手向け【カルカトス】
「………っで、お前で間違いないんだろ?御託はいい」
俺はそう言って剣を向ける、その矛先は、一人の人間。
なぜ、今、平和になったのに、そんな事をしているのか?
忘れちゃいない、俺達の大事な大事な仲間『ミリア』あの子の家族を人質に、俺達にスパイさせたこの人間たちは許せない。
きちんと理由をつけて、人の王様にも許可を下ろしてもらって、この貴族たちをまとめて処す。
全員を斬り殺し、やはり彼女の家族は死んでいたが……それを抱き、ミリアの墓の近くに埋葬する。
「……なぁ、ミリア、俺はさ、未だによく分からないんだよな」
墓の前に座り込み、そうつぶやく。
独り言じゃない、質問をしている。
「お前はさ、なんでいきなり消えたんだ?なんで、消えたんだ?
お前は……まだ、生きてるのかな?」
もしかすると、とても辛くって、今の仕事を投げ出したくなったのかもしれない。
スパイなんてやりながら俺たちと共に戦う自分が許せなくな逃げ出したのかもしれない。
ならば、もう戻ってきて欲しいんだけどなぁ……死んだことにしていたことは謝るし、ちゃんとご飯にも連れてってあげるのに。
「お前は、結局どこへ行ったんだ?」
「あ!カルカトス様!」
その声に振り向くと、ナルヴァーがこちらへ駆け寄ってきた。
「おぉ、ナルヴァーか、アレか?俺と一緒で報告に来た感じ?」
手に持っている花を見れば一目瞭然だ。
「えぇ!昨晩にカルカトス様がしてくれた闇討ちのおかげで、無事に報告も出来そうです。
カルカトス様のことは、ミリアもずっと慕っていましたよ」
それは意外な話で、俺は目を丸くして
「俺を?ラジアンじゃなくてか?」
別段何かをした記憶はない。
「えぇ、ラジアン様も確かに尊敬していましたけど、それと同じかそれ以上にカルカトス様のことも尊敬していましたよ。
『元々人間のところで過ごしていたのに、私たちを手伝ってくれるだなんて、懐の広い人というか、なんて言うか凄い人だよね!』と」
そうか、それは………あぁ、ミリアと俺はちょっとだけ似てるな。
自分の過ごしてきたところから飛び出して、違うところに行った。
ただそれが主体的か、はたまたそうじゃないという大きな違いもある。
「………なぁ、ナルヴァー、少しシメっとした感じだな」
死者を思うと、こんな空気感になるのは仕方ないか。
「……ですね」
「ナルヴァー、昼はもう済ましたか?」
「あ!いまから行こうと思ってましたよ、どうです?ミリアが好きだった定食屋さん、行きません?
あそこの定食、鬼が経営してるのもあって和食が美味しいんですよ〜」
「ほぉ、いいなそれ、それじゃそこに連れてってくれよ」
「えぇわかりました!こっちですよ!」
俺を手招きし、少し先を歩く。
「……ミリア、ごめんな、気づいてやれなくて」
「カルカトス様ー!早く〜!」
「っ悪い!今行く!」




