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黒髪赤目の忌み子は英雄を目指しダンジョンの最奥を目指す  作者: 春アントール
慈善団体『六罪』
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六つの罪【ラヴハート】

「………さぁさ!皆様よってらっしゃい、我ら『六罪(アルマティア)』の、六つの罪を語りましょう」


 昨晩は随分といい思いをさせて頂きました。

私、ああいった夜伽は初めてでしたが……なかなか、悪くはありませんでした。


 私の客寄せの言葉が、あたりにいる人達を呼び寄せる。

私は『六罪』唯一の生き残り。

私達は大罪人として語られながら、共に英雄として称えられた。


「……さて、皆様に、まずは我々『六罪』について知っていただきたい」


 そう言って、私は椅子に座り、みなを見渡す。


「我ら六罪の目的は、たった一つ『世界平和』しかし、今この街も、どこの国も、我々のしかけた爆弾によって、復興中ですね、死者も沢山出ました……きっと私たちを恨んでいる人たちも沢山いらっしゃることでしょう。

しかし、あのまま戦争続けていたら、おそらくあなたたちも死んでいたでしょう。

ですから、我々は1つ、覚悟を決めました。

それは、六つの罪を犯すことを、決めむした。

我々を先導する、一人の剣聖が覚悟を示し、我々と共に罪を犯してくれると。

宣戦布告、全国の同時多発テロ、英雄殺害、大虐殺、国の重要建造物の破壊、そして、人と魔族の輪を乱しました

それが私たち六罪の犯した六つの罪と言えましょう、私にかかった罪状はおおよそそんなところです」


 そう話したあと、少し水を飲み口を潤しまた話す。


「しかし、そんな我々でも、確かに世界を平和にしたかった!

我々は非常に強力な集団だったと自負しています。

それは!例えばお互いが睨み合い、牽制し合うような半端な戦力と削がれた集中力ではとても太刀打ちできるようなものではありませんでした

だからこそ、人と魔族は手を取り合う他ありませんでした!

そして!我々は敗北を期し、今や生き残りは私だけとなっています。

私は私の仲間が殺されたことはとても悲しく思っています。

しかし、世界が平和になるのなら、己の命さえもなげすてる、最高級の自己犠牲こそが、我々の最もとするところ。

私たちが死ぬ事で、世界がほんの少し令和になるのなら、私たちは喜んで死にましょう!

しかし、私たちのことを忘れても構いません、ただし、忘れないでいて欲しいんです!あなたたちが手を取りあって!共に戦った誰かのことを!

我々六罪ですら!魔人と!人と!魔族と!剣聖に賢者!ドラゴンと、黒い魔女!それに、私のような元奴隷以下の身分のもの!そして!5000年前の英雄の子!皆が!分かりあって!笑顔で話し合っていました!

私はそんな皆様にお茶を入れて、みんなと話しをして、どうしてほかの人たちもこれができないのかと、心底疑問に思う時もありました!

だから、私たちのような恨むべき犯罪者が!忌むべき罪人が!そんな奴らにさえできたこと、あなたがたならきっともっと上手くやってくれるでしょう?」


 そう言って、私は言葉を区切った。

拍手のようなものが巻き起こり、みな、私に一言告げた後、どこかへ行った。



 懐かしい話だ、私はどうやって六罪に入ったか?


 私の生まれは最底辺、力のない、ソウルドでは奴隷にも満たない弱者。

しかし、そんな私がつい昨晩まで純血を守って生きてこれたのか、それは私には力があった。

私には大切なもののためならば、何かを投げ捨て、そして、その敵を殺せる才能があった。


 私は周りの人間を蹴落として、暖かいスープと柔らかいパンにありついた。

それができるようになった頃、私の守りたかった物は、とうの昔になくしていた。


 私が誰のために生きるのか、分からなくなってメイドになった。

誰かひとりのためだけに尽くしている愛だけは、私は生きているような気がした。


 そんなある日、私の元に剣聖が現れた。

その異常事態に驚きつつも、私は極めて丁寧に言葉を吐く。


 それに少し申し訳なさそうな、困ったような顔をして、私にこういった。


「君に大切なものはあるかい?」


「……いえ、特には」


「なら、僕に着いてきてくれないか?

この世界は、絶望的なまでに間違っている、それを停めないといけないんだ、そのために、何もかもを投げ捨てれるような人材が必要なんだ、例えば、大切なもののためになんでもできる人」


 私の本質を見抜いてきたのか、誰かから聞いていたのか、それを問うすべはもうないけど、私はその時、必要とされている気がした。


 だから着いて言った、そして、私は生きてきた。


「皆さん……私には、生き延びて、罪を背負わなくてはなりませんね」


 でも、ほんの少し幸せになれたら嬉しいな。


 カタバミを、一つまみ、ザン様の墓に置く。


「私の最後も、あなたのように幸せでありたいです」

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