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黒髪赤目の忌み子は英雄を目指しダンジョンの最奥を目指す  作者: 春アントール
英雄とはなしをして、お花を咲かせたいです!
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高嶺の花よ

「……っははは!あっははは!はははは!」


 笑いながら、リリーが降りてきた。

リリーだけが降りてきた。

落下音というには小さすぎて……着地音にしても小さすぎる。

まるで膝を少し曲げただけかのように、ほとんど着地音がせずに、地面に降り立った。


 一見容姿によく別変化はない。

しかし、そのリリーと目があった時、息が詰まった。


「……その眼……!!」


「……っはは、多分、精霊同化したからかな?目が一緒だね」


 精霊同化……!?あの聞きなれない言葉は精霊同化の為の合言葉?


「……ま、いっか、いっくっよぉ!?」


 言葉一つごとに膝を曲げ、腰を折り、最後の一言で大きく前に飛んできた。


「……っぶ……!?」


 それが見えなかった。

適当に構えていた剣に当たり、俺だけ吹き飛ばされた。


「……ねぇ、カルカトス……ラヴィは何の精霊か知ってる?」


「……っごほ……は、花とか……?」


 地面から起き上がりながら答える。


「……ラヴィ、それはね、宇宙的恐怖が産んだ精霊よ」


「う、うちゅー?」


「そ!うちゅー!恐怖って言うと少し違うなぁ……例えばさ、空を見上げて、どう思う?」


 満天の星空、美しいその夜空を見上げて?


「……まぁ、圧巻の一言に尽きる……綺麗だな」


「そう、そういう感情の結晶!

美しいというイメージが強ければ強いほど、美しくなる。

そして稀に、無限とも言える宇宙を探究する者もいる、その人たちの思いもまた、ラヴィを作っている」


「……その言い方だと、まるで力は無限とでも言いたげだな?」


「その通り、ラヴィの力は無限大、だから私も、無限に戦える」


 限度がないんだ。


「高嶺の花よ、ラヴィは、その空の星々、あまたあるその輝きすら、まるで花粉か何かとしか思えない程に偉大で強大で……だから花の形をしてるのは偶然でしかないの」


 もう、ついていけない。

精霊同化によって色々わかるんだろう、ウンディーネを思い出す。


「……じゃ……俺も……っ!?」


 アデサヤにお願いしようとした瞬間、俺の真横に剣が突き刺さる。

真っ黒の刃、これは……ラジアンの?


「カル!貸したげる!勝ってね!」


「……アズナスを……!?」


 俺が!?

アデサヤは、血でサポートしてもらい、アズナスを握る。


「……あぁ……ええっと、どうも、カルカトス君」


「っわ!?なんだよそれ!?夜帝じゃないの!?なんかしょぼっ!?」


「……ラジアンのせいだ、本当はこんなのじゃない」


 こっわ!ラジアンこっわ!?


「……ま、なら力を存分に借りるとするよ……夜の帝王、今、外は真っ暗じゃないの?」


「それは言い過ぎだが……今空に投影されている夜空は本物だ、力は十二分にだせる」


 おぉ、こいつすっげぇナチュラルに会話してくるなぁ、アデサヤは基本黙って見てるのに。


「ま、それなら行こう、アズナス!」


 剣を、下から振り上げるように、振る!


「……だめ、だね」


 髪の毛どころか、腕一本で抑えられた!?


「っどんな硬さしてるんだよっ!?」


「……さぁ?『精星花法』〈花丸百点(オーライ)〉!」


 知らない魔法名……いや、魔法かどうかさえもわからない。

受け止めた腕、その掌をぱっと開くと、赤ペンで書かれた花丸が。


「……は?」


 どんな魔法が来るのかと、身構えていたのに、拍子抜けだ。


「舐めない事ね」


 ポンっと、腹に掌で触れられた。

すると、花丸が俺に移った。


「……オーラーイ!」


 そう言うと、その花丸から、恐ろしいものを感じた。

急いで服を脱いで、後ろに飛び退く。


 その瞬間ジュッと音を上げて消滅した。


「炎の魔法か!?」


「そんなところじゃない?私もよくわかってないや」


「……おい、リリー」


「ん?なに?」


 虹の瞳がこちらを見すえる。


「……2対1は卑怯だ、2対2にさせてくれ」


「……まぁ、いいよ、誰呼ぶの?」


「ラジアン!!こいっ!」


「……はーい!」


 観客席から飛び出した。

出ることを拒まずに、花の椅子から飛んできた。

横に降り立ったラジアンに、アズナスを返す。


「お前の魔眼と剣技を頼りにしてる……防御は任せろ」


「……りょーかい、期待に応えるよ」


「……いいね、やっぱり2人とも、すごくいい」


 そう言って3人共々笑う。


「……いくぞ、ラジアン……!」


 剣聖の剣を借りる。

守るための剣だ、大事な人を、ラジアンを守るための俺の……俺とお姫様の剣だ。


 やっと、戦いが始まった。

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