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黒髪赤目の忌み子は英雄を目指しダンジョンの最奥を目指す  作者: 春アントール
慈善団体『六罪』
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賢者【カノ】

「っくそ!ぜんっぜん距離が詰められない!?」


 この女性は、確か賢者?だったよな。

回復魔法も、攻撃魔法も、援護の魔法も全部一人でやっている


 隣に現れた赤い魔族と共に戦っているのに、まるで活路が見えやしない。


「勇者!一緒にいきますよ!」


 言い方は丁寧だが顔は焦っている


 炎の魔法を避けたと思ったら、攻撃がまた飛んでくる。

魔法で仲間が攻撃しようとしたら、同時にそれを妨害してくる。

身体能力を上げて、攻撃をいなしてまた距離を取られ、迎撃される。


 魔法じゃない弓矢は魔法具が矢を逸らさせる。

そしてついに距離を詰め切り、気がついたが、これは魔法も剣も少しずらされる。


 炎剣がぐんと伸びたが、水の壁が阻む。

突こうとしたレイピアは植物が巻きとる。

僕の振った剣は岩壁が阻む、やたらと硬い。

弓矢もコツを掴んだのか上手く当てられるようになってきたが、既のところで止められる。

聖魔法も、使おうと狙いを定めた途端に、攻撃がフルスの方に向く。


 そして、この女は、既に俺を2度殺している。

いや、正しくは1度だけだが。


 1度戦ってわかった、こいつには絶対に勝てないと。

そして2度目は、逃げた、思いっきり遠くに逃げたら、僕は背後から剣聖に突き刺され死んだ。


 故に、戦うしかないのだ。

まぁしかし、幸運なことに、こいつの固有スキルは知っている。

そして、以前だと、だいたいこのタイミングから使い始めてきたな?


「『質より量』」


 きた、やつの詠唱、それを全員で止めなくては行けない。


「っ!!来た!全員で止めろ!!じゃないと勝てない!!」


 そう、我ながら荒々しく叫ぶ。

全員が驚いた顔をしたが、その必死さと、我先にと走り出す僕の後を追い、攻撃が始まる。


 しかし、無詠唱で攻撃を弾かれ、いなされる。


「『量より質』『質ある量』『増幅し』『倍増せよ』」


「っくそ!!」


 風魔法って空も飛べるのか!?

しかも1回目だと見た事がない魔法だ……まだまだ手札があったのか!?


「《倍増殖(インクリース)》」


「……っはは……終わった………負けだ……!」


 僕は膝を着いて、そうつぶやく。

それしか僕にできることはないんだ。


「っ!勇者!なぜ諦めるんですか!?固有スキルを使われたのなら!こちらっ……」


 そう言って僕に声をかける赤髪の魔族は、瞬間、固有スキルを使う暇もなく、雷撃に貫かれた。


「……ま、よくわかってますね、私の固有スキルはこの通りです」


 右手をパッと開き、生み出された小さな赤い炎の龍


「〈大龍炎(ドラゴンズフレイム)〉!」


 1匹の龍が大きくなり、襲いかかる。

その瞬間、何本にも何本にも分裂して正しく無限に近い本数に枝分かれし、そして、水の壁も土の壁もまるで意味をなさず、圧倒的な数の暴力に、為す術なく僕達は焼き尽くされた。


 あんまりにも酷くデタラメな魔法だ……っああ、僕は死ぬのか……

こんなどこかも分からない異世界で……いや、いい思いはさせてもらった、向こうにいた頃よりも随分と楽しかったし。


 狩野裕二、ここで僕は………死ぬらしい。


「っくそ……ぉ」


 今になって思い出した聖女の洗脳、戦いの恐ろしさ、命をかけることの気合いの量を。


その最後、本当に死ぬその直前に、一人遠くの方で倒れる魔族に炎の龍が襲いかかる。


 そして、そこにそれよりももっと赤い竜が現れたのだ。

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