
ラヴハートに言われたそれを目で確かめに行くのだ……
しかしギリギリまで娯楽島と迷ったものだ。
後の話になるが、新婚旅行は大成功に終わった。
水上都市、ああも幻想的なものなのか。
しかも、永久不変の凍結山地サーラー跡地、寒かった。
『アモラスも、身重になって一人の体じゃなくなりました。
もうあと数ヶ月後には出産予定日が迫っています。
男の子ならカルト、女の子ならサクラの名前にしようとしています。
ギルドマスター、また是非我が家にいらしてください、アモラスも喜びます』
そう書き終えて、手紙を飛ばす。
「アーガン!今お腹蹴ったわ!」
「ホントか!?元気だな……お前はどんな子になるんだろうな……?」
今から想像するにはあまりにも気の早い問いかけ。
帰ってきたのは、トントンといった様子の生きている音だった。
別に最終回ってわけじゃありません。
すこーし先の世界の話です。
ただ、こういったお話の終え方にすると、サクラが生きていないと手紙が送れませんからね……る、ルーレット……?
ま、まぁ!?死ぬ可能性はほとんどありませんし!?(特大フラグ)




