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黒髪赤目の忌み子は英雄を目指しダンジョンの最奥を目指す  作者: 春アントール
英雄とは、戦いの中で生まれる者だ
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愛の対価

「……っはは!急にどうしたよ!サクラ!」


「貴様の方こそ!バテてもしらんぞ!」


 お互いいきなり、また全力で戦う。

しかし、決着は全然つかない。


 お互い、やはり相性最悪だ。

カルカトスとラジアンは、何かを話し合っている……そして、這ってでも、私のところに来てくれるクレイア。


「っ!アルグロウド!貴様少し離れろ!」


 そういって、突き飛ばし、地面スレスレを飛びながら、クレイアを手に取り、背に乗せる。


「さ、サクラ……ごめん……私、もう死にかけ〜」


「っな!?」


 いきなりのその発言に、驚きが隠せない。


「ま、元々死んでるような存在なんだけどさ……サクラ、私、このまま死ねないんだ」


「……どういうことだ?」


 神速を使い、追いつかれない速度で会話をする。


「守護者は、未練を持ったまま、死ねば化け物になる。

だから、未練を解消して、成仏するの」


「っ!なら未練を……あ、いや!生きろ!生きてくれ!聖魔法ならいくらでも!」


 未練を解消してしまうと、死んでしまう。


「ダメだよ〜、言ったでしょ?死んだようなものだって、私にそれはダメなんだ」


「っ!なら……なら、どうすればいい!?」


 私の目が少し潤む。

もう察せる、別れるしかないことを。


「……流石だね、よくわかってる……サクラ、私の未練を、解消してくれない?」


「……っ!やだ!嫌だ!……まだ一緒にいたい!」


 私にしては、随分感情的に、言葉を吐く。


「……そりゃあ、私もだよ、でもずっと考えないようにしてただけ。

守護者はみんな、死ぬために蘇ったの。

だから……サクラ、お願い……私の未練を……晴らして」


 私の背中の上で、静かに私に触れる。


「……そして、私が死んだら、私の輝石を直ぐに取り込んで?

私が、力を貸してあげる、ずっと一緒にいてあげるから」


「……未練っとは、なんだっ?」


 声が時折詰まる。


「……私を、本当の意味で、愛してくれる人の『愛してる』が欲しい」


「……っ、そんなもの……いくらでも……クレイア サッサ!!」


 大きな声を出す、それを世界中の全員に伝わっても構わないほどに。


「私は!お前が!大っ好きだ!関わりや!好意を持った理由は決して純然たるものじゃないが!不純行為で恋したが!

今はただ!お前を愛してる!だから!……行かないでよ……」


 そう伝えると、大きな笑い声の後


「ありがっとう……ありっがとう……サクラ……私も大好き……!

私たち、決して辺りから見れば普通じゃないけどさ……私は、サクラに愛してもらえて幸せだし、私はもうサクラ以外愛せない!」


 頭の上に移動していたクレイアから、光の粒子が漏れる。


「クレイア……っ!お前は酷いやつだ!私を無理矢理ベットに引きずり!私の初めてを!あんな結晶で模したもので奪って!

私の気も知らず!ただただ快楽だけを私に流し込んで!

私に会って数日なのに、愛してるだとか、大好きだとか平然と言って!でもそれが本音だってわかるし……!」


「……うん、そうだね」


「それに!貴様の未練は!……私とお前が最高に愛し合ってる時に!切り離すような未練だ!私に未練が残る!」


「……それはごめん」


「……だから!……だからぁ……まだ逝くなよっ!私に!ちゃんと謝って!態度で示してくれないとヤダ!!」


「……それが出来ないから……力になるしかない」


「私の夢は、平穏な家庭を築いて、子供たちと余生を過ごすことだった。

お前と、子供は出来なくても、余生を過ごすのも悪くないと、柄にもないことを考えさせられるほどには、お前を私は愛していたのに!」


「……サクラ……そんなに強く思いをぶつけられたら……私の体……もたないよぉ!」


 クレイアも泣いていた。

私に抱きついたままで、輝石になった。


 それを直ぐに私は飲み込んだ。



「………さっきぶりだね……ってあれ?フレイちゃん?」


 光の中で、すぐに再会した。

そしてその場に、フレイもいた。


「ここにもでてこれるんだねー、私もびっくりしてるよ。

でも私は充分楽しめたし、そろそろ逝くよ」


 凄くあっさりと……そして気まずそうに消えていった。


「フレイ……助かった」


「いいってことよ〜!」



「……さて、サクラ、私があなたにあげるのは、私の全て。

私の水晶を操る力を……そのままあなたにあげる」


「……え?固有スキルじゃないのか?」


「でも、あげられるものはあげられるからねぇ、だからあげる。

今後は、それで武装したり、守ったりするんだよ」


 そういって、私が返事をするよりも先に、一歩前に近づいてきた。

私は人の姿をしていて、その私の頬に手を当て、もう片方の手は後頭部に回して、私の唇が、彼女の唇にあたる。


 何度も何度もしてきたキスと違って、激しくないけど、どこか切なくなる。

そして……相変わらずコイツは舌を入れてくる。


「………んはっ……美味しかったよ、サクラ……バイバイ」


 そういって、フレイの後を追うように、上へ上がっていき、目の前が光に包まれた。


 其の瞬間、私は1つ、勇気のいることをした。

でも私はそれを迷わなかった『勇敢なる者』だから。


 だから私は、クレイアの手を引いた。

そのまま持ち上げられて私も死ぬかもしれないけど、それよりもクレイアが欲しかった。


 視界が元通りに晴れて戻ってきた。

そして、私は心の中に声をかける。


『さぁ、まだまだ私と共に来てもらうぞ、クレイア』


 私の心の中に、返事が来る。

泣き出しそうな、嬉しくてたまらないような声で。


『……任せて……!水晶は、私の専門だから!』


 愛しくてたまらない人の声が、フレイのせいで空いた穴に収まった。

私の……私たちの思いは、収まるところを知らないがな!

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