ピクニック
「……着替え、終わりました」
涼しげなワンピース、髪は後ろで一つ括りに。
「ヘアクリップ、使ってくれてるんですね」
「もちろんです!さて、お昼の準備しましょう!」
簡単なサンドイッチと、水筒をバスケットに入れて、ネルカートの街を歩く。
「……ピクニックって、どこに行くんですか?」
「『サジェントス大花畑』です、有名な観光地のひとつですからね」
へぇー、そんな場所があるのか。
「あら?ご存知じゃなかったんですか?」
「じ、実は……」
「ふふっ、でしたらあなたの反応が楽しみです」
その意味深な言葉の意味を考えながら歩く。
「……おぉー!」
なるほど、これは圧巻だ!
色とりどりの花、そして、様々な子精霊たちだ。
「おぉ!精霊がいっぱい!私ちょっと行ってきてもいいかな!?」
『うん、行ってらっしゃい、俺は俺で楽しんでくるから』
「うん!じゃーねー!」
「……綺麗でしょう?このお花畑」
「えぇ……圧巻ですね、ここで、お昼にしては少し早くないですか?」
「ふふっ、そう焦らないでください、ちょっとぐらい、お話しましょうよ」
「そうだね、俺たち『も』お話しよっか」
「?……え、えぇ、そうですね」
なにか違和感を感じた……が、別に構わないだろう。
色んな話を聞いた、例えばシアの進行している神様は『運命の神 シーアス』なんだとか。
俺はダンジョンでの事を、話したり……あとは、生活はどうだとか。
……なぜ、顔を隠しているのかや、なぜ、シアさんがお金を欲しないのか、そういう事はまだ聞いていない。
お互い……良くも悪くも距離がある。
「ここのお花畑を作った英雄の『リリー サジェントス』は、世界で、初めてで、しかも唯一精霊と会話ができる人なんですって、それは今もまだ、更新されていないらしいですけどね」
「精霊と……会話が……へぇー」
やはり俺は非公式か。
「なんでもお花の精霊がいるとか、彼女が書いた精霊の絵は可愛くて、愛らしく、そしてどこか美しいらしくて、高いらしいですよ」
「……なるほど、そういうのもあるのか」
確かに、あの花畑の精霊たちは、俺の住んでいた森とはまた別の独特の雰囲気だ。
「……怪我なら、いくらしても構いません……そういうリスクが付きまとうお仕事ですからね……でも、私が治してあげるためにも、教会に来ることが出来る程度の怪我までです」
「……はい」
「私とあなたは『友達』なんですから、友が命を落とすのは……悲しいじゃないですか」
「……はい!」
「だから……私を悲しませないでください、私もあなたを悲しませたりなんてしませんから」
「……分かりました、約束です」
小指を立てて、彼女に向ける。
「……ふふっ、懐かしいですね、ソレ」
小指を絡ませ、約束をする。
【サジェントス大花畑】
かの英雄『リリー サジェントス』の残した花が広がり、大きな花畑となった。
どこか、神聖な空気がある。




