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黒髪赤目の忌み子は英雄を目指しダンジョンの最奥を目指す  作者: 春アントール
英雄とは、戦いの中で生まれる者だ
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この世の地獄

「……っ……っは……っ!!」


 どーも、私はサクラだ。

現在七十層から階段でぐるぐる上へ上がっている。

しかしこれはいつまで続くんだか……正直いってかなり疲れるし、ぐるぐる回っているせいでよく分からないことになってきた。


『誰に話しかけてるの?』


 別に誰でもいいだろ


「サクラ、ペース落ちてきてるよ!もう半分まで来た!あと半分頑張ろう!」


「っ!半っ……分!?」


 っ嘘だろ!?


「……キツそうだね、よし、私の魔法でぐんぐん速度あげるから、しっかり重心下にね!」


 すると階段そのものが回り始め、どんどんと上へ上がっていく


「こ、こっちの方が楽じゃないのか?なぜ走らされた!?」


「それはね!よく耳をすましてみて!」


 そう言われて耳をすますと……おお?なんだあの音


「破壊音がすごいでしょ?周りの地形を大きく変えて、治るのに時間がかかっちゃうんだよね」


 なるほど、運営する側の守護者ならではの悩みだな……いや、不便だな!?


「しかもこれ速いな!?」


「まぁね、ほら、もう上の方着いたよ」


 そして……おお、ここは確かに一層目か!


「おぉ!早速外へ……っな!?」


 意気揚々と外へ帰ってきたが……私の表情は大きく曇った。


「っ!……これは……酷い……」


 瓦礫の山、焼け野原……私のトラウマを引き出した。

あの日のことを思い出す、何も出来なかったあの時のことを。


「……な、なんだこれは」


 ネルカートのイメージとは全然似ても似つかない、ぐちゃぐちゃになっている。


「……サクラ、大丈夫?」


「……だ、大丈夫……だ、今は……ギルドに向かおう」


 迷宮の入口から、いつも行っているギルドの方へ走る……入るも……これは


「……この残骸が……ギルド?」


 一番酷く焼けている、何もらしいところは残っていない。


「!サクラ!」


 私を見つけて、1人、私に声をかける。


「貴様は……風の勇者か!」


 フロウが私に声をかけてきた。


「うん!サクラ!今までどこに行ってたの!?」


「どこって……迷宮だ、ラング達から聞いてなかったか!?守護者を説得して一緒に戦ってもらうために私一人で行くって」


 そういうと、ハッとした顔になったあと、すごく言いづらそうな顔をしたあと


「……サクラ、落ち着いて聞いてね?

サクラが迷宮にいた時、迷宮が多分きっと、世界で一番平和な場所だったの」


「……いやまて、迷宮よりも過酷だったとでも!?」


「うん、今からだいたい5日ぐらい前、ネルカート、ハリス、ソウルド、ヘルヴェティアの四国で大爆発が起こったの」


「なに!?この焼け野原は魔族の仕業じゃないのか!?」


 しかし魔族側も被害にあっている!?


「それは分からないの、ただ……全ての国で言えたことは主要なところが根こそぎ持っていかれた」


「……ギルドとかってことか?」


「まぁ、そんな感じ

他にも教会とか、アカデミー、それらが消し飛んで、今は救助作業と……死者の埋葬中」


「……5日たっても終わらないほどなのか……!」


「……ただの爆発だけなら、そこまでだったんだけどね……爆発の後、何故か国内にいたカルカトスとラジアンのふたりが暴れて……このザマさ」


 恐らくその場に彼女もいたのだろう、確かにボロボロなのはそういう理由か?

それに……カルカトス……


「よくそんな2人が暴れてこれで済んだな……流石だ勇者」


 自嘲気味なこのフロウが見てられなくて、口下手な私の下手なフォローをかける。


「……ありがとう、でも、これは1人で……カルカトス1人にやられたんだ」


「……へ?」


「ラジアンもむしろ止める側だった。

でも、爆走して、何もかもを破壊しようとしてたカルカトスを止めるのは、ラジアンと、私たちでも苦戦するほどだった……ラジアンは殺す気がなかっただろうし……きっと私たちもそんな覚悟はまだできていなかった」


 けど、と一言置いてまた口を開く。


「カルカトスは泣いていた……なんでだろう」


 それに関しては私にも分からない。


「……なぁ、ところでフロウ……さっきからラングやライトを見かけないんだが、今どこにいるんだ?」


 そう言うと、少し下を向いたあと


「着いてきて」


 そう一言だけ、私の目も見ずに、背中でそう言った。

有無を言わせぬその空気に大人しく着いていく。


 連れていかれたのは遺体安置所


「……おい、フロウ、流石に面白くないぞ、そういうジョークは」


「……ジョークじゃないよ

爆発は、二回あった。

一度目は教会やアカデミーの破壊。

二度目は少し遅れてギルドの破壊。

私たちは一度目の爆発の後暴れだしたカルカトスへの対策案を練るためにギルドに集まるようにギルドカードへの連絡が来ていたの。

そして、私が向かう途中に……ギルドの爆破。

集まっていた人達は根こそぎ全滅したよ」


 そんな話をしながら歩いていると、見覚えのある顔があった……見つけてしまった……見てしまった。


 膝から崩れ落ちた。

あんまりじゃないか……あんまりにも呆気なさすぎる。


「……フロウ、貴様の仲間は?」


「……っ……そこで……寝てるよ」


 ジョークなんて言える心境じゃないよな


「サクラ……私はまだ必要?」


 クレイアが私に問いかける。


「……まだ、必要だ」


「……そっか」


 私はまた、またしても、焼け野原で全てを失った。

不思議と今度は復讐などと考える気力さえも湧かなかった。


 それは、敵が不明瞭だからか?カルカトスが敵に回ってしまったからか?それとも……もう疲れた。


「少しだけ……1人にしてくれ」


「わかったよ、でも、泣きたい時は私を呼んでね」


 そう言ってクレイアは私を見送った。

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