アライト ワクレフト
「……へぇ、君、相当面白いね」
「そ、そうですか?」
「あぁ、黒髪赤目……ふふっ、そんな不幸な身なのに、良くもまぁ諦めずに英雄を目指せるものだね」
「そうかもですね……でも、俺はなりたいからなるんですよ」
「……ふふっ、いやはや本当に君は面白いね、なら、その心のままに、頑張って欲しいものだ」
「ありがとうございます」
「……さて、話を戻そうか、僕の名前は『アライト ワクレフト』今は……この迷宮の守護者さ」
何を言っているかわからない
「……守護者?」
「その名の通り、君たちをダンジョンの最深部へ到達させないように、そのために僕は今ここにいるんだ」
立ち上がり、ジャラジャラと鎖の音が響く。
「……やる気、ですか?」
「あぁ、やる気さ……今の君では僕には勝てはしない……が、君はいつかこの迷宮の脅威になり得るからね」
そう言って、彼の背に鎖の束が浮かぶ。
「……固有……スキル……?」
「よくわかったね《鎖の大監獄》発動」
「……ハハッ……」
口をついてでたのは渇いた笑い。
そして、心の中に『無理だ』と、一言付け加えるのは間違いなく自分だ。
「……さぁ?どうする?英雄志望の黒髪赤目」
「んなもん……逃げるに決まってんだろ!?」
背を向けるのは危ない……目は合わせながらバックステップを繰り返す……このまま9層まで逃げて、そこからは迷路だ。
歩きなれている俺の方がきっと上手く逃げられる。
そう、頭の中で逃走ルートを思案している……その時、足に枷がかかる。
「っ!……は?」
呪いだということは直ぐにわかる、今までに何度もしてきたこの手の攻撃……だが、明らかに違う。
まず、いつ錠が飛んできたかわからなかった……そして、呪いの効果が『桁違い』だ。
体が重いなんてレベルじゃない、あくまで比喩表現だが、まるで家を背負わされているかのような重みだ。
その呪いの道具を素手で持ち、そして、手首を返すなんかの予備動作もなしに、何かの生き物のように畝り、駆ける鎖たち。
「カル!?ど、どうしよう!?」
エンの焦る声が聞こえる。
精霊魔法が使えない俺と共にいるエンが魔法を使うと……己の存在を削り、そして火を起こすわけだ。
「まてっ!エン!」
声を絞り、一言に集めて声を上げる。
その言葉通り止まってくれた。
まだ動く片手でギルドカードに手をかけて、最近知り合った『ゴールドランクの人達』に、こう『魔術文』を送る。
『10層に超強敵、助けてください』
その文にはすぐに答えが返ってきた。
『今行く』
バンクさんからの短くも頼りに、何よりも嬉しい言葉が届き、頬が緩む。
「笑う余裕があるなんて大したものだね……何をしたのか、ゆっくりと君を見定めようかな」
バンクさんを一言で表すなら、カラミスタイプですね、わからない人は……ラジアンタイプ?ですかね




