森の守護者 シルフィール
「貴様、ここは神獣の森、直ちに去れ」
目の前に突如現れ、そして、そう言い下す。
だが、私は……これでもかなり動揺している。
さっき、距離を詰めた時、少しばかり驚かれると思ってはいた……が、この少年、私が地を駆けたその瞬間から目に押え、体を低くし、目で私の動きを追っていた……
無論、目で追えていようが、この少年にできることは何も無い……何も無いのだ。
「……誰……ですか?」
「侵入者に名乗る名などない」
「!ここ、誰かの、家?ごめんなさい」
家……というのは正しいのだろうか?
ま、まぁ、何かは分からないが……驚異は去ってくれるのだろう。
「わ、分かれば良いのだ……さぁ、去れ、今回だけは見逃してやる」
「ま、待ってください!」
「ん?どうしたの?エンちゃん?」
赤い子精霊、元気一杯の炎のように明るい子精霊。
「カルを……カルをこの森に置いてあげることはできませんか!?」
「……エン?いいよ、俺、外、行くよ?」
「か、カル君!今はちょっと静かにっ!」
「そうだよ!静かに!」
「……わかった」
青い子精霊、スイちゃんだったかな?
少し落ち着きはないが……根はしっかりとしている子だ。
黄色い子精霊、ライくんも同じように止めている。
「……ど、どうしてだ?その少年は……何かはわからないが、嫌な気配がするのだ」
まだ、15にも満たない子供の前で言うのはあまりに酷だが……?
どうしてその歳で1人なのだ?
「カル、と言ったな?なぜ、1人なのだ?」
「わからない……生まれた時から、1人だったから」
「だ、誰がお前をその年まで育ててくれたのだ?」
「……育てる?」
「シルフィールさん……まだ、カルは言葉を学んでいる途中なんです、あまり質問攻めすると彼が困ってしまいます」
「り、リョク君……君にしては珍しく、はっきりと言ってくるね……」
日頃無口な彼がそうまで言うのか……
「わ、私からも、お願いします!」
「スイちゃんまでか……」
そこまで、この子達に認められる要因……まぁ、精霊語を解し、そのくせ何も知らないというのが、好奇心旺盛な子精霊には珍しくて仕方ないのだろう……
私も同じような気持ちだ……珍しい、所ではないな。
「……アルトリートさんの所に来てくれ、そこで彼も混じえて話そうか」
「!はいっ!」