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黒髪赤目の忌み子は英雄を目指しダンジョンの最奥を目指す  作者: 春アントール
英雄とは、戦いの中で生まれる者だ
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暴走【ラジアン】

 時刻はサクラが帰ってくる5日前に遡る。


「……っわっ!?」


 爆音と、地響きが宿で作戦会議をしていた私たちを襲った。


「っなにごとっ!?」


「わ、わからん!」


 そう言いながらカルカトスは焦りながら窓の外に頭を伸ばす。


「……煙……?爆発でもしたのか?」


「魔族の攻撃かな?でも、魔王ちゃんは何も言ってなかったよね」


 そう言ってカルカトスに確認を取るが、私はそんな指示はなかったと記憶していた。


「あぁ、聞いていない……少し様子を見てくる」


「私も行く!」


 ナイトとラークが宿から出て、煙を頼りに走っていく。

煙が近づく時にカルカトスが


「……まさか……!?」


 心当たりがあるらしく、少し走る勢いが増した。


 外に出て当たりを見回せば色々なところから煙が上がっていた。

立ち上る筋の量は、少し不安になるほどに多かった。


「……っ!」


 そして、カルカトスは何かを確信したらしく、さらに早く加速して私を置いていった。


「ちょっと!?」


 野次馬たちを突き抜けて、押しのけて、押された人達の怒号も無視してぐんぐん前に進んでいく。


「……っああぁああ!!……シア……ぅああああ!」


 カルカトスの声が、響いてきて、ざわめきが一瞬で静かになった。

怒号を上げていた人たちも、何が起こったのかと野次馬に来た人たちも、私も。


 こうなることは、わかっていた。

カルカトスは、両方に大切な人がいるのなら、失う可能性は二倍あるんだろう。


「……ナイトっ、大丈夫?」


 大丈夫なわけは無いだろうが、私はそう声をかけるばかりだ。


「……誰だ……」


「へ?」


「誰だよ、この爆発の原因は、何だよ」


「わ、わからない、私にもよく分からないよ」


「……そぉか、わかった」


 そう言って、アイテムボックスに左手を深く沈める。


「……まさかっ……」


 剣を抜いて、今暴れるつもりなの!?

でも今、ギルドカードには、全員に爆破の被害者の人たちの保護をするために一度近くのギルドに集まるようにと連絡が来た。


「……戦力を削るんだよな……なら、今俺がやる」


 風を切る音とともに、左手に篭手を付けて、その手には剣聖の剣が握られていた。


 そんなナイトを見てザワつく人々。


「悪い……ラジアン……俺もう無理だわ」


 無理だと言った声はカルカトスのものだった。


「カルカトっ!!?」


 名前を呼ぼうとした瞬間、とんでもない速度で私の目の前から消えた。


 私だって速いのに、あの時のカルカトスよりも何段階も早い。

野次馬たちの首があっという間に跳ね飛ばされて、鮮血が辺りに舞う。


「行ってくる……」


 ユラユラと体をふらつかせながら、次の瞬間には消えていた。

幻獣……2つ名にふさわしい神出鬼没性。


「じゃないっ!?流石に止めないと!?」


 1人で暴れ回って蹴散らせるほどこの国の人達は弱くは無い!

どこに行ったのかと辺りを見回すと、人々の叫ぶ声が聞こえてきた。


 せっかく貰った変装を解いて、ラジアンとして空を飛び、カルカトスの方へ飛んでいく。


「カルカトス!落ち着いて!そんなに暴れたらバテちゃうよ!?」


 恐らく『悪夢魔術』を使っているのだろう、身体が膨れ上がり、鋭い腕で家ごと辺りを切り飛ばし、大きなおどろおどろしい黒い槌が辺りをたたきつぶし平にする。


 流石に私も胴に手を回して止めようとしても、捕まえられない。

身体の形がスルスルと変わって、私の手から離れていく。


 それはもうカルカトスの見た目をした別の何かのようだった。


「……っおぉっ!」


 グルリと身体を回したあと、とんでもなく巨大な剣で辺りをぐるりと切れば、遠くの方まで見渡しが良くなった。


 しかしかなり時間が経っている、これでは恐らくギルドの冒険者たちがそろそろやってき……


 なんてことを思案していると、その思案に水を刺すように轟音が私の耳を貫いた。


 驚きあたりを見渡そうと飛び上がる。

またも煙が様々なところから立ちのぼるが、それはよく見てみれば、ギルドから立ち上っていた。


 教会などに使っていたものよりも威力がまるで違う、何も残っていないのだ。

上空から見える黒い何かは恐らく焦げた人たちの死体だろうか?


 しかしギルドが吹き飛んだ!?

今冒険者たちがいっきょにあつまろうとしていたらしいあのギルドが爆破されたということは……知らぬ間に大幅に戦力が削られていたのか!?


 何が起きているのかと頭を何度も何度も回してみてもわかることは何も無かった。


 ただ眼下で暴れるカルカトスの前に、風の勇者やそのほかの冒険者や騎士たちが立ちはだかっていた。


 それを見ては流石に私も止めざるを得ない。


 銅を掴み、早く帰ろうと催促し続けた。

私たちの目標は知らない間に達成されていたんだ軽これ以上ここにいる意味は無い。


「カルカトス!!逃げるよ!戦わなくていいの!」


「逃がしませんよ!カルカトス!」


「…………!!」


 なんとかカルカトスを引き摺って、致命的な被弾をさせてしまったが、まぁこれぐらいすぐに治るだろう。


 私はカルカトスを背負って急いでヘルヴェティアに帰った。


 魔王様いわく、あちらも爆破されたとのこと。

ソウルドに移していた兵士たちも爆破に巻き込まれたとも言っていた。


 急いで帰らないと……何が起こっているんだ

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