弟子の友達【ユミル】
「ん?……っはは」
珍しい客が来ることを察知して、私は笑った。
こいつは……よーく見てみればなんと恐ろしいことか
「魔剣のもう一振かぁ……驚いたなぁ」
これはこれは……アデサヤか。
「……お、暗いな……どーもー!カルカトスですけど〜!」
「あぁカルカトス、こっちにおいで」
「うぉ、そっちに居るんだ?……わー、マジで檻の中だ、どもども」
「ははっ、何も無いところだがまぁゆっくりしてくれ、私と話をしに来たんだって?物好きだねぇ君たちは」
「えぇ、ラジアンからきっと楽しいって言われて」
なるほどあの子らしい表現だ。
チラッと覗いて見たら……キメラ……ん?この称号は……
「『古兵を語り綴る者』なにこれ?私も知らないなぁ?」
初めて見る称号だ。
「ん?あぁ、これは迷宮にいる守護者っていうのを倒してたら知らない間に着いてたんですよね……まぁ、なんかかっこいいし別に体に害がある訳でもないしいいかなって」
「随分楽観的だね、ラジアンから君の境遇を聞いていると、随分と根暗になったりしていてもおかしくないんだけどなあ」
「ははっ、確かにそうですね、友も死んで、仲間と決別して、そしてきっと戦わないといけない。
でも、嫌だなって思ったりした時に、不思議とこんなところで二の足を踏んでいていいのか?って思っちゃうんです。
心の奥底の誰かが、俺に前に進めって言うんですよ」
それが彼女が君にかけた呪いの正体といったところか?
「そうか……所でだが、君自身が気づいているか知らないが、君の体の中には鮮血剣という剣が入っているみたいでね、知ってる?」
「あ、以前に一度、魔王様が教えてくださいましたよ、確か名前は『アデサヤ』?でも体の中から出てこないから無視してるんですけどね」
「出し方、知りたいかい?私なら知っているが」
「へ?本当ですか?なら是非お願いしたいですね……ラジアンのあの剣を何度も見てる身としてはあれと同等の剣が存在するだなんて想像し難いんですけどね」
確かに、あの子のアレを見せられたらそんな気持ちになるのもわかる。
しかもあれでまだまだ発展途上、歴代最強の名を冠するかもしれない。
「私としても何度か見た事がある程度なんだけどね。
そうやって体内に隠し持ってる形態の時は、掌に刃を突き立てて穴を開けて、その中から引きずり出しているのを見た事があるよ」
「え?掌から引きずり出す?」
見るからに顔を青くさせている。
まぁ、痛いのは誰だって嫌だよね。
「そう、あとは…………………ってして剣の力を引き出していたよ。
アズナスと違っていつでもフルで力を引き出せる代わりに、色々難点もあるんだ」
「なるほど、それは別に俺にとっては難点にはならないかな」
この少年を見ていると……ペルソナと私を思い出すと言ったが、それは間違いかもしれない。
「……まるで君たちは、初代ハイラーンとハイラークの様だね」
「あれ?ペルソナさんと貴方では?」
「どうやら私の思い違いのようだ、君を陰険な人間だと勘違いしていたよ」
「あの人陰険なの!?」
「まぁ、私にはそう見えたね」
「そっか……そうかなぁ?」
うぅんと唸る感じでなんとも言えない反応をする。
その後は適当な雑談や、今起こっていることを簡単に教えてくれたり、もっと強くなる方法を知りたがっていたが、その答えは
「アデサヤを上手く使いな、それは進化の塊みたいなもので、ただ手に握るだけで別の次元に行ける。
ただ、握ることすらままならないものが、ほとんどなんだけどね」
「……なるほど、でもなぁ……剣はハウルがあるからなぁ」
確かにそうか、それがあったら別になんでもいいかもしれない……その剣も随分と素晴らしい。
しかしあれは剣じゃないな……剣の形をした輝石と言おうか。
「やっぱり君しかいないよ。
君ぐらいしか、ラジアンと切磋琢磨してやれない。
あの天才に、その戦いの中に楽しみを与えられるのはカルカトスしかいない」
「そうですか……いや、ですよね。
あいつ、俺と戦う時だけやたらと嬉しそうに剣を振りかぶってくるんですよ」
「ははっ、それは彼女を通して見ているからねぇ、よく分かるよ……ときにだ」
一泊置いて、呪いの効果が本物か、そして、今の彼はなんなのか。
「好きな子とかはいるのか?」
「絶対今悪い顔してるでしょ?
……好きな子か……今は……特に居ないかな……?」
ふむ、呪いは本物か。
ならば、あの子にも一応勝ち目はあるのかぁ?
「ならラジアンと全力で打ち合ってあげてくれ。
彼女は今よりもずっと強くなって、自分を探しているんだ」
「?見失っているんですか?」
「隠れてるのかな?だから一緒に探してあげるんだ」
「なる……ほど?まぁ、あいつと戦うのは俺も楽しいですし、戦争が終わったら、またやるかな」
「戦争かぁ、ホント、いつの時代も変わらないからねぇ。
私は手口がとんでもなく汚くて、戦争の参加とかを禁じられているからねぇ」
「へぇ?そんなに強かったんですね」
「ま、そーだね、多分私に勝てる人なんて5人もいないさ」
真っ暗闇の中で手のひらを5にしてみせるが、彼には見えないだろうね。
………さて、
「すまないがもうそろそろ話は終わりにしたい」
「あぁ、分かりました、それじゃ、話ありがとうございました、すごく助かりました」
「あぁ、早く戻ってあげなさい、ラジアンが暇してるよ」
「ラジアンのこと、大好きなんですね」
確かにそうかもしれない。
しかし、早く扉よ閉まってくれ……私の……はやく!閉まれ!
「……っああ!っ!あぁ!」
誰にも聞こえないこの牢獄で1人もがく。
私はなんて愚かなのだろうか?
己への罰は確かに罰として機能して、私を今日も苦しめた。




