人生ギルド
「コマーシャルで売りに出したいテーマは、バンク達に決めてもらった。
それは、ズバリ『人生ギルド生活』だ」
「?人生ギルド?俺たちはそんな名前のギルドだったか?」
ファクトが首を傾げる
「馬鹿者、そういう意味ではない、人生を、ギルドに所属しながら全うできる……つまり、死なないようにするんだ、命の危機を極力減らす
近年の力仕事も、道具が増えたり、魔法具の発展のおかげか、死者どころか、怪我人も少なくなっただろ?」
雨が降って一時中止したが、その数日後に集まった私達。
私は視線を向けて、現在我々のギルドを建てる人々に目を向ける。
「……あぁ、確かに冒険者だけ死者がずっと多いままだったからね」
アーガンが思い出したように口を開く。
まぁ、母数が他の仕事とは比べ物にならないほどに多いし、命をかけた仕事だ……って言うのを加味しても多かった。
「あぁ、だから、人生を、ギルドで過ごせるぐらい安全なものにしたいんだ」
そういうと、皆なるほどと言った顔をして、何を話すかを決めた。
「まず私が出るだろ?そして、秘書のグエル、後は……勇者のフロウも確定だな、後は魔族との友好ぶりを表すためナルヴァーぐらいか?」
「私も出た方がいいのでは?」
ラヴハートが手を上げる、確かにその方がいいな。
「だな、ありがとう、それじゃ頼む」
そうして、台本を決めたりして、皆が各々一言ずつ言ったあと、私が
「新しいギルド、君の一生を私と共に……!」
そう言って収録が終わった。
そうして、収録が終わる頃には、ギルドも立ち上がっていた。
「……っデカいなぁ!」
巨大なギルドになった。
この国を、そして、この世界を代表するギルド、金持ちの館よりも大きいなこれは。
屋根の上に立つ竜の象は、私をベースに、紫水晶で装飾されている。
そうして出来上がったギルド、新しいギルドカードに目を向ける。
『DP』と表示された所は、弱々しい細いトカゲがプルプル、哀愁漂うデフォルメイラストで「0」と言っている。
このギルドカードのドラゴンポイントが貯まれば貯まるほど、このトカゲはどんどん屈強になって、最後には竜になる。
序盤はデフォルメされた可愛い絵をシーカーズに任せ、その後のリアリティと威厳ある竜はファクトに書いてもらった。
他にも、酒場だけでなく、服屋やカフェ、武器防具屋屋に鍛冶屋まで揃っている。
職人気質の老人と、優しそうな初老の男の鍛冶屋も見られた。
本も完備されている。
文字と挿絵が飽きない程度に交互に挟まれたわかりやすい本から、本当に難しいもの、後は絵本もある。
マップも、見ているとその情景が頭に浮かぶほどには正確だ。
デートスポットととしてもなかなか有名になってきたし……何より
「っおぉ!?この長蛇の列は……まさか!」
「えぇ、そのまさかです、皆冒険者になりに来たんです」
横からヌッとグエルが生えてきて、私にそう言って知らせてくれた。
「おぉ!……貴様ら!存分に励め!夢を見ろ!そして掴め!」
新人の背を激励する。
先頭の実技の他にも、簡単な筆記試験もあり、軽い性格診断的なものもしている。
その人その人にあった適材適所を見つけやすくするための試みで、これはグエルの案だ。
「!英雄だ!サクラさんだ!」
「っお、まじだ、ギルマスだ……!」
「すごいかっこいい……!」
「女の人も好きってホントかな?……私もなのかな?」
そんな声がちらほら聞こえてくる。
アーガン、アモラスに先導されて進んでいく。
筆記はアモラスが試験監督を。
アーガンには、自分の分身を使って試験をしてもらっている。
合格率は94.6%、非合格者も、二回目までには100%受かっている。
夢を諦めなければ、受かりはするようにしている。
彼らの目は、皆キラキラと輝いている。
一攫千金か、名声か、何が欲しいのかは知らないが、その目は、未来を見ていた。
「……彼らも、竜へ成れますか?」
そうグエルに問いかけられた。
「……自己研鑽を積み、ポイントを稼げば……今はちっぽけなトカゲでも竜へ成れるだろう」
この画期的なアーガンのシステムは他の所でも取り入れられるののだが……それはまた別の話だ。




