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黒髪赤目の忌み子は英雄を目指しダンジョンの最奥を目指す  作者: 春アントール
英雄とはなしをして、お花を咲かせたいです!
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高名な画家

「………っ……あ、そうか、ここは」


「お、起きたね」


「っおわっ!?」


 目を覚まして見れば空が見えて、辺りには一面の花畑。

そして、俺の横で一人の美女が顔をじっと見ていた。


「いやー、ごめんごめん、かの有名なカルカトス君が近くで寝てたもんだから、絵が描きたくなってさ、ほんとごめん」


 そういった後、テトテト走っていって、何かを書き加えた後、俺の方にまたよってくる。


「ちょうど起きてくれてよかったよ、少し目を見せてくれ」


「め?起きてる俺の絵を描くのか?」


「いや?寝てる君の絵を描くよ」


 ?何を言ってるんだ?


「何を言ってるんだ?」


「……あぁ、そういう事か、目を閉じているのになんで目を?って?」


 そう言われたのでコクコク頷きながら水を飲む。


「……それはね、例えばさ……正面から人の顔を見て絵を描くじゃん?」


「……おう」


 絵に関してはマジで無知なので何も言わずに頷く。


「その時に、例えば頭の中でその人を先ず思い描いた時、後頭部がかけてるんだよ、それって絵としてみたら全然違和感ないけどさ、人の記憶としては違和感が凄いじゃん?」


 そう言われていくつか考えてみるが……難しいもんだな。

唸っている俺を見て、彼女は短い髪を少し括って、後ろから垂らした


「例えば、君から私を見た時、この髪は突然後ろから垂れているわけだよ、でも後頭部が丸ごと消えてたら、これは浮いてる感じじゃん?」


「……あぁ、髪を括った時に、例えばその括ったところとかが想像できないとおかしくないってこと?」


「ま、そんな感じ、私はその中でも、目を閉じてたらさ、その目ってないわけじゃん?

それって絵を描く時に致命的だと思うんだよ、だから!瞼を書く時は、その瞼の下にある瞳を見たいんだ……ってわけでおねがい」


 わかったような分からないような芸術って難しいな。

しかし、リリー サジェントスは高名な画家としても有名だった。

そういったこだわりがあるからこそ、その名声を手にしたのかもしれない?


「ま、わかったよ、好きに見ろ」


 そういうと、俺の目の前によってきて、じっと見つめてくる。


「っふんふん……なるほどねー……よし覚えた」


 そういって帰り、少し書き加えたあと、俺にできたと言って見せてきた。


「早いな」


「ほとんどできてたからね、ほら!見てみて!君だよ!英雄!」


 そう言って見せられた絵の中の俺は、確かに寝ている。

不思議だ、花畑の真ん中で寝ている人間を見たら、真っ先に思うのは死人の絵なのに……多分俺じゃない人が見ても、これは俺がただ寝てるだけの絵に見える。


 今にも動き出して、息をし始めて、そしてその目を開き、さっき覚えた目でこちらを見つめてきそうな、そんな命を感じた。


「……っ、凄いな……芸術に関しては無知だが、すごいのはわかるぞ」


「そうでしょー?良いでしょー?」


「あぁ!もう1枚頼む!剣構えてる俺を描いてくれ!」


「いいよ〜!それじゃいくつか剣振ってみて!」


 そうして言われ、剣聖の剣と我流剣術を足したものを振ってみせる。


「……ふむふむ、なるほどねー……難しそうだけど頑張ろうかな」


 アデサヤじなゃくて、剣を振る俺の目をじっと見ていた。

この剣に驚いていないのか、それほどまでに集中しているのか?


 その後は、俺の動きを何度か見たあと、体術に移行する動きも見せて、より絵が素晴らしくなったと言われた。


 そして、今回は靴裏を見せてくれと言われた。

まぁ、希望に答えて靴の裏を見せて、絵を描いた。


 その絵はやはり素晴らしかった。

今にもその額縁から飛び出して、俺に斬りかかって来て、動きが読めないだろうし、蹴ってくるかもしれない。


 その蹴りの際、目の前に見えるのは、さっき確認された足裏なのだろう。


 凄く良い絵だ、なるほど、金持ちたちがこぞって名画を欲しがる理由がわかった気がする。


 それに彼女が書くのは、常人には見えないはずの精霊。

そんな目に見えないものが、まるで今にでも動き出しそうな錯覚に襲われるんだ、名が高みへ至るのは当然の事だったのかもしれない。


「どう?元気出た?じゃあさ、一緒に上に行かない?私さ、スイーツにすごい興味あるんだ!」


 そういって、まあ力が強くなった気がする。

この子の目標の輪郭がいとも容易く変わる。


 この、リリーは、今までのま守護者とまた違ったベクトルで厄介で、違ったベクトルで恐ろしい。

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