ニコイチ
「……さて、俺たちの力、見せてやろうぜ!」
劣勢に変わりないが、それでも横にラジアンがいるからか、安心した。
「うん!行っくよー!?」
目をぎゅっと瞑る。
パッと目を開くと、目の中に淡い白い星のマークが描かれ、そのまわりに小さな星々が散りばめられるような、綺麗な目をしていた。
「……星が綺麗だからね、流星眼でいくよー!」
空の星をそのまま瞳の中に閉じ込めたような目を、リリーに向ける。
「堕ちろっ!」
べコンと、地面がめり込む。
「ツノ食べたから魔眼が強くなったんだよ……ねっ!」
更にクレーターが大きく深くなる。
「……っ!っわぁ!やるね!重いよ!これ!」
そういうも、膝ひとつ突きやしない。
それがヘンで、迂闊に手を出せない。
「重力かぁ……〈星花引力〉!」
グンッと、俺とラジアンが引き寄せられる。
踏ん張ろうにも、足がすくわれたかのように浮き上がり、引き込まれる。
「っ!?なんだこれ!?」
「っわわ!?」
「ふふっ〈星花斥力〉」
その瞬間、寄せられるのと同じ勢いで、なにかに押し出された。
吹き飛ばされて、その激しい衝撃に理解が及ばない。
「……っ何が!?」
「……交差法で吹き飛ばされた……のかな!?」
2人揃って遠くに飛ばされたものだ。
「……精霊のみんな、力を貸してね」
そう言って手をかざすと、あたりの蕾からたくさんの精霊が浮き上がる。
「……なるほど、確かに星みたいだね、カル」
「っ呑気なこと言ってられっか!?走れ!!」
その精霊達が、全員、魔法を放ってくる。
しかし小精霊の威力じゃない、多分リリーがなにかしてるな!?
「っわっ!?凄い威力!地面に穴がっ!?」
そう言いながらも、上手く避けるなぁ
「ラジアン!埒が明かない!一気に距離を詰められなきゃ、勝ち目はない!」
「だよね〜!私たちの専売特許は近接だし!?」
そう言って走り出すラジアンに合わせて、俺も走り出す。
飛んでくる魔法を全て剣でたたき落とし、ラジアンの道を作る。
「あっりっがと!〈夜噛〉!!」
初めて見る技だ。
黒い牙のようなものがリリー諸共、あたりの精霊も飲み込む。
しかしリリーはもちろん当然と言った感じでそれを避ける。
どうやって避けたのか、是非とも教えて欲しいが、それはまた別で、俺は直ぐにそこへ追撃をする。
それを、あの剣で防いでくる。
剣技では、既に俺におくれをとることはないたろう、恐ろしい。
数回切り結ぶと、剣を上にうち払われる。
「〈爆炎星花〉」
口をパカッと開けると、そこから星型の炎弾を放つ。
「っわ!?なんだその攻撃!?」
口から火を吐くのは想定外すぎる。
バッチリ直撃、すぐに傷を癒す。
「すっごいね!ビジュアルあんまり良くないけどさっ!」
ラジアンが滑るように現れて、俺のカバーに入る。
そのラジアンに反撃しようとする剣閃から、身体が反射的に動く。
これが、フロウの……ミランの求めた剣。
受け流し、攻撃からラジアンを守る。
身体は反射的に動く。
「……はっ!」
ラジアンがついに攻撃に成功した。
確かに切り傷が着いた、斜めに身体にできた傷。
「……〈風圧星花〉」
足元に、爆風が起こる。
その風圧に、俺もラジアンも吹き飛ばされまいと地面に剣を突き立てる。
その風が止まない。
あれは、リリーが声に出しただけで、本当は多分別の精霊が使っている魔法。
だからリリーは走れるのか?
「ダメだね!それじゃ飛ばされた方が良かったと思うけど!?」
そう言いながら、斬りかかってくる。
俺の前にいるラジアンに向かう刃から、また上手く俺は守った。
その瞬間、地面に血を突き刺して楔とする。
「……か、カル!すごい!」
そう言いながら、剣を引き抜き、ラジアンは風に飛ばされて後ろに下がる。
「時間!」
少しタメがいるからか、そう一言残して、羽を広げ、風を受けながら消えていく。
「リリー!俺と遊ぼうぜ!」
「やーだよっ!」
剣を俺に向かって投げてくる。
血の楔が地面に突き刺しているそれが盾の形に変形して俺を守る。
すぐにこれを解いた瞬間、リリーが消えていた。
「っな!?」
「こっち!」
死角から、いきなり飛んでくる蹴り、飛び上がり、回りながら踵が首へ飛んでくるのを受ける。
受けられたのは……その動きに、酷い既視感を感じたから。
「……俺の動き……か!?」
武器の投擲、死角への潜影、そしてその独特の蹴り。
しかしこれらの動きを、リリーにみせた覚えはない。
「……これはね、違う世界のあなたが私にしたこと」
「……は?」
『違う世界』?
「そう、私は知ってるの、知り得るの、その違う世界を。
私の固有スキルは、それだから……《高嶺之花世》は、それだから」
り、理解が及ばない話を展開されている!?
「も、もっと分かりやすく言えないか?」
「……わかんない!パラレルワールドを知ってるの、なんせ。
弱いかもしれないけど、強い時もあるの『もしも』が全部見えるの!」
多分それは固有スキルの方じゃなくて、精霊同化の方な気がする。
なら、固有スキルは、なんだろうか?
しかし、数秒前から聞こえている。
「さぁ、今が一番夜が深い時。
一発で決めてね、アズナス……〈ヨルガミ〉!」
さっきと同じ技名、なのに威力がまるで違う。
それはそれに咄嗟に身を引いた、声が、限界を超えた鋭敏な聴力のおかげでギリギリ聞き取れていたおかげで、俺は既で離脱した。
「……倒したかな!?カル!」
地面諸共そこから消し飛んだように、リリーも見当たらない。
「……いや、まだだ」
あれで死ぬとは思わないし……何よりも、謎が多すぎる!
「……まだだよ、確かにね!」
やはり、まだまだ、怪我はしていても、どれも致命傷とは呼べないものばかり。
「……ラジアン、少し分からないことがあるな」
「……カルの説明通りなら、確かにわからないことが1つあるね」
リリー サジェントス、お前の未練は、なんだ?




