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黒髪赤目の忌み子は英雄を目指しダンジョンの最奥を目指す  作者: 春アントール
英雄とは、戦いの中で生まれる者だ
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復讐【サクラ】

 これは吹雪が晴れる少し前のことだ。

確か、四天王の一人が固有スキルで壁を作った頃。


 その少し前に、こちらは私を除いて全滅した。

理由は簡単だ、あの簡単な氷魔法。

あれが、全てを根こそぎ奪い取って行った。

いつぞやの、フレイを思い出す。

ピュー フォルテ、そのパーティが壊滅したなど、にわかには信じ難いが……聖魔法でも治せないのだ。


 一瞬だけ、あの鬼と目が合った。

あの時、あの鬼は、全員を瞬殺した。

私もやられるかもと思い、身構えるも、黒い壁に覆われて、私だけ助かった。


 その最後、奴は……優しい顔をして笑っていた。


「サクラ!お前とやっと一体一でやれるな!」


「今度こそは逃がさん!貴様を必ず殺す!アルグロウド!」


 竜の姿になる。

いつの日か、ミサンガをくれたあの子も、爆破の事件で村諸共消えてなくなった。

ラングとライトが生きていたら、きっと私のように泣いただろう。


 私は、人を愛している。

敬愛し、溺愛している。


「アルグロウド、貴様……その力を、ねじ伏せて、倒す」


「おぉ、こい」


 こいつの目が真剣になる。

こいつ、竜の姿での戦闘のセンスは悔しいがとんでもない天才だ。

ブレスもろくに吐けないが、代わりに与えられたのだろうか?


「行くぜ!」


 パッと距離を詰めてくる。

腹の音がなり、目が血走って、唾液が今にも溢れそうなのに、それを堪えて、私と殴り合いをしてくる。


「腹ごしらえを忘れてきたか?」


「違うな、空腹が、ベストなんだ」


「腹が減っては戦ができんぞ」


 開いた口に、そこに並ぶ牙を掴み、横に投げ飛ばす。

海岸に大きなクレーターを残し、水が跳ねる。


「いきなり本気で行くぞ!

『世界の夜明けを迎えた者よ!』『その果てにまだ恐るか!?』『何を恐れる!!』『勇気を!』『それが力の名だ』《勇敢なる者(ブレイバー)》!」


「前と違うな!」


「あぁ!勇敢なる者を、私はこの目で見た!

そして!その勇気に釣り合う力を持つ!クレイアという人だ!」


 向こうの愛から始まり……そして、口で言うのは絶対に無理だが、今は私としてもとても愛しい存在。

私の……その………好きな人だ。


「そうか!確かにお前の父は強かった!攻撃が聞かないはずの、俺の固有スキルを前にしても、俺は何度も足をとめさせられた!

俺は今!この空腹を!克服してきた!お前は!恐怖を克服するんだろ!?」


「あぁ!愛のある者は、何よりも強いと知った!

貴様のように、孤独なものでは!私のように愛しい人と夜明けを迎えるために!戦うのとは違うんだ!!」


「俺だって!俺の居場所ができた!『六罪(アルマティア)』の皆が!俺の大切な人達だ!みんな!俺に期待してくれてる!」


 そういって、1歩前に進み、私の翼に爪を立てる。


「なら!貴様には愛しい人を奪われた者の……そして、立ち上がるものの強さを!その身に焼き刻めェ!!!」


 火を吐く、腹から、煮えたぎるその熱い思いをそのままに、吐き出す!


 その炎は、赤を通り越して半ば青くなるほどの高温。

私に出せる瞬間最高温度!


「っあぁっづ!!っクソ!なんでだ!?カルカトスは分かる!キメラだからな!でも!お前はドラゴン!俺はドラゴンを食って超越した!なのに何故!?」


「私は……英雄にもなれなかった、なり損ない……それ以上に理由はない!」


 泥仕合だ、竜の姿での戦いは泥試合になった。

大地をころげ周り、空を飛びまわり、噛みつき、切り裂き、何度も何度も殴りあった。


 何度も何度も!私は焼いた!奴は喰らいついた!


「いい加減に!私に殺されろ!」


「こっちのセリフだ!俺たちは!多分きっと!絶対に合わないんだ!コインの表裏みたいにな!」


「かもな!だから!今お前と離別する!」


 感情的に叫びながら、何度も何度も、また戦いあった。

その長い戦いの中、ついに動きがあった。


 それは、私たち……じゃない。

私の上がりきった体温、が、生んだことでは無い。


 あの黒い壁が瓦解した。

そして、中から四つの、強い力の気配が暴れ狂う。

お互い、手が止まった。


 このまま戦い続けていても、無駄だということを、お互いに解していた。


 不思議と、お互い何も言わずに、手を止めて、横を向いた。

それが知らない間に正面を向いていた事になっているのに気が付かないほどに、その戦いだけは見届けたかった。


 クレイアの体に何本も氷が刺さって、その度に膝をついても、何度も何度も立ち上がった。


 その度に私は、声が漏れてしまった。


 しかし、アルグロウドも声を漏らした。

そのタイミングは、いつもあの氷鬼に何かがあった時。


 お互い、まるでスポーツや闘技大会を見る……観客のように、その戦いを、お互いが応援する人を応援することで頭がいっぱいになってしまった。


 そして、ついに戦いが終わった時、ふと我に戻った。

そして、あんなにも熱い戦いに、吹雪の中で、その熱い思いばかりが、どんどんと湧き上がってきて。


 そこから、お互い同じタイミングで、拳を振った。

戦いたい、心の底から、戦いたいと思ってしまった。


 しかし、私の体温はほとんど限界まで上がりきった……クソっ……このままだと、持久戦で、私が負ける……!

この2人どうしだと、絶対に決着はつきません。

どっちも死ぬか、どっちも生きるかです。

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