デスマッチ
「っはは!なるほどなるほど!で、あれば……こっちを使うか!」
そう言って、拳を握り、ニヤリと笑う。
次はどんな魔法が飛んでくるのかと、警戒心をMAXにする……が
「はあっ!」
「魔法じゃないの!?」
そのまま拳を振り抜いてきた。
剣の、刃の方で受けようかと考えたけど、押し切られて自滅しそうだと考え、結局剣の腹で受ける。
「カルカトス!クレイア!今なら倒せるかも!」
「舐めるな!我は!氷鬼だ!」
私の体がまるで紙みたいに吹き飛ばされる。
固有スキルの黒い壁に足をつけて止める、フブキの方を見直した時、追撃を警戒していたが、特にない。
「っははは!行くぞ!!行くぞォ!!!」
だが、向こうの方は大変そうだ、拳が、まるで増えたみたいに早く、その一撃が目がくらみそうなほどの威力だろう。
私も羽ばたき、すぐに戦場へ帰ってくる。
カルカトスは顔面から上半身がボコボコだし、クレイアも腕があらぬ方向に曲がったり、右横腹に拳の跡が残っている。
それに対して、フブキはノーダメージ。
「っぐ、いきなり……スピードが上がった!」
「さてはこの美人さん近接の方が得意かな!?」
「戻ってきたな!ラジアン!貴様もすぐに!叩き潰す!」
名前を覚えられた、光栄な事だが、今はただ恐ろしい!
「っ!っはは!っあはは………あっははは!」
しかし、不思議と笑みがこぼれて笑いが止まらない。
二刀流は腕の力が分散される。
アズナス一本で行く!見ててね!アイビー!
「っおぉ!受けてくるかァ!!褒めてやろう!」
そう言った瞬間、フェイントを挟み、蹴りが飛んできた。
見事に引っかかって、腹部にえげつない衝撃、口の中で血の味がする。
「ップ……!!オエッ!いったぁ!やったねぇ!?『闇魔法』〈黒刃装〉!」
私だってずっと、ずぅーーっと修練を重ねてきた。
剣術以外にも!魔眼の研究!闇魔法はキメラが教えてくれた!
羽から、黒い刃がダランと垂れる。
「ほぅ?闇魔法……貴様の闇魔法はそうなのか」
人によって個人差あるもんね。
「行くよっ!」
羽を使い、その一瞬の爆発力を!
「っ!ヒュウ!早いな!」
子気味いい口笛を吹いて、攻撃を避けてくる。
そして、その私の背を殴りかかってくる………が!
「どっこいスラッシュ!!」
ふざけた掛け声で、とんでもない一撃、上から剣を振るうさっきの攻撃に加え、地面から無数の針を生やし……あの時みたいに枝分かれさせて、地面に固定させる。
「っし!ナイスだ!」
カルカトスは体の形を変えている。
鳥のような翼と、鷹や鷲のような爪を生やした脚で地面スレスレから蹴りを浴びせ、通り過ぎざまに切っていく。
無防備な足元を切ろうにも、薄皮1枚切った程度。
「っはは!痛いな!」
「嘘つけ!?」
しかし、やっと初めてまともに傷がついた。
カルカトスは固有スキルを触れれば使える……そう言っていた。
しかし、結局蹴りと切るだけ。
何故かと思ったが、カルカトスをよく見てみると、横腹が丸ごと削り取られていた。
「無造作なキックで、それか」
「足刺さってないの!?足裏硬いね!マッサージしよっか!?」
なんと、地中からの攻撃はノーダメージだったらしい、ブラフを張っていたのか、よく気がついたなぁ……
「ラジアン!俺がフブキに触る!一緒に戦いたいけど前へ行ってくれ!」
そう言って武器を鞘に収める、徒手空拳で戦うつもり!?
「ほぉ!我を前に拳で語り合うか!その意気やよし!」
そして、クレイアの方は、背後から何度も何度も水晶で襲わせる。
「拳を!受ければ!俺の勝ち!」
そう行って手のひらをパーにして、グーに勝ちに行く。
「ははっ!面白い魂胆だ!ならそれごとぶち抜く!」
その拳が、カルカトスの手のひらをそのまま砕いた。
「っ!まだ!再生して!取り込んで触れてやる!」
立ち所に傷が癒え、飲み込むように、腕に肉が巻き付く。
「なるほど!人間ではないからな!」
しかし、拳を開き、カルカトスの二の腕をつかみ、そのまま引きちぎった。
「これではどうだ?」
「っ!!この……怪力が!」
「いかにも、怪力だ」
そう言って、私たちから、一歩距離をとった。
「?何を?」
「我の固有スキルを、見せてやろう」
その瞬間、私たちは頭が真っ白になった。
敵の攻撃じゃない、困惑したのだ、まだ上があることに。
得意な魔法も封じて、数で圧倒しているのに、この劣勢具合、なのにまだ差は開くというのだ。
「『命も削る絶対零度』『花が落ちるは首からに』『紅白染めてしんぜよう』『父と母の私』《氷鬼一体》」
角を、透明な氷が包み込む。
そして、懐から、二本の角を取りだした。
「これが、我が父と母が、私にさずけてくれたもの」
魔族のしきたり?では、はるか昔の話だけど、親とか師匠が、子に己の角を折って渡したという。
その角は、力を貸してくれたり煎じて飲めば、師の力を借りられる。
「本当は、負けてやらねばならんのだが……しかし負けず嫌いなものでなぁ」
二本の角を取り込んだ。
拳を握れば、次に開いた時、角はなかった。
背中から、二本の赤い怪腕。
和装が威厳ある佇まいに見えてきて、温度はガクンとまた落ちた。
腕を振るえば、私の固有スキルは簡単に壊れた、違和感はない、さも当然のことの……いや、当然のことだ。
「やば、どうする?2人とも」
クレイアはもうこれ以上はないらしく、私たちとどう逃げようかと問うてきた。
「……この剣と、お別れする時が来たみたいだ」
カルカトスは剣を胸に当て……いや、あの輝石を胸に当て、取り込もうとしている。
「……私は師匠に、願いを伝える時が来たかな」
バクンバクンと、あの日、輝石を取り込んだ時から、拍動が、凄く大きくなった。
胸を叩く、鎮まらなくていい!
「もっと高なれ!もっと!もっと!!」
「2人がやるなら………私も、サクラの邪魔はさせてあげられないし。
立派な両親は、私にもいるんだ……負けられんって父なら言うよ」
そう言って手を構える。
「貴様らは本当に面白い奴らだ、よく、逃げようとも思わないんだな」
「……だってさ!私は誰よりも強くなりたいんだよ!?」
体温が上がってきた!拍動が激しくなってきた!言葉が勝手に出てきた!
私のその言葉に、酷く眩しそうな顔をしたあと、ニコリと……その笑顔は……恐ろしい程に優しくて、絶対零度の中に暖かさを感じた。
「わかった、なら我も……手を抜けんな」
次でフブキ戦は終わりかなー?




