次代の天才【クロル】
「……ラスト一周!ダッシュ!」
「……い!……はいっ!!」
この時間になってもまだ鍛錬をつけて欲しいと言われては……断るに断れない。
俺を打ち負かしたグレイズ、名前は『グレイズ アストロエ』正面から剣での戦闘で負けた……なかなか悔しかったが、それでももっと強くなりたいと言うのだ、それに力を貸さない訳には行かない。
「……っはぁ……つ、次は!何をしたらいいですか!?」
「……次は撃ち合いだ、構えっ!」
「っ!はいっ!」
いい顔で笑う、かいた汗が輝いて見える、青春の輝きだ。
「行くぞ!」
ステップを多めに踏んで、翻弄するように戦う。
あの時は真っ向からぶつかったが、小細工を生かした戦闘と、長距離ダッシュの後の疲労の溜まった足では苦戦すること間違いないだろう。
そんな俺に、喰らい付いてきて、戦う。
「魔法は使うな、まずは剣だ、俺はそれしか知らないしな」
そう言って教え始めてはや半年、本当に成長した。
「っはあっ!」
「惜しいな、踏み込みが……浅いっ!」
勢いをつけて剣を振る。
上手く剣で受けて、少しキツそうな顔をする。
しかし直ぐに笑う……ピンチの時ほどよく笑う……カルカトスくんを思い出した。
このこの髪は白っぽい青で、瞳は青い、世にも珍しい氷魔法を使えるこの少女、特別さも立派なブランドになるだろうし、冒険者に向いている……きっと英雄と呼ばれるに違いない。
もう少し打ち合いをしたあと、それをやめて休憩を挟む。
「……っはいっ!」
水を飲みに走っていく。
彼女の友達が、そんな彼女の元にやってきて、楽しそうに談笑したり、教科書で扇いだりしている。
楽しそうだ……
「あ、クロルさん、見つけた」
「お、グエルか、どうした?」
俺のパーティーの後輩、グエルが……あぁ、成績の話か
「あの子が噂のグレイズですか……やっぱりクロルさん的にもあの子がいちばんですか?」
大方バンクに話を聞いたんだろう、確かに彼女は素晴らしい……が、個人的にはもっとすごいと思っている子もいる。
「確かに彼女は素晴らしいが、俺としては彼の方を推しているな」
「彼?男性ですか?」
「あぁ、その子は『オズワルド ノール』オズワルド君だ」
「オズワルド……その子が、あの子より?」
「あぁ、彼はなんて言うかなぁ……まさに『コレ』といった特徴は見た目にないんだ。
どこにでも居そうな顔だし、どこにでも居そうな雰囲気なんだが……」
「?それならやはりグレイズの方が?」
「だけども、彼は『天才』だよ、何をやっても上手く身につけて、戦う。
グレイズに負けても、もう一度戦えば勝てる。
そしてまたグレイズが俺に師事を受けに来て、そして勝ち……二度目には負ける」
「まるでイタチごっこですね」
「あぁ、そうだな、グレイズはいつも勝てているのに、いつかは直ぐに上回って勝てるぐらいなのに、あいつには2回連続で勝てない」
「理由は何かあるんでしょうか?」
「あいつは、一度見たものをすぐに覚えられるみたいでな、授業でやったことも、一度やれば暗記して、テストではいつも満点。
実技テストも、誰かがやっているのを見て、満点の動きをそのまま繰り返してくる。
グレイズが総合的な天才だとすればあいつはそうだな……局所的に尖った天才だ、身体の動かし方と、頭の回転が桁違いのな」
「へぇ、そうやって聞くとすごく強そうですね……って言うか、ならグレイズにも、オズワルドにもクロルさんは負けてるんですか?」
「いや、オズワルドは部活動や競い合いにそこまで興味はなくてな、いつも学校が終わるとどこかにスっと消えていて捕まらんのだ」
「へぇ、凄い……努力を上から食べちゃうんですね」
「だな、オズワルドの奴も、授業で当たったからグレイズに負けたが……あいつなかなか負けず嫌いでその後の放課後に勝負を挑んで勝利したあと帰って行った。
グレイズも、あと何度やっても今のままじゃ勝てないってわかったらしくてな、直ぐに俺の方にやってきて、もっときつくしてくれって」
「へぇ……私の魔法でもっとキツくしましょうか?」
「なるほど、いいかもしれない……グレイズ!休憩は終わりだ!」
「っ!はい!じゃあねみんな、呼ばれたから」
「今日はグエルが来てくれていてな、そういうわけだから、黒魔法をかけてもらう、貴重な機会だ、おそらく世界最高峰の黒魔法を味わえる」
その後はグエルに代わってもらい、黒魔法に翻弄されていた。
「っあ、ありがとうございました……ぁ!」
「凄いスタミナだね、良くバテなかったよ……お疲れ様」
そう言って手を貸して立ち上がらせていた。
「今日はここまで、お疲れ様」
「はい、先生!また明日!」
友達と一緒に帰っていく。
ああいうのがいるんだろうが、オズワルドはいつも独りだ、そういう面なら、グレイズの方が上だな。




