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黒髪赤目の忌み子は英雄を目指しダンジョンの最奥を目指す  作者: 春アントール
英雄とはなしをして、お花を咲かせたいです!
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穴埋め

「………っ、はっ!?」


 目を覚ました、ふと目を覚ましたその時、辺りを見回すと……ここは……ん?


「……俺の部屋……っれ?あれ?」


 腰から下……正確にはみぞおちあたりから下が一切ない。


「……っわぁ!?っ無い!?……!」


 あぁ、思い出した思い出した。

リリーと俺戦ったんだ……うん、思い出した。


 ギリギリの最後で、あいつの英雄像を、ホシノカケラを託されたんだった。


 下半身だけで上手く戦って、モルバも、果てには敵の攻撃も活かして戦った。


「……っはは!いい勝負だった……!」


 凄くいい戦いができた。

下手をすると、今までで1番……いや、フブキの次に強敵だっただろう。


 なんせあの精霊だとか、同化して、しかも意味のわからない固有スキルの重ねがけ。


 瞳の裏に浮かび上がる、あの戦いの数々……そんな俺の思い出に水を指すものがある。


「……よぉラジアン、起きたよもう」


「カル〜体拭きに参ったぜー!……っわ!?起きてる!?」


 突然意味のわからない言葉使いで現れたラジアン、俺はそれよりもさらに先に返事をした。

突然を、知っていたんだ……その事に俺もラジアンもフリーズした。


「あれ?今私が言うより……っん!?」


 そう言って、手に持った水を、タオル諸共地面に落として腰を抜かしたように後ろ引いた。


「ん?なんだよ……いや、ってかなんで俺わかったんだろ……っ何!?」


「カル!目!!……!?」


 また、先に返事をして、お互い驚く。


「カル!鏡!手鏡かす!見て!」


「あり………っ何だこれ!?」


「早いっ!……ってごめ……っ!?」


 ツッコミで、ラジアンが俺の頭をスパーンと叩こうとしたのを、見えてしまったから一瞬で回避した。

そして鏡をみる、そこには見えたものと同じ、左目が、美しく輝いていた。


「……な、なんだこりゃ……!?……かもしれん」


「それは多分……あぁ、もう見たんだ」


 ラジアンは「リリーの輝石が見つかってないから、それかもね」と言っていた。


「あぁ、左目でも見えるよ」


「……っ!会話しずらいなぁ!!」


 今見えているのが未来が現実か、両目とも違うせいで、混乱してとりあえず会話している。つもりだが怒らせてしまった。


「わ、悪い目が変なんだ……左右違うものが見えててさ」


 そう言うと、ハッとした顔をして


「分かるよそれ、私もそういう時あったあった、その時は眼帯とか付けて、片目だけで生活してたよ」


「……眼帯かぁ」


 ここは俺の部屋、ベットの下から木箱を取り出して、その中の俺のオタカラから掘り出す。


「……あ、眼帯、持ってたんだ……カルにも……」


「そういう時期はない!」


 食い気味に答えさせてもらった。

これは別に未来が見えたからじゃない。


「……これは、貰い物なんだ……俺の………だいっじな大事な仲間の遺した……大切なものだ」


 デクター、ありがとう、助かる。

左目に、眼帯をかける。


 左目がシャットダウンされる。

そのおかげで、今を生きることが出来る。


「……あ、服着た方がいいよね、これ、替えの服」


 服を脱ぎ、別の服を着る。

身体を見てみると……ボロボロだな俺は。


 主に左半身。

今回のリリーに空けられた穴もそうだし、アライトさんの横腹への痛烈な一撃、クロンの左肩への鋭い一突き、マインの左腕から、クロンの肩の傷跡にかけて伸びる火傷跡。

ミランに切られた不治の傷は俺の体を斜めに切った跡が残っている。

五十層のキズは……ココロに、どこにココロがあるかは知らないが……ズクズクと痛む古傷。

六十層の傷は……分からないこと。

心に空いた確かな空白、大きなアナ、詰まりそうにないのに、詰まるこれは……なんだ?

七十層の傷は特に無い、もしも、もしも仮にあの時ラジアンが死んでいたら……それは俺の大きな大きな傷だった。


「……いっぱい、戦ってきたんだね」


「……だな、ところでだ、俺の足どこかな?感覚はあるんだ」


「あぁ、それならとりあえず今はミリアの部屋だったところに置いてあるよ」


 ミリアの部屋に、今は何も残っていない。

全て焼いて灰にして、ミリアと同じにして、風に散った。

大切なもののカメラは、1つだけ、ナルヴァーが持っていった。


「そうか、歩かせるから、扉開けてくれ」


「いいよいいよ、持ってくる」


「そうか、ありがと」


 少しした後、足を持ってきてくた。


「これ、くっつくの?ボロボロに崩壊させられてたよ?」


「……そこら辺は頑張ってくっつけるさ」


「おぉ、根性論」


 別になくなったら新しく作ればいいだけ……この体に、人間らしい死に方は用意されていない。

目に穴が開こうと、脳を貫通しても、別に死にやしない。

殺せるのは、一撃で粉々にすること……いや、粉も残さないこと。


 俺はいよいよ、不死身になってきたんだな。

意外と直ぐにくっついた。


「……お、もう歩いてこれるんですね、流石ですよカルカトス、お仕事お疲れ様でした」


 魔王様がリビングにでてきた俺を見てそういった。

絶賛ナルヴァーとトランプゲームをしているみたいだ。


「カルカトス様!見事でした!

あの戦いを見れたこと、僕にとってなんて幸運だったか……あ、写真いくつか撮っておきました、後で渡しますね!」


 そこには、美しく舞いながら笑う2人。

星空を飲み込む巨鯨。

俺とラジアンが共に立ち並ぶその瞬間。

そして、カメラに意地でも写りこもうとするサクラ。

手から水晶を出して観客席を実況席にして、戦いをクレイアが詳しく解説してくれたおかげで、実に楽しく観戦できたと言っていた。


 サクラには、随分と優秀なサポーターが着いたんだな。


「カル〜私、実はあの時あんまり本気出してなかったんだ。

カルの出番とったらどうしようって思ってさ……負けそうになっても信じて見てたんだ。

よく頑張りました……!!」


 負け惜しみとか、いい訳じゃなくて、本気でそう言っている……フブキのツノを喰ったんだ、当たり前か?


「……ありがと」


 ベッドの中じゃなければ、もうちょっと大袈裟に喜べたけど

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