白熱【ラジアン】
「………っラジアン!」
そう言って、目の前が吹雪におおわれているなら、声が私の耳に届いた。
「っ!?カルカトス!?向こうは!?」
「終わらせた!向こうから見た感じこっちがやばいと思った!
魔王様に頼んでエンブラーさんと交代!!」
「なるほど!よくやったね!それじゃ、2人で!やろう!」
「に、人間!!私もいるぞ!」
「あっははー!カルカトス君、会話するのは初めてだね!〈仲間の盾〉!」
「「ゲッ!!?」」
私もカルカトスもあの魔法にいい思い出はない、声を漏らした。
「我々もいるよ!カルカトス君!」
そう言いながら、吹雪が遮断された空間の中でピューもやってきた。
「……ええっと、まずはよろしく、で、相手を、誰が相手する?」
「はいはい!私カルカトスと一緒に戦いたい!あの!氷鬼!」
「自分の完全上位互換が相手です、相手はしたくありません、黒竜は我々が」
「私は……アルグロウドを殺す!」
「私はサクラちゃんと一緒に戦いたいけど……氷鬼、強そうだし、3人で戦おう」
「分かりました!
それじゃ、5と3で別れて………あのー、いつまで吹雪いてるんですかね?」
話している間も吹雪が絶え間なく襲いかかってくることもあって、視界が悪すぎる。
そんな話をしていると、私の背中が逆立つような感覚。
その瞬間、反射的に首を振るうと、そこには氷の鬼が拳をふるっていた。
「っ!!ヤバっ!」
「大丈夫です、物理攻撃は全て弾き………っ!!?」
風船が割れたような音がして、ねじ切られた。
「ふむふむ、なんとも妙な手応えよ……しかしまぁ、先程は見ない顔も見えるな」
そう言って手を不思議そうに見つめながら、カルカトストを見つけた。
「!フブキ!その黒髪の男!そいつがやばい!!」
「っはは!ビビるな!アルグロウド!貴様にこいつの相手はさせん。
話は少し聞こえていたぞ、3人で戦おうと?我を相手に、良くもまぁ!?」
そう言って、その手を地面に触れる。
逆鱗に触れたか!?
「面白い!やってやろう!乗ってやろう!」
いや違う!楽しんでる!?
氷鬼を中心に、氷のフィールドが形成され始める。
「化粧は女性のマナーとナイリーさんはいつも言ってたな……『雪化粧』!」
氷でできたこの空間の中で、私とカルカトス、あと、クレイア?の3人ばかりが立ち尽くした。
「っ寒……っひ!?」
私の目の前にギュンと詰めてきた、それに私は一瞬反応出来なかった。
「っほぉ!?今のを受けてくるか!流石に強いな!」
「っふへ!?か、カルカトス!ヤバいこの人!やっぱりめっちゃ強い!!」
「わかって……グベッ!?」
わぁ!顎をめっちゃ綺麗に、まっすぐ蹴られた……そして飛んでいく。
次に、あの人はクレイアを狙った。
咄嗟にでてきた紫の水晶が、あの紫水晶が簡単に削られて、そのままあの人も吹き飛ばされる。
「……っ!上手く受けれたつもりなのに!」
「凍る!!」
カルカトスは顎の下を根こそぎ書き換えて氷を治す。
あっちは守護者、体がすぐに治った。
私としても、剣しかダメージはない、上手く受けたな、我ながら。
「次は!私の番!見せてあげるっ!私の新しい『魔眼』!」
そう言って瞳を強く閉じて、目を『変える』
様々な魔眼を持つ魔族は、目が大きく変わる時もあるのだ。
私は、その1人、使う目の名は
「『流星眼』!」
目の中に淡い白い星のマークが描かれ、そのまわりに小さな星々が散りばめられるような、綺麗な魔眼!
「何をする!?……っ!?」
地面がベコっと沈む。
私の魔眼の効果は簡単!対象に、重力を付与する!
「さーらーに!まだまだ行くよ!『轟雷眼』!」
パチッとウインクして、目を入れ替える。
目にも止まらぬ轟速の雷撃が、フブキを襲う。
「っおぉ!まだ目があったか!」
服の裾を持ち、それを振ることで、雷をかき消した……あれはオシャレじゃなくて、立派な防具か?
「ナイス!ラジアン!」
「やるね!かわい子ちゃん!!」
カルカトスが、剣で突きに、クレイアは巨大な剣を作り出し、思いっきり振り下ろす
「……なんのこれしき!!」
手を上にクンと持ち上げ、目の前に氷の壁が生まれる。
よく知ってる、見ることが条件なんだ、これで私の重力は効力を失った。
なら、今度私が見るのは!あのデカい剣!
「重くさせるよ!」
「っわ!?ナイスアシスト!!」
「っっめった!?」
壁の向こうでカルカトスが声を上げた。
そして、振り下ろされた大剣が、轟音を鳴らし、辺りの氷を砕き巻上げた。
「っくく!やるな、貴様ら!」
白い煙幕が晴れた頃、人影がひとつ。
片腕を前に出し、大剣を受け止めていた。
「化け物かよ!?」
身体が半分、剣ごと凍らされているカルカトス。
「っ!なんであれ受けれるの!?」
「……これは、アルグロウドの方が不味いな」
そう言って、私たちのいない方を向いた。
舐められているのかと思ったが、手をかざす。
無詠唱の魔法……何をしたんだ!?
「魔眼の娘よ、面白いが、それだけか?」
「っまだまだあるよ!あと百個はあるね!」
目玉を指さして、笑ってみせる。
「っカカっ!面白い!キメラの少年は!?もう終わりか!?」
「触れたら!俺の勝ちだ!まだまだ行ける!」
輝石を構える。
「守護者!貴様はまだ何もしてないなぁ!かかってこい!」
「っうぅ〜!仕方ないなぁ!後方支援は任せてね!」
紫の水晶が地盤ごと変わったのかと錯覚させるほどに、大量に生まれた。
「………っははは!みな揃いも揃って化け物ばかりではないか!」
誰が言うのよ………っ!こうなったら!バトルを楽しむのが私のモットーだけどっ!
固有スキル!使っちゃおう!
このレベルの相手なら、詠唱もいるかな!
「……っお?」
何かを察したのか、眉が動く。
「『私が法である』『私が絶対である』『夜に君臨するこの私に』『口答えなど片腹痛い』『自由とは私が定めたこと』《自由で横暴な決闘》
我が名において命ずる『氷魔法の使用を禁ず』」
「っなっ!?ははっ!そんなでたらめが通ると………通るのか!?」
地面の氷も、積もった雪も、全て幻のように霧散する。
「私が、ルールだよ、通じるさ」




