戦いの終わり
「……なるほど、ザン様に勝ちましたか」
「ありがとう、私は、今はそれしか言えないや」
少し浅い言葉だが、今はそれが最大の敬意でもある。
「どういたしまして……きっと世界を平和に………この共闘に、意味を持たせてください」
メイドさんはそう言った。
そして、初めて合点がいった。
「……!まさかあなた達!?」
世界征服なんて真っ赤な嘘?
まさか人間と魔族が手を取り合って共通の敵に立ち向かう、そうして手を取り合って、この戦争を終わらせようと?
「さよなら」
胸にナイフを一刺し、そしてばたりと倒れ込んだ。
私は走った。カルカトスの方へ、急いで走った。
「カルカトス!!」
彼女が死にかけているからか、はたまた能力を解いたからか、皆意識をすぐに取り戻した。
「?グエル?」
「カルカトス!説明はあと!メイドさんを助けて!」
「白魔法じゃ無理だ!魔王様!サクラを!ドラゴンを!」
「よく分かりませんが分かりました!」
シュンっとサクラが現れた。
「っうお?か、カルカトス……あとグエルと……まおう?」
いきなりのことすぎてよくわかっていないらしい。
「サクラ!あのメイドさんを助けて!」
「よくわからんが、任せろ」
聖魔法で治療する。
あっという間に傷は治る。
ただ、服までは治らないから、ちょっと胸のところに穴が空いててハレンチだ。
「……で?なんで助けたんだ?こいつ?」
サクラが、質問してきた。
「ざっくり言うと、この人たち世界征服なんてする気ないのよ」
そういうと、皆疑問符をうかべた。
「えっ?」
魔王も素っ頓狂な声を出していた。
「多分、この人たちの目的は、世界征服じゃなくて世界平和。
この戦いで、人と魔族は手を取り合う他なかった。
そうしてその奇妙な共闘は、私たちの中に戦友の2文字を刻んだのよ。
そうして、初めて、お互いがお互いを救いあったという事実が残るの、世界征服を共に食い止めたとして」
そこまで言うと、皆ほとんどが納得していた。
「ペルソナの『世界平和の礎か』の意味がわかったかもな……」
そんなことを言っていたのか。
確かにこの人たちのやり方は間違っている。正しくはない。
多くの罪なき人が死に、最高の勇者も死に、仲間も多く失った。
だけど、それ以上に、今の世界が間違っていたのかもしれない。
彼ら以上に間違っていたのかもしれない。
師匠、あなたたちがしたかったのは、きっと、世界平和の実現………そして、それは、果たしてあなた達の自己犠牲の上に成り立つのですか?
いえ、もう終わった話、それをどう活かすかは、生者のみに許されること。
「……なるほど、では、私たち魔族も帰りましょうか。
一度家に帰りましょう、仲間の弔いや、大切なことを国のみんなと話し合うのです。
魔族のみんな……ヘルヴェティアに帰りましょう、私たちのヘルヴェティアに。
そして、この戦いを広めましょう、新たな時代の幕を、引いてくれたんです、その開いた幕の上で、せめて最高の劇をしましまょう」
魔王はそういった後、カルカトスを後ろに連れて、歩いて森の中に消えていった。
「……奇しくも、同期の皆様と会えたというのに、もう行ってしまいましたか」
「……仕方ないだろ、あいつはもう、魔族についたんだ、あいつはその方が幸せだと思ったんだからな」
「……そういうところも、直して行けたらいいですよね」
そう言って私達も歩き始める。
確かに一歩前に進んだ気がする。
サクラの背に乗り、メイドさんを運びながら、ふと思った。
「あなた達は、どうしてそこまで?」
ペンダントを握り、師匠を思い出しながら、私は思った。
彼らこそ、真の英雄なのではないか?と。
そして、この戦いによって、英雄はまたも生まれただろう。
サクラは言った。
「英雄とは、戦いの中で生まれる者、らしいからな」
なるほど確かに。
サクラ、あなたはもう立派な英雄だ。
次の最高の冒険者は、きっとあなただ。
いなくなってしまったナプラ、ラング、ライト、その3人の穴を埋めるのは難しいことだろうが、彼女ならきっと上手くやるだろう。
バンクさんは、歴史に触れれて嬉しいと素直に笑っていた。
魔女のみんなは、これからもゆっくりしたいらしいが、賢者の空いた穴を少しの間塞ぐらしい。
そして、私は相変わらず、冒険者として活動しながら、魔女としてももちろん頑張る。
首に提げたペンダントと、大きなこの魔女帽子に誓って。




