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黒髪赤目の忌み子は英雄を目指しダンジョンの最奥を目指す  作者: 春アントール
英雄とはなしをして、お花を咲かせたいです!
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迷宮探索【カルカトス】

「っく………っあぁ……!」


 ちゅんちゅんと、鳥の鳴き声で目を覚ます。

ここは魔王城内の一室、ふかふかのベットと、綺麗な広い机、大きなクローゼット、ご飯のいい匂いを嗅ぎ取れるいいところ。


 背伸びして、両開きの窓を開けて、ヘルヴェティアを見回す。

平和だ、とっても平和だ、すごく、いいことだ。


 いつものように匂いに釣られて、7時丁度に部屋を出ると、ラジアンといつも目が合う。


「っお、おはよ!カル!」


「あぁ、おはようラジアン朝ごはん出来てる……のかな?」


 いつもの服装に、空色のエプロンをつけて、ヘラを片手に俺の方へ顔を向け


「もうそろそろ?あ、あれお願い、パンもう焼けてるから運んでー」


「あぁ、了解だ」


 このパンは俺が作り方を教えたんだが、意外に上手く作れている、ラジアンはコピーが上手い。


「ナルヴァーとか、魔王様は?」


 いつもパンを運ぶ時に同じような質問をしている気がする。


「今日もも、もう仕事に行ってるよー!」


 もがひとつ多いが……ま、仕事に行ってるのは本当だろう。

ラジアンは牛乳瓶運びの仕事を始めている。


 アイツらしくないが、どこかアイツらしくもある。


 魔王様は、まぁいつも通り、魔王の間で仕事をしているんだろう、とはいえ最近は暇が多くなってきたから釣りでもしてみようかと言っていた。


「そーか、んじゃ二人で食べよう、朝ごはんはなーに?」


「っんーとね、昨日の晩御飯のビーフシチュー!

それにチョロっとチーズをかけて、あとはパンにつけて食べる!」


 うん、美味しそうだ。

あとはフレッシュな生野菜のサラダもあるらしく、ドレッシングは昨日ナルヴァーが作ったものらしい。


「これさ、ヨーグルト入ってるんだ、ナルヴァーの勤め先のおばちゃんが作り方教えてくれたんだってー」


 サラダを頬張りながらそう教えてくれた。


「へぇ、ヨーグルトをか……またちょっと教えてもらおっかな」


「だね、これ美味しいしね」


「どこか甘いなぁ、蜂蜜とか入ってるかな?」


 なんて話をしながら、ご飯を食べていく。

洗い物は俺も横にたって手伝うことにしている。


 前の家から持ってきたエプロンをつけて、俺もラジアンと雑談しながら、洗い物を終える。


「おっし、出来たな」


「だねー!それじゃ、今日も行ってらっしゃい!『探索者』さん!」


 そういって、俺の背中をポンッと叩く。


「あいよ、ヘルヴェティアのことは頼んだぞ〜!」


「うんわかったよ!あ!守護者見つけたら!私も呼んでね!」


「っはは、お前がいたら守護者の人が気の毒で仕方ないよ」


 そんなことを言いながら、魔族の翼をもしたものを生やし、空を飛ぶ。


「……っ遠いなぁ」


 まぁ、今日はナルヴァーと会えなかったからなぁ。

最近俺はあいつを頼ることが多くなってきた。


 もうかれこれあいつとはかなり長い付き合いになる訳だからなぁ。

生誕祭の頃からの付き合いって考えると……もう随分と昔のことに感じるな。


「……あーあ、ナルヴァーがいたらひとっ飛びだし、それに話が出来ていいんだけどなぁ」


 なんてボヤきながら、一秒でも早く着くために羽ばたく。

少し暖かくなってきて、時々熱いとさえ感じるようになってきた今日。


 今日もまた、迷宮に潜る。現在七十七層まで到着している。


 そして、ここに来るには、まず六十層まで転移した後、十層下り、更にそこから七層だ。

この七層は3日間泊まり込みで調べた七層。


 そして、今日はその七層からさらにした……そう、守護者を探しに行きたい。


 そして、ここは俺以外は絶対に来ては行けない。

なぜなら、ここの主な敵は『精霊』


 しかも、花の精霊、見えるのは俺だけだろう。

だからこそ、極めて恐ろしいが、俺は精霊と話が出来る、だから余裕だと思っていたんだが、意外と攻撃されて驚きながら、反撃して倒している。


 彼らが落とすのは三級魔石、上級嗜好の人間なら、是非欲しい逸品だろう。


 しかしまぁ、自然豊かですごくいいところだな。

師匠といたところを思い出すなぁ。


「今頃、シガネやリョク達は何してるんだろうな……?」


 そんなことを思いながら、いつになっても優しい陽光の差す迷宮の中で眠る。

ふかふかの草の上で、ここに入ってきて十何時間もたったが、ずっと明るいせいで頭がおかしくなりそうだ。


 そういう意味で、俺の体内時計が狂わされる場所でもあった。


 だから数日間ヘルヴェティアでリハビリもしてきたのに、もう変な感じだ。


「……ね、寝るんだ……明るいけど……!」

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